春の野山を歩くとエンレイソウに良く出会います。エンレイソウの花は少し地味ですがクキザキイチゲやカタクリなどと共にスプリングエフェメラル(春の妖精)として良く知られています。最近、このエンレイソウの花が咲くまでに、かなりの年月(5~10年)が必要との情報に出会い興味を持ちました。発芽に2年、開花までに数年要すると言われているので、先ず発芽について調べてみました。
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| エンレイソウ |
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| シロバナノエンレイソウ(ミヤマエンレイソウ) |
日本のエンレイソウに関する研究は北海道大学で行われていました1)。北海道や東北地方に生育するオオバナノエンレイソウ(ミヤマエンレイソウ)と北海道から九州の山地まで生育するエンレイソウを比較すると、オオバナノエンレイソウは発芽までに2年を要するものの、エンレイソウ種子の50%は年内に発根し、翌年に発芽することから、エンレイソウの低温要求性がオオバナノエンレイソウより低く、その特性によりエンレイソウが南方に広がったものと推察されていました。
エンレイソウは、その種子に強い「長期休眠性」を持つ植物として知られていて、土壌中で胚が成長する期間が必要のようです。
種子内部の杯が未発達あるいは未分化のために生じる種子の休眠は「形態生理的休眠(MPD)」と呼ばれているようです。
種子の休眠の形態が様々に分類されていることを初めて知りました。種子休眠に関する最も基本的な分類は以下の表のようです。
生理的休眠(PD)や形態的休眠(MD)、形態生理的休眠(MPD)、物理的休眠(PY)、複合的休眠(PY+PD)の5クラスがあるそうです2)。
エンレイソウの種子は形態生理的休眠に分類されますが、驚くことに、エンレイソウと同様に早春に花を咲かせるスプリングエフェメラル(春の妖精)の多くの種子が形態生理的休眠に属していました。
早春の登山で出会いたいキンポウゲ科イチリンソウ属のキクザキイチゲ。
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| キクザキイチゲ |
イチリンソウやニリンソウ。
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| ニリンソウ |
庭に生えているキンポウゲ科フクジュソウ属のフクジュソウ。
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| フクジュソウ |
ユリ科カタクリ属のカタクリ。
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| カタクリ |
エンレイソウと同じシュロソウ科のショウジョバカマ。
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| ショウジョバカマ |
ケシ科キケマン属のエゾエンゴグサやムラサキケマンなどがあります。
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| エゾエンゴグサ |
形態生理的休眠を有する山野草には、その他に7月以降に開花するウバユリやオオウバユリも属します。
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| オオウバユリ |
クリスマスローズやテンナンショウ属のマムシグサやウラシマソウなども同じ特性を持つようです。
山火事の熱や煙を合図に発芽すると言われている「バイロファイト(耐火植物)」の種子は物理的休眠(PY)に分類されるのでしょうか。
いつも出会いながらも見過ごしている山野草の新たな性質を知るとうれしいです。
参考)
1)近藤 哲也:北方地域のランドスケープ素材としてのエンレイソウ属2種の発芽要求と生育地との関連、科学研究費助成事業、2645088研究報告(2016年)
3)J.M. Baskin and
C.C. Baskin: A classification system for seed dormancy, Seed Science Research (2004)
14, 1-16



















































