2018年9月30日日曜日

三神峯公園のイチモンジセセリやシジミチョウ


 三神峯公園には野葡萄もたくさん生えています。その実は食べられるそうですが、普通のブドウと違って色とりどりなので少し不気味でこれまで食べたことはありません。でも、野葡萄の鮮やかな実を見るとやっぱり秋を感じます。
ノコンギクやアザミの周りにはたくさんの昆虫がいました。この時期、特に目立つのはイチモンジセセリです。芝生から離れて雑草の多い所を歩き始めると小さなチョウが飛び立ちます。イチモンジセセリです。花に止まってジッとしているので写真が撮りやすいタイプです。まん丸の目がかわいいです。私にとっては、ベニシジミと並んで被写体として協力してくれる仲間です。たぶん親戚だと思われるチャバネセセリやオオチャバネセセリにもこれまでたくさんの写真を撮らせてもらっています。
シジミチョウ類もたくさん飛び回ります。でもこちらは写真に撮るのは難しいです。私の動きを敏感に捕らえてじっとしていません。失敗ばかりだったので、三神峯公園から足をのばして天沼公園にいってみたところ清掃ボランティアの方々がたくさんおられました。邪魔にならないよう直ぐに戻りました。でも、そこで運よくルリシジミの写真を撮ることが出来ました。花壇の千日紅にツガイと思われるルリシジミがいて、カメラを近づけても逃げませんでした。ラッキーでした。
三神峯公園に戻り、ツバメシジミとベニシジミの写真を撮ることができました。ツバメシジミは結構たくさん飛び回っていましたが、素早いので羽を広げた写真はとることができませんでした。
小さな蛾類も結構飛んでいます。足元から草の葉の裏に飛んで隠れた蛾の写真を撮り、後で確認したところ鬼のような顔をした蛾でした。イチジクキンウワバのようです。足元には青色の芋虫もいたので、ついでに写真を撮って調べたところ、イチジクキンウワバの幼虫のようです。幼虫と成虫をセットで撮れていた訳で、とても幸運でした。帰りには、セリ科の花に青色のカナブンのような虫がいるのを見つけ写真を撮りましたが、後で調べたところコアオハナムグリと呼ばれる甲虫でした。結構綺麗な虫です。初めて見ました。
身の回りにはたくさんの小さな生き物がいる訳ですが、これまで気に留めて見ることはありませんでした。昆虫に注目してから2年が経ち、次第に虫が見えるようになってきました。

三神峯公園のヒョウモンチョウ類

 三神峯公園に行ってきました。公園ではイチョウの葉が色づき始め、ノコンギクやアザミの花がたくさん咲いていました。
天気が良かったので、アザミの花の周りをヒョウモンチョウ類がたくさん飛んでいました。羽に黒の縁取り線のないミドリヒョウモンと思われる種類が多く見られましたが、ほとんどのチョウの羽が傷んでいました。
ウラギンヒョウモンもミドリヒョウモンとともにアザミの花の蜜を吸っていました。一方、クモガタヒョウモンは少し離れた場所に咲いているノコンギクに止まっていました。

でもやはり目立つのは、ツマグロヒョウモンです。一羽だけいました。ツマグロヒョウモンは南方系のヒョウモンチョウのようで、1980年代の北限は近畿地方だったとのことです。でも、昨年も三神峯公園で見かけていますので、仙台に定着している可能性が高いと思われます。岩手ではまだ出会っていませんので、現在は宮城県が北限になっているのでしょうか。
ョウモンチョウ族(Argynnini)の幼虫は、コヒョウモンを除いて、キントラノオ目(Malpighiales)のスミレ科(Violaceae)を宿主(食草)としているとのことですが、多食性(Polyphagy)であることから他の植物も餌として食べることができるようです1,2。特に、ツマグロヒョウモンは山野草としてのスミレ類の他、園芸種のパンジーも餌として食べることが出来ることから、生息域の拡大が可能になっているものと推定されています。
ヒョウモンチョウは目立つので、私はこの2年間たくさんの写真を撮りました。ミドリヒョウモンは樹木に産み付けられた卵で越冬し、春に孵化した幼虫が樹木を降りてスミレ類を食べ成長するようです。幼虫はまだ見たことがありませんので、これから気に留めて探して見たいと思っています。成虫についても少しずつ種類の同定も可能になってきたので、これからの遭遇を楽しみにしています。

参考)
1)Soren Nylin et al.: Evolution 68(1),105-1242013
2)Thomas J. Simonsen et al.: Biol. J. Linnean Soc., 89, 627-673(2006)

