2019年11月14日木曜日

ダイコンのジアスターゼ(アミラーゼ)


11月9日に牛久市の奥野生涯学習センターに車を置いて、そこから牛久大仏まで散歩する「牛久大仏散策コース」を歩いてみました。途中で迷ったりしながら3時間ほど散策ましたが、やはり何といっても牛久大仏の大きさには驚かされます。今回は施設内には入りませんでしたが、以前に大仏体内に設置されたエレベータで胸のあたりまで登り、展望窓から外を眺めたことが数回あります。
 牛久大仏(11月9日)
大仏に至る散歩道には大根畑が広がっていました。「牛久河童大根」が牛久市の特産物のようです。これまで全く知りませんでした。

牛久の大根生産地(11月9日)

牛久大仏からの帰り道ツマグロヒョウモンが道路に止まっていましたので、写真をとりました。また、道端にはカラスウリが沢山実をつけていました。
カラスウリとツマグロヒョウモン


牛久市は大根の生産地ということを知りましたので、大根について少し調べることにしました。大根はこれからの季節はおでんの具として欠かせないものの一つになりますが、何と言ってもジアスターゼという消化酵素が豊富で健康に良いとのいう話が気になります。

  ジアスターゼは、発芽大麦抽出液に存在するデンプン分解酵素を発見したフランスの研究者によって1883年に名付けられた酵素名のようですが、その後これまで活発な研究が行われ、現在はアミラーゼと呼ぶのが一般的になっていて、さらにα-アミラーゼ(EC 3.2.1.1)とβ-アミラーゼ(EC 3.2.1.2)、グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)に区分されるようになっています。

    大根には消化酵素のジアスターゼがあると古くから言われていたことから、アミラーゼに関する研究は日本でたくさん行われていていました。研究報告を見ると大根の主要なアミラーゼは1970年代にはα-アミラーゼとして、その後はβ-アミラーゼとして報告されていました。β-アミラーゼには二つのアイソザイムがあり、既にそれらの結晶も得られています。
 
  植物の多くは、主要なアミラーゼとしてデンプンからマルトースを生産するβ-アミラーゼを含有するものが多いようですが、ニンジンだけはデンプン分子の内部をランダムに切断するα-アミラーゼを多く含有しているようです。


   実は、α-アミラーゼ活性とβ-アミラーゼ活性を簡便に測定することは中々難しかったようで、最近になりマルトトリオース(グルコース3個)に発色剤を結合した基質がβ-アミラーゼの活性を測定するために優れているということが分かったようです。

   ところで、大根のアミラーゼ活性は本当に強いのでしょうか。農水省の研究所のデータでは品種によって7倍程度の違いがあることが分かっているので、一概には言えないかも知れませんが、弘前大学が1993年に実施した研究ではヤマイモ>カブ>ダイコン>ニンジン>キャベツ>パセリ>ネギ>レタス>キウリの順であり、ダイコンはヤマイモには及ばないものの結構アミラーゼ活性が強いグループに属するということです。
 

生食野菜類のアミラーゼ活性の比較
    なお、ワサビはヤマイモよりアミラーゼ活性が強く、ワサビを塗った寿司ご飯は、その部分のデンプンが分解されて柔らかくなっているようですので、摂取量は少ないながらもワサビも注目されているようです。


参考)
1)河野昭子ら:植物中に存在するα-及びβ-アミラーゼ活性比率の簡易評価法開発とその食材への応用、日本家政学会誌、62(11)701-7072011
2)石井現相ら:栽培条件がダイコンの全糖及びミタミンC含量、β-アミラーゼ活性に及ぼす影響、Japan soc. Hort. Sci., 55(4), 469-475(1987)
3)加藤陽治ら:生食野菜類のアミラーゼ活性、弘前大学教育学部教材教育紀要、第17号、49-57(1993)



2019年11月10日日曜日

稲の2番穂と食品用3D-プリンター


11月7日に牛久沼に行って来ました。風が強く、いつも滑らかな湖面に波が立っていました。秋も深まり湖岸のセイタカアワダチソウの花は茶色になってしまいました。
牛久沼の様子(11月7日)
河童の石碑(左)、雲魚亭庭園から見た牛久沼(右)
  一方、田んぼでは二番穂(孫小生え:Basal shoot)にたくさん実がついていました。昔はこれも収穫して利用していたようですが、遠くの田んぼではトラクターで二番穂を刈り落していました。刈り落した後田んぼに鋤き込み肥料にするようです。
稲の二番穂(11月7日)
 

 シラカシのドングリも熟して褐色になり、実が落ちたものは殻斗がお椀のように見えます。実りの秋ですが寂しさも感じます。
シラカシのドングリ(お椀のような殻斗)
散歩道周辺に生えたカタバミの周囲では、ヤマトシジミが相変わらずたくさん飛び交っていましたが、それより一回り大きなシジミチョウが目にとまりました。ウラナミシジミでした。ヒメアカタテハも道の側の落ち葉に止まっていました。近づいても飛び立たず手で捕まえられそうでした。

