WHOによってCOVID-19と命名されたコロナウイルス(CoV)の感染拡大により日本では3月2日(月)から春休みまで小学校や中学校、高校の臨時休校が要請されています。自治体によって対応が異なるようですが牛久市では完全実施しています。
ちなみに、コロナウイルスの名称はウイルスの表面に王冠(コロナ)のような突起がたくさんついてことに因んでいるとのことです。この突起物はスパイクたんぱく質(Spike protein)とも呼ばれており、人の細胞の表面に結合するドメインを持っているようです。
新型コロナウイルス(COVID-19) |
COVID-19は2003年に発生したサーズ(SARS-CoV)と同様に野生のコウモリ起源であり、人の細胞表面に露出している膜酵素のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2:エース2)をリセプターとして細胞に感染することなど類似性が高いことからSARS-CoV2(SARSの兄弟)とも呼ばれているようです。ACE2に結合する両ウイルスのスパイクタンパク質の相同性は76.5%とのことですが、COVID-19の方が結合力は強いそうです1)。
日本で許可されている特定保健用食品(トクホ)の中に「血圧が高めの方に適する食品」があります。これらトクホの多くはアンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害作用を持つ成分(主にぺプチド)を含有している食品ですが、今回話題になっているのはACEではなくてACE2の方です。
ACEとACE2は共に血圧の調節に関与する膜酵素であり、ACEはアンジオテンシンⅠのC末端から2つのアミノ酸を切断してアンジオテンシンⅡを生成し、生じたアンジオテンシンⅡが血管を収縮させてことによって血圧を上昇させる訳ですが、ACE2はアンジオテンシンⅠとⅡのC末端から1つのアミノ酸を切断する作用を持つことから、むしろこのアンジオテンシンⅡの体内濃度を減少させることになります2)。
アンジオテンシンⅡはそのレセプター(AT-1)を介して、マクロファージからの炎症性サイトカインの発現を高める作用を示すことも分かっているとのことですので2)、SARS-CoVやCOVID-19(SARS-CoV2)の感染は、ACE2の活性低下や発現量の抑制を通じたアンジオテンシンⅡ濃度の上昇をもたらし、飛沫感染部位に近い肺組織やACE2が多く発現している腎臓や腸管などでの炎症増悪をもたらしているものと考えられているようです。
COVID-19の感染に伴う体内のアンジオテンシンⅡ濃度の上昇が炎症憎悪の要因であるとすれば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を持つ食品成分や食品(トクホ)は炎症増悪を抑制する作用を持つのでしょうか。また、降圧剤のアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(バルサルタン等)も炎症憎悪抑制をもたらすように思えますので、研究3)の進展が待たれます。
COVD-19のスパイクタンパク質のヒトACE2への結合を阻害し、感染を成立させない物質が早く見つかればいいのですが。
追加:その後、COVID 19に対するACE阻害剤やACEレセプター阻害剤(ARB)の影響に関する論議が継続されています4)。3月21日
追加:その後、COVID 19に対するACE阻害剤やACEレセプター阻害剤(ARB)の影響に関する論議が継続されています4)。3月21日
参考)
1)Zhang H. et al.: Angiotensin-converting enzyme 2 (ACE2) as a SARS-CoV2
receptor、 molecular mechanisms and potential
therapeutic target., Intensive Care Med., https://doi.org/10.1007/s00134-020-05985-9
2)久場 敬司: アンジオテンシン変換酵素2の消化管アミノ酸吸収能とウイルス腸炎における病態生理学的意義の解析、三島海雲記念財団報告誌
3)Gurwitz D. : Angiotensin receptor blockers as tentative SARS-CoV2
therapeutics., Drug. Dev. Res., 2020 Mar4 Doi:10.1002/ddr. 21656.
4)G. Alexander:COVID 19:social distancing, ACE2 reeptors, protease inhibitors and beyond? Int. J. Clini. Pract., Mar. 18 (2020). doi: 10.1111/IJCP.13503
4)G. Alexander:COVID 19:social distancing, ACE2 reeptors, protease inhibitors and beyond? Int. J. Clini. Pract., Mar. 18 (2020). doi: 10.1111/IJCP.13503
0 件のコメント:
コメントを投稿