2018年9月29日土曜日

クスサンと蜘蛛の糸そしてエアロシェル


 924()に茨城から仙台に戻りました。自宅玄関のドアに近づいたところ、鍵穴と反対側の隅に大きな蛾が止まっていることに気づきました。写真を撮った後、鍵で触ったところそのままズルズルと下に落ちました。かなり弱っている様子なので、さらに鍵で触ったところ突然バタバタ羽ばたきをし始め、ベランダの柵を超えてヒラヒラと舞い上がり夕闇の空に消えてしまいました。


後で調べたところ、クスサン(Caligula japonica)でした。クスサンの幼虫はクリやクヌギ、サクラ、ウメ、ギンナンなどに大発生することのある害虫で、かなり大きくてしかも白い毛が生えているのでシラガタロウと呼ばれているそうです。でも、大きな蛾がどうやって6階の部屋まで飛んできたのだろうか。不思議です。実は岩手の家でも8月に大きな蛾に出会いました。クスサンよりきれいな蛾でヤママユでした。

クスサンもヤママユも共に繭を造る蛾で、ヤママユは天蚕として絹の生産に活用される程有名ですが、一方クスサンの繭は穴の開いた小さな籠状のもので糸は短いものの強く、酢酸に浸すと魚釣りのテグスとして利用できる程だそうです。昆虫が造る糸として、最近は「蜘蛛の糸」がとても強いということで有名になり、織物など産業への利活用が話題になっていますので、クスサンとの比較に興味を持ちました。

 カイコやクスサンなどの野蚕の糸と蜘蛛の糸の強さを比較したデータがHandbook of Natural Fibers1)に記載されていました。それによると、クスサンは強いものの「蜘蛛の糸」より千切れやすいようです。中国産のサクサンと呼ばれる野蚕の糸の中には蜘蛛の糸に勝るものもあるようです。
 糸の強さには糸を形成しているアミノ酸の組成が大きく影響する訳ですが、カイコや野蚕、蜘蛛の糸のアミノ酸組成についておおざっぱに整理すると、カイコの絹より野蚕の糸のほうがアラニンが多くなっており2)、また蜘蛛の糸にはプロリンとグルタミン酸が多いことが分かっているようです。蜘蛛の糸のプロリンはタンパク質の糸を折り曲げて束ねる特性を持つので、強度の向上に寄与しているといわれています。
 糸の強さについては、合成繊維の分野も日進月歩のようです。絹の構造をまねて1935年にカローザスによって造られたペプチド結合を持つナイロンは画期的なものですが、同様の反応でさらに炭素密度の高い「ケブラー」の生産が可能になり、防弾チョッキにも採用されるまでになっています。さらにナイロン(Nylon)のNZ(最後の文字)に変えた「ザイロン(Zylon)」は紫外線耐性が問題視されているものの、ケブラーより高強度かつ高温耐性であるとされ、最近では人工衛星等の大気圏突入の際の速度低減用のエアロシェルとしての活用が期待されています。

  日本が行った小型衛星(EGG)による試験では良い成績が得られたようです3)

 参考
1)Handbook of Natural Fibers, Ed by Ryszard M. Kozlowski (2012)
2)  http://www.naro.affrc.go.jp/archive/nias/silkwave/hiroba//Library
  /SeisiKD/57SKD2004/3komatsu.pdf
3)www.isas.jaxa.jp/topics/001003.html

2018年9月19日水曜日

シオンの花に集まるヒョウモンチョウとオオチャバネセセリ

    畑ではモンシロチョウやモンキチョウがたくさん飛びまわり、時々アゲハ蝶も飛んできます。これらのチョウは良く見かけるので写真に撮ることはあまりしませんが、タテハチョウについては全く知識がなく見かけることも少なかったので、最近興味を持ち始め写真に撮っています。

調べてみるとタテハチョウ科には、日本の国蝶とされるコムラサキ亜科のオオムラサキや人気の高いマダラチョウ亜科のアサギマダラの他に日本には分布しないものの世界的に有名なモルフォチョウ亜科のモルフォチョウなどが属しているようです。

これら有名なチョウをまだ見たことはありませんが、私が畑で良く目にするキタテハやアカタテハなどはタテハチョウ亜科に属するようです。岩手の焼け走り国際交流村でキャンプした際に遭遇したクジャクチョウもタテハチョウ亜科に分類され、その他に見栄えのするルリタテハやキベリタテハも属するとのことなので、それらとの遭遇を期待しています。一方、ヒョウモンチョウ類は有毒なカバマダラに擬態しているとのことでドクチョウ亜科に分類されているようです。

9月の畑のシオン(紫苑)には、キタテハやアカタテハの他にヒョウモンチョウもたくさん集まっていました。ヒョウモンチョウ類の同定はとても難しいので写真を撮った後で羽の文様などをじっくりと見比べて見たものの、メスグロヒョウモンの雌以外は今後さらに精査が必要だと思っています。

