昨年同様、9月7日に車で茨城方面に出かけました。昨年は常磐高速道路のサービスエリアでテングダケの群落を見つけ、テングダケを見るのが初めてだったこともありたくさんの写真を撮りましたので、今回もかなり気にしていました。
(追記(2019年10月末):サービスエリアのテングダケは駆除され現在は消失)
(追記(2019年10月末):サービスエリアのテングダケは駆除され現在は消失)
何と!!サービスエリアには、今年もたくさんのテングダケが生えていました。昨年よりも多くなった感じでした。
テングダケは2002年に遺伝子マーカーを用いた調査(Takashi Oda et al.:Mycologica Progress, 1(4), 355-365 (2002))によって、テングダケとイボテングダケに分割され、広葉樹の林床に良く生えている種類はテングダケ、針葉樹の林床に良く生えている大型の種類はイボテングダケに区分されたようです。でも、テングダケとイボテングダケの外観は良く似ているので、私は分別することができません。
この他、サービスエリアにはピンク色のキノコや黄色い卵のようなキノコ、分厚いキノコなど様々な種類がありました。蚊に刺されながらも写真をたくさん撮りましたがそれぞれの同定は難しいので、これから勉強します。
テングダケは毒キノコなので、キノコによる食中毒について調べてみました。厚労省のデータによると、テングダケよりもツキヨタケやクサウラベニタケの摂食事故が多いようです。テングダケの毒成分としては、イボテングダケに因んで名づけられたイボテン酸と蠅の毒成分でもあるトリコロミン酸が有名ですが、どちらも実は旨味成分でしかも毒性はそれほど強力でないことが分かっています。でもテングダケには、環状のペプチドで加熱しても分解せず安定な毒成分のα-アマニチンが存在することも良く知られています。α-アマニチンは遺伝子(DNA)をRNAにコピー変換するRNAポリメラーゼの阻害作用を持つとのことなので恐ろしいです。食べると、じわじわと毒が効いてくるそうなのでサンプル採取は止めました。
キノコは旨味成分が多いことで有名です。干しシイタケには旨味成分の代表とも言えるグルタミン酸も結構含まれていますが、一般的にキノコの旨味成分としては核酸系の旨味成分であるグアニル酸(5’-グアニル酸)が有名になっています。この成分はRNAの酵素分解によって生じることが分かっていて、シイタケではヌクレアーゼLe1(アミノ酸280個がつながった酵素)とヌクレアーゼLe3(アミノ酸290個がつながった酵素)が関与しているとのことです1)。
グアニル酸は生よりも乾燥物などに多いことが分かっており、ナメコとシメジ、エノキタケを使った実験2)では、生のキノコをそのまま加熱するよりも、一旦凍結してから加熱するとグアニル酸が増加しやすいことが明らかにされています。これは、凍結することによって細胞が破壊され、別々に区分されていた酵素(ヌクレアーゼ)とRNAが混じりあい、RNAが分解されるからのようです。実は、RNAを分解する酵素は耐熱性があることでも有名で、少々の加熱では失活することなく働くことができるようです。ナメコやエノキタケは、一旦凍結してから調理すると、さらに美味しくなるようです。
参考)
1)Hiroko Kobayashi
et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem, 66(6), 1345-1355 (2002)2)甲山恵美ら:日本食生活学会誌、26(1)、11-19(2015)
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