2021年1月29日金曜日

スペイン風邪から新型コロナウイルスまでの動向

   新型コロナウイルスへの感染者が127日に1億人を超えたと報道されました。世界の人口78億人の約1.3%に相当します。人口当たりの陽性率を国別に見ると、米国では約8%、チェコが9%、スペインが6%、イギリスが5.5%程度のようです。

18日には世界初の新型コロナウイルス用ワクチンの接種がイギリスで実施されました。その後、感染の激しい欧米諸国が次々にワクチン接種を始め、中でも、効率的に実施しているイスラエルではワクチンの接種に伴う感染者の減少が認められたと、最近報じられました。これを機に新型コロナウイルスへの感染が収束に向かうものと期待されています。

ワクチンの接種に伴い生じる新型コロナウイルスに対する抗体の持続期間がまだ不明のようですが、インフルエンザワクチンのように持続期間が5カ月程度だとすると、全世界が協力して集中的・計画的にワクチン接種を実施する必要があるように思います。

 新型コロナウイルス感染は通年性のようなので、流行期間が冬季に集中するインフルエンザより、かなり手強い相手ということになり、ワクチン接種遅延国がある状況では国際交流に支障が生じることになります。

 新型コロナウイルスのことがまだ良く分からないので、風邪の症状を引き起こすウイルスについて、門外漢ながら、最近の歴史等を少し調べることにしました。

当時の世界人口(18億~20億人)の25-30%(WHO)が罹患したとされるスペイン風邪は1918年から3年間続いたことは良く知られています。そして、その原因となったウイルスは15年後の1933年に発見され、現在はインフルエンザA型と呼ばれていることも周知の事実です。その後、通常の風邪症状をもたらすコロナウイルスは1966年に米国で発見され1)HCoV-229Eと命名され、翌年にはHCoV-OC43も発見されたようです。そして2002年にサーズ、2012年にマーズが発生しコロナウイルスへの関心が各段に高まりましたが、コロナウイルスに対する研究はインフルエンザに比べて遅れていたように思われます。サーズやマーズに対するワクチンが開発される前に新型コロナウイルスが発生してしまったということになります。


残念なことに細菌に対する抗生物質のような切れ味の良い医薬品は、ウイルスに対してはまだ開発されていないようです。そのため、ワクチンに対する期待が一層強くなり、初めての遺伝子ワクチンがワープスピードで実用化(許可)されました。この分野は、将来的には人工抗体をも含む新たな抗体医薬開発へと進むのではないかと予測されます。

実は、HCoV-OC43は今でこそ軽い風邪を引き起こすコロナ風邪の一つであると認識されていますが、スペイン風邪の前、1889年から1891年にかけて世界的な風邪の流行をもたらしたウイルス(日本ではお染風邪)だとする論文が数件報告され始めているようです21889年当時は、HCoV-OC43への感染は現在の新型コロナウイルスのように4%3%程度の致死率であり3、さらに神経系に障害をもたらす風邪として恐れられたようです。

新型コロナウイルスはHCoV-OC43と同じβ-コロナウイルスに属しているので、今後はできるだけ早くHCoV-OC43のように軽い風邪を引き起こすウイルスへと変異することを期待してしまいます。イギリスの変異株VOC-202012/01は感染率も致死率も高くなったとされていますが、今後どうなるのでしょうか。 

参考)

1)Dorothy Hamre et al.: A New virus isolated from the human respiratory tract., Proc. Soc. Exptl. Biol. Med., 121, 190-193 (1966)

2)Leen Vijgen et al.: Complete Genomic Sequence of Human Coronavirus OC43: Molecular Clock Analysis Suggests a Relatively Recent Zoonotic Coronavirus Transmission Event., J. Virol. 95(3), 1595-1604 (2005)

3)Charles Savona-Ventura: Past Influenza Pandemics and their Effect in Malta., Malta Medical J., 17(3), 16-19(2005)

2021年1月22日金曜日

畦道のコセンダングサ類はポリアセチレン(ポリイン(Polyyne))化合物など機能性成分に富む

   天気の良い日にはできるだけ散歩に出るように心がけていますが、人通りの少ない田んぼ道や林沿いの道を歩くので、家に帰ると時々衣類に草の種が付いています。衣類に着く草の種は「ひっつき虫」と呼ばれているようですが、その中でもセンダングサ類の種がついている場合が多いようです。

田んぼや林沿いの道には、セイタカアワダチソウがたくさん生えていますが、それに続いて多いのがセンダングサ類やノゲシ類のようです。

センダングサ類は花が小さく目立たないのでこれまで注目することはありませんでしたが、調べて見ると結構たくさんの種類があるそうです。

 

良く見かけるのはコセンダングサ(Bidens pilosa var. pilosa)で、耐寒性が無いためなのか霜が降りた後は全滅していました。コセンダングサはキク科ですが花びらは無く、キク科の花の中心にある黄色の筒状花だけがポロンと出ていて、晩秋には蝶類が良く蜜を吸っています。蝶類にとっては花びらの有無は関係ないようです。