今回のやや強引な同定結果によるとシオンの花にはクモガタヒョウモンが多く集まっていたようです。また、ナミガタヒョウモンやミドリヒョウモンの雄も確認できました。さらに、初めてのことですが黒色の羽を持つメスグロヒョウモンの雌にも遭遇しました。メスグロヒョウモンの雌は直ぐに飛んで行ってしまい、しっかりした写真は撮れませんでした。残念です。
今回、915日と16日に撮った写真で確認できたものはクモガタヒョウモンとナミヒョウモン、ミドリヒョウモンの雄、それにメスグロヒョウモンの雌でしたが、91日にはヒマワリに止まっているウラギンヒョウモンの写真も撮っています。また、昨年は同じシオンの花にミドリヒョウモンの雌が止まっている写真を撮っています。
手では確認できませんでしたが、仙台の三神峯公園では昨年の96日にツマグロヒョウモンの写真を撮りました。写真を撮った後で整理する程度の知識しかないのですが、意外にもこれまでに様々なヒョウモンチョウと出会っていることが分かりました。
シオンの花には、ベニシジミやオオチャバネセセリも結構たくさんいました。また、蜜を吸う蛾もいました。蛾は羽を小刻みに震わせながら蜜を吸っているので、焦点があいませんでした。その他、もちろんハナアブや蠅類もいましたが、今回はそれらの写真は撮っていません。
羽が無傷のチョウの写真を撮りたいところですが、そのためには数日間粘り、相当数のチョウの写真を撮る必要があるようです。今のところは無理かも知れません。心情的には、我が身と重なる羽が千切れたチョウに応援したくなります。


シオンの花に集まるアカタテハやキタテハ


 豆畑の隣に花を少し植えています。春にはスイセンやジャーマンアイリス、ミヤギノハギ、夏から秋にはラベンダーやギボウシ、シオン(紫苑)が咲きます。これだけでは寂しいので、ヒマワリやマリーゴールドを毎年植えるようにしています。無計画な植え方で野草と一体化しているので、草とともに花も刈ってしまい良く怒られてしまいます。野草の中に花が自主的に咲いているといった状態なので、立ち止まって見てくれる方はいません。横目で見ながら通り過ぎる程度です。

 でも、そんな中でシオン(紫苑)はすごいです。花が咲くと様々なチョウやハナアブが集まり大宴会のようになります。カナムグラやヒルガオの蔓がからまり、その上ヨモギやツユクサ、イヌビエなども共存しているので、見栄えは悪いのですが虫にとっては安住の地に見えるのでしょうか。

 昨年はハナアブが目に付きましたが、今年はタテハチョウが多く集まっていました。特に、これまであまり見なかったヒメアカタテハとアカタテハが数羽飛んでいて感激しました。なかなか傍まで近寄れませんでしたが、綺麗だな~と思いました。
 でも何といってもやっぱりキタテハ類がたくさん集まっていました。キタテハ類にはキタテハとシータテハなどの種類があるようです。キタテハには羽裏に白いL字が、シータテハには白いC字があるとのことですが、羽裏の識別サインを確認して写真を撮る程の余裕がないので、手あたり次第に写真を撮って後で調べることにしました。残念ながら、今回の写真にはキタテハだけが写っていました。昨年も同じだったので、この付近にはシータテハはいないのだろうか。
 この他シオンの花にはヒョウモンチョウ類も集まっていましたが写真が多くなるので、この項はここまでにして別途続けて書くことにしました。

 

2018年9月18日火曜日

豆の莢の病気や鳩の食害



914日に岩手の豆畑に行ってきました。豆は記録的な今年の暑さに負けず順調に生育しているように見えましたが、8月末から相次いだ台風襲来に伴う長雨のために、収穫間近となった莢に角斑病が発生していました。

最も期待している花豆にはまだまだ花が咲き、元気なように見えますが茶色になった莢には黒い斑点ができていました。莢の中の豆にカビが生えているものもあり残念無念です。少しは収穫できていますが、霜が降りる前に根を切断して今後の最終収穫に備えるつもりです。虎豆の葉は枯れ始めそろそろ終わりのようですが、まだ青い莢が結構あるので角斑病は出ているものの、9月末に最後の収穫を行う予定です。農薬は使いません。



金時豆はモロッコ豆とともに莢に角斑病の症状が強く出て、ともにほとんどの莢が真っ黒になっていました。仕方ないので根こそぎ引っこ抜き、莢をもいで乾燥することにしました。