ウラナミシジミ
ヒメアカタテハ
 稲の二番穂を肥料にしてしまうのはもったいないと思いましたので、未熟米について調べて見たところ、熟した米より未熟米の方に遊離アミノ酸が多いようです1)。中でもグルタミン酸が多いので、ご飯としてたべるためには不適でも、パウダーにすれば利用価値があるのかなと思いました。多分ビタミン類も多いはずです。
米の成熟に伴う遊離アミノ酸含量の変動
未熟米の遊離アミノ酸組成
 最近、食品用の3D-プリンターが注目され始めまし2)。形状のみならず、栄養成分も自在に制御できるので、成分組成の分かった穀類や野菜などの食品パウダーは今後食品用3D-プリンター素材として利用されることになるでしょう。収穫コストが安ければ未熟米の利用も可能かも知れません。パウダーにすればいいので、利用しにくいため廃棄されていた食材が注目されることになるかも知れません。


 稲の二番穂は、鳥の餌として環境保全に役立っていると言われていますが、最近は鹿やイノシシなど野生動物の被害が大きいので、それらの餌になることから刈り取りを進めている自治体が多いようです。鹿の生息が確認されていない県は茨城県と佐賀県だけだということですが、茨城県でもイノシシは問題になり始めているようですので、現状ではやはり緑肥として利用するのが賢いのかも知れません。

参考)
1)M.Tamaki et al.: Physico-ecological Studies on Quality Formation of Rice Kernel. Japan Jour. Crop Sci., 58(4), 695-703(1989)
2)Perez B. et al. : Impact of macronutrients  printability 3D-printer parameters on 3D-food printing: A review., Food Chem., 287, 249-257 (2019)
 

2019年11月2日土曜日

10月の豆畑の様子とモズの早贄(はやにえ)


1026日に牛久から岩手に出かけ111日に戻りました。前回は、927日、28日と仙台で用事を済ませた後に岩手に一週間滞在し、104日に牛久に戻りましたので、今回は3週間ぶりの畑仕事でした。

10月初めに訪問した際には紅花豆の花が咲いていましたが、その3週間後の今回の訪問では、花は見当たらず葉も枯れた状態でした。既に霜が数回降りたようで、期待していたトマトの実は落下しピーマンやナスでは果実の一部が黒くなり障害が発生していました。
豆畑の様子(10月2日) → 10月30日には完全に枯れた状態に
 とりあえず大豆類は全て刈り取り、黄大豆や黒豆や茶豆などを莢から取り出しそれぞれ室内に広げて乾燥することにしました。畑で生育状況を観察していた際には、ほとんど虫などによる被害はないものと思っていましたが、収穫した豆の状況を見ると、かなり虫食いがあり選別が大変になりそうです。
大豆類の様子(10月2日)

大豆類の様子(10月30日)
   一方、紅花豆や白花豆、虎豆など莢がまだ乾燥していないものについては、莢を収穫して室内に広げましたが、紅花豆には未熟な莢がかなりありました。  

紅花豆や白花豆では、豆の大きさや品質の幅が他の豆類よりも大きいようです。これまで2年間栽培して見ましたが、たぶん播種時期や根切作業など栽培上のノウハウがあるようなので、花豆類の栽培には今後も挑戦してみたいと思っています。

 畑の淵に植えたコルチカムが綺麗に咲いていました。その花にキタテハが止まっていました。以前はノコンギクがたくさん咲きキタテハが群れていましたが、ノコンギクは雑草に占領されてしまいました。


コルチカムとキタテハ
 「モズの早贄(はやにえ)」を発見しました。ブルーベリーの枯れ枝にバッタが突き刺さっていました。青虫もブルーベリーの枝の間に挟まっていました。見つけた際にはスズメバチが食べていて、体の半分程がなくなっていました。
モズの早贄になったバッタ


スズメバチに食べられていた青虫の早贄

  モズの早贄については1930年代に岡山県の倉敷市をフィールドとした調査が行われていました。それによると早贄は10月~12月の間に良く見られ5月まで続くとのことです。1932年~1933年の調査で見つかった338件の解析では、餌としてはカエルが38%を占め次いでイナゴやバッタ類37%だったようです。また、完全体で枝に刺されたり挟まれたりした餌は67%で、他は頭や腹など餌の一部が早贄になっていたようです。餌の種類は60種以上で中にはカナヘビやネズミ、フナなども含まれていましたので、地域など環境の違いでかなり異なるものと思われます。
 早贄の習性には、餌の貯蔵説や縄張り主張説の他に最近では、早贄を食べるモズは声が良くなり雌とツガイになる確率が高いなどと言われているようです。シリアゲムシは、仕留めた餌を雌にプレゼントする「婚姻贈呈」を行うとのことでしたが、モズの早贄もそのような配偶行動なのだろうか。不思議です。



 八幡平のアスピーテラインは115日で閉鎖になるようです。そろそろ岩手は寒くなります。