 でもその気になって良く見て歩くと、花びらの着いたものも見つかります。コセンダングサの筒状花に5枚の白い花びらが着いた種類はコシロノセンダングサ(Bidens pilosa var. minor)と呼ばれているようです。


 コセンダングサとコシロノセンダングサが交雑すると、花びらが明らかに短いアイノコセンダングサも生じるとのことで、3種類が入り乱れて咲いている草藪も結構ありました。

 他に、アメリカセンダングサ(Bidens frondoa)やコバノセンダングサ(Bidens bipinnata)も牛久沼周辺に生えていました。


 コシロノセンダングサの花に良く似ていて、筒状花を中心に持ちサイズが1/4程度の草花が畦道に生えていたので、調べたところ「ハキダメギク」という名称の草花でした。少し可哀そうな名前です。ハキダメギクは、キク科コゴメギク属(galinsoga)のようです。

コセンダングサと房状花が似ている小さなハキダメギクの花

 コセンダングサ類は帰化植物ですが、セイタカアワダチソウに匹敵する程に増えることが出来る理由は、セイタカアワダチソウと同様に、アレロパシー作用を持つポリアセチレン化合物を含有しているからのようです。これまでに、37種類以上のポリアセチレン化合物がコセンダ草類に存在することが分かっており1)、炭素数に着目しC17-C14-C13-、ベンゼン環-などを持つ化合物に分類できるようです。具体的な例としては、三つ繋がった三重構造の端にベンゼン環が結合した-フェニルヘプタ-1,3,5-トリインなどを取り上げることができます。


 コセンダングサは多くのポリアセチレン化合物とともに、フラボノイドなどもたくさん含有しており、古くから台湾などを始めとする多くの国で民間薬として利用されていたことが分かりました。

 日本では、宮古島で栽培されたタチアワユキセンダングサが2016年に機能性表示食品として受理されているとのことです2)。機能性関与成分はカフェ酸とのことです。

参考)

1)     Tran Dang Xuan et al.: Chemistry and pharmacology of Bidens Pilosa: an overview., J. Pharmaceutical Investigation, 46, 91-132(2016)

2)宮古BP(ビーピー)機能性表示食品, 関与成分名、宮古ビデンス・ピローサ由来カフェー酸(2016)

 

2021年1月19日火曜日

新型コロナウイルスの地方への拡散と後遺症などの正しい情報

   日本でのコロナウイルス感染が冬の訪れとともに激しくなってきました。1日に7千人以上の新規陽性者が出始めたので、欧米のように一万人を超えるのではないかと不安です。医療に従事されている方々には本当に感謝しています。

今後どのようになるのか予測するのは困難ですが、最も感染者の多い米国の状況が何かの手がかりになるのではないかと感じています。

 米国の疾病予防管理センター(CDC)の情報1)を見ると、2月に始まった第一波の感染は都市部(メトロポリタン)で流行し、やがて第二波を経て、地方(非メトロポリタン)にその流行が移動していることが良く分かります。現在の米国の第三波では地方での感染者数・死者数が急増したようです。



  日本でも現在は、東京や大阪に加えて地域でのクラスター発生が顕著になってきているので、米国のように地方の死者数が増加することが懸念されます。

 治療体験で得た最新の情報や物資が早急に地方にもゆきわるたことを願っています。

 これまで日本などアジア圏では新型コロナウイルスへの感染や死者数が少ないと思われていましたので、感染者数が世界で最も多い米国において、人種や民族での違いが観察されているのかどうかについて再度調べて見ました。(前回271日ブログ(新型コロナの人種間差))

 人種や民族に関する情報収集率は完全ではなく、死亡率では情報収集率77%とのことですが、ヒスパニック系やアジア系の住民の方が、黒人や白人の住民よりも低い傾向にあるようです。

 欧州とアジアの各国における新型コロナウイルス疾患による死亡率をWorldometer3のデータを基に比較したところ、やはりアジアの各国での死亡率が明らかに低いようです。

 

  欧米に加えて、バングラディッシュ等の南アジア地域にはネアンデルタール人の遺伝子(第3染色体に存在する約50kbの遺伝子)がアフリカや東アジア諸国より高い頻度で保持:継承されているため、新型コロナウイルス疾患の重症化リスクが高いとする研究報告4)が出されていますが、バングラディッシュやインド、パキスタン等に加え、フィリピンやインドネシアでの死者数がアジア圏としてはやや多いのはそのせいなのでしょうか。


 新型コロナウイルスは神経系の細胞にも感染するようなので、軽い症状で済んだ若い方にも後遺症が残ることが日本で言われ始めました。それら後遺症についても、
2,000万人以上が感染している米国を始めとする欧米諸国からの情報を正確に伝えて欲しいと願っています。

 正しく恐れるための正しい情報を皆が待ち望んでいるように思います。

 参考)

1)https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#pop-factors_7daynewcases

2)https://www.worldometers.info/coronavirus/#repro

3)https://tyobei13.blogspot.com/2020/07/blog-post.html

4)Hugo Zeberg et al.: The major genetic risk factor for sever COVID-19 is inherited from Neanderthals., Nature, 587(26), 610(2020)

