2020年3月7日土曜日

新型コロナウイルスへの感染や症状の差異はなぜ生じるのか


3月7日10時付のWHO報告によると新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数は1日で3735人増え101927人になったとのことです。その大半は発生国である中国に負うところが大きいのですが、日本のみならず、韓国やイタリア、イラン、ドイツ、フランス、スペイン、英国、米国などの各国で増加し始めており世界的な脅威になっています。
3月6日と3月7日の主な国の患者数(WHO)
 COVID-19200211月に中国で発生が報告されたSARSCoVとかなり類似したウイルスのようなので、当時SARSのワクチンや治療薬が開発されていれば、今回それらが役に立っていたかもしれません。でも、SARS20037月に終息宣言が出され、感染期間が短かったこともあり、残念ながら有効性の高いワクチンや治療薬は開発されていなかったようです。

しかしながら、これらSARSMERSを契機としたコロナウイスルに関するこれまでの研究の進展によって、ヒト細胞側のリセプター(ACE2)に結合するSARS-CoVのスパイクタンパク質の構造に関する研究がかなり進んでいたこともあり、今回のCOVID-19(新型コロナ)のスパイクタンパク質の構造は逸早く解明され1)、ウイルスの侵入メカニズムも分かってきているようです。ワクチンや医薬品等の早急な開発が期待されます。


SARSと新型コロナを比較してみると新型コロナの方が致死率は1/3以下と低くなっていますが、でもやはり高齢者は22%と高いようです。また、女性より男性の致死率が高く、心疾患や糖尿病、高血圧などの疾患を持つ方々の致死率も高くなるなどの特徴があるようです。さらに、感染しても発病しない方々も多いとのことなので、何故そのような差異が現れるのかについて関心がもたれています。


こうした感染率や発症の有無等に関連する要因を解明するための研究も活発に行われていますが、これまでに肺組織でのACE2の発現量はアジア系とヨーロッパ系で差異が無いこと、あるいは年齢や性差にも差が無いとする報告2)や、アジア系の人々にはACE2の対立遺伝子数が欧米系の人々より多いなどとする報告3)が出されていて、錯綜感があり精査が必要になっています。唯一差があったのは喫煙者と非喫煙者で、喫煙者のACE2発現量が高くなり、新型コロナへの感染が高まるのではないかと言われているようです。

生活習慣としての食事等の影響も分かれば良いのですが、そのためには実験用のモデルとなる動物の開発が必要になると思われます。

参考)
1)Daniel Wrapp et al.: Cryo-EM structure of the 2019-nCoV spike in the prefusion conformation. Science abb 2507 (2020)
2)Guoshuai Cai : Tabacco-use disparity in gene expression of ACE2,  the receptor of 2019-nCov., medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101 /2020.02.05.20020107
3)Yanan Cao et al.: Comparative genetic analysis of the novel coronavirus (2019-nCoV/SARS-CoV2)receptor ACE2 in different populations., Cell Discovery, 6:11(2020)


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