幸い、蔓のない小豆や大豆、茶豆、くらかけ豆にはあまり被害が出ていないようです。小豆の莢は全て黄褐色になっていたので収穫して室内乾燥にしました。対照的ですが、茶豆とくらかけ豆はまだ未熟で枝豆にもできないような状態でした。実は、今後きちんと実が充実するのかどうか心配です。

一方、大豆、黒大豆の一部は枝豆にして食べて見ました。食べ応えはあるものの、枝豆として食べるには熟しすぎでした。葉も黄色くなり始めているのでもう少しで収穫が可能になるものと思われます。でも、一つ問題がありました。鳩が大豆を食べていたのです。
豆畑に着き、車を降りて畑を見回し始めたところ、雌の雉が一羽逃げ出しました。雉と遭遇するのは珍しいので写真を撮ろうかなと思っていたところ、けたたましい羽音とともに鳩が8羽豆畑から飛び立ちました。誰も来ない豆畑に鳩が通っていたようです。大豆と黒大豆の半分程度が鳩の餌になってしまいました。思案の結果、運を天に任せる覚悟で豆畑をビニールテープで囲ってきました。風が吹くとテープが振動して音が出ます。今回畑に通った2日間、鳩は全く来ませんでしたので、たぶん効果があると思っています。効果があって欲しいというのが本音です。

 豆畑に生える雑草にも注目して調べたいと思っていましたが、今のところこれまで接することのなかった昆虫に目が向いています。手抜き菜園の豆畑には、ヒメタデやノビエ、ムラサキツユクサ、シロザなどが豆と肩を並べて堂々と茂っています。いつか取り上げてみたいと思っています。

 豆類を栽培し様々な失敗を経験していますが、外で汗をかくと爽快な気分になります。かなり初歩的な失敗ばかりなので、冷や汗も混じっています。

周りの田んぼでは稲刈りが始まっていました。


2018年9月13日木曜日

キノコの生物間相互作用とキツツキ


 シイタケやエノキタケなどスーパマーケットで購入する袋詰めのキノコと異なり、屋外に生えているキノコにはどれにも存在感と風格があり、見つける度になぜか見入ってしまいます。

地球上にまだキノコが無かった3億年前の樹木は分解されることなく石炭になったそうですが、キノコが誕生した今では自然環境の中でほぼ完全に分解され次世代の樹木へと命が受けつながれます。つまり今後、石炭は出来ることなく、キノコは木材腐朽菌の一つとして現在の地球環境を持続的に支える大事な役割を担っていくということになります。

キノコには様々な不思議があります。最も大きな不思議は宿主(樹木)をどのようにして見分けているのかです。これについては、明快な回答事例を見つけることはできませんでしたが、驚いたことに植物の腐朽とは異なり、植物と共生している例がありました。葉緑体を持たない白色の植物の中には、キノコの菌と共生し栄養を得ている種類があるようです。昆虫の場合は、アブラムシの消化管にブフネラ菌、マルカメムシの消化管にIshikawaella菌(石川統に因み名付けられた菌)、セミの消化管にホジキニア菌が生息するなど多くの事例が報告されていますが、キノコを活用している植物があることに驚きました。


キノコと共生している植物としてオニノヤガラとツチアケビが有名なようです。どちらもナラタケ(Armillaria mellea subsp. nipponica)の菌床を培地に混入することで生育が可能になることが分かっており、ナラタケ菌と共生することで光合成ができなくても十分な栄養が確保できる仕組みになっているようです。

オニノヤガラには気仙沼の徳仙丈山で出会いましたが、かなり立派な姿でした。オニノヤガラ(Gastrodia elata)の塊茎は漢方薬として古くから活用されているようですが、その有効成分であるガストロジン(Gastrodin)が最近注目され始めており1)、中枢神経系(CNS)障害(癲癇、認知障害、統合失調症など)等の改善作用が動物実験によりたくさん報告されているようです。

 この他、木材腐朽菌はキツツキの営巣場所決定に関与しているとのことです。キツツキは枯れ木に巣を造ることが多いようですが、生木に巣を造る場合は、枝の切断部位や幹の傷害部位から心材に木材腐朽菌が侵入している場所を探し当て、そこを営巣場所として穴を開け始めるようです2)。幹の表面(辺材)が硬くても心材に腐朽菌が侵入し柔らかくなっていれば、大きな巣穴を造ることができるからのようです。北海道のアカゲラの巣からは、タバコウロコタケ科とサルノコシカケ科の木材腐朽菌が確認されているようです。

  以前に桜の木に生えたタバコウロコタケ科のカワウソタケの写真を撮っていることを思い出しました。

 キノコ類の持つ生物間相互作用の一端に触れ、この分野に大変興味を持ちました。

参考)

1)Yuan Liu et al.: Frontiers in Pharmacology, V9,February 2018

2)小高信孝:日本生態学会誌、63349-3602013