2021年1月12日火曜日

春の七草ハコベの耐寒性

   17日の七草の日の朝食はスズナ(カブ)とスズシロ(大根)のお粥でした。残念ながら、残りの5種(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ)は入っていませんでした。

七草の中でもハコベ(ハコベラ)は、牛久城跡や牛久沼の散歩の際に良く見かけますが、日本には結構たくさんの種類があり、中でもコハコベとミドリハコベ、ウシハコベが多いとのことです。

コハコベとミドリハコベは花の形状や大きさがほぼ一緒なので見分けにくいようですが、コハコベは茎が赤紫色で地面を這うように成長し、ミドリハコベは茎も葉と同様に緑で立ち上がる性質があるとのことです。一方、ウシハコベはコハコベやミドリハコベよりかなり大きいので判別が容易ですが、花柱がコハコベとミドリハコベは3本に分かれるのに対し、ウシハコベは5本に分かれていることからも判断可能とのことです。

牛久城跡の草むらを探したところ、コハコベとミドリハコベ、ウシハコベはそれぞれたくさん生えていたので写真をとりました。



これらハコベに関する情報を検索したところ、コハコベは耕地に、ミドリハコベは空き地や里山に良く生える特性を持っているとする論文1)が見つかりました。

 コハコベの種子は土中で休眠が解除され、その後の耕起によって地表に出て光を浴びることによって発芽する特性があるため、人手が加わる春と秋に畑で増殖しやすいとのことです。一方、ミドリハコベの種子は夏の高温で休眠が解除され、秋になって気温が低くなると発芽するので、空き地など人手が加わらない場所で秋に発芽し翌年増殖するようです。


 牛久城跡では、モグラによって土が掘り起こされたと思われる所に、コハコベが多かったように思います。

ハコベについて不思議に思うのは、その耐寒性です。ハコベはどの種類も葉が薄くてひ弱に見えるのですが、零度以下の気温下でも元気に生えています。そこで、耐寒性について調べてみました。

植物の耐寒性には、①細胞膜の柔軟性(リン脂質が豊富)、②細胞膜内液の不凍性(可溶性糖質等による凍結温度の低下)、③抗凍結タンパク質の存在、④その他の機構などが関与しているようです。中でも、細胞外液の凍結に伴い生じる細胞からの脱水による「細胞内液凍結の回避」が分かりやすい耐寒性メカニズムの一つとして良く取り上げられているようです。

植物の耐寒性機構の一例

調べて見ると、ハコベは4単糖のリクノースと5単糖のステラリオースを蓄積する特性を持っている2)とのことなので、これらの糖やその分解物が細胞の凍結温度を低下させ、耐寒性に寄与しているものと想像されます。

これに良く似た例として、稲の耐寒性に5単糖のフルクタンのニストースが関与しているとの報告3)がありました。

昆虫の例としては、テントウムシの耐寒性にイノシトールが関与しているとの報告もあります。

耐寒性については、樹木などでの研究も進んでいるので大変興味を持ちました。

 参考)

1)R. Miura et al.: A comparative study of seed dormancy and germination behavior between stellaria media, an Agrestal weed, and S. neglecta, a Ruderal., Weed Research Japan, 40(4), 271(1995)

2)M. Vanhaecke et al.: Isolation and characterization of a pentassaccharide from stellaria media., J. Nat. Prod 71(11), 1839(2008)

3)Z. Zhang et al.: Nystose regulates the response of rice roots to cold stress via multiple signaling pathways: A comparative proteomics analysis., Plos One, 15(9):e0238381(2020)

2021年1月11日月曜日

朝日峠展望公園からの朝日の見学と牛久大仏

   昨日、110日朝5時頃に起床し、まだ暗い中、土浦市の朝日峠展望公園へ朝日を見に家族全員で出かけました。これまでは筑波山の中腹で日の出を見ていましたが、今回は朝日峠にしてみようということになりました。

6時頃に小町の館の駐車場に着きましたが、駐車場には車が見当たらず、登山者はいないようでした。心細いので朝日峠への登山は取りやめ、車内で簡単に朝食を済ませてから表筑波スカイライン道路沿いにある朝日峠駐車場に車で向かいました。朝日峠駐車場には630分頃に着きましたが、既に数台の車が駐車していました。

 皆で展望台まで歩き、予報の651分まで日の出を待ちました。結構寒かったです。

晴天だったので明るい夜明けで、日の出を待っている間にも霞ヶ浦や土浦市街が良く見えました。うっすらと牛久大仏も確認できました。



令和3年初めての日の出の見学でしたが、天気に恵まれ綺麗なまぶしいい朝日を迎えることができました。新型コロナが終息し良い年になって欲しいと願いました。




 昨年数回登山した小町山と筑波山の朝焼けの写真を撮りました。朝日峠展望公園からは小町山のパラグライダー離陸場が見えます。

  駐車場に戻ったところ車が増え、三脚を使用して写真を撮っている方もいました。簡単にアクセスでき、景色も良くトイレ等もあるので人気のスポットのようです。


 無事に今年初めての日の出を見学することができました。良い年になることを願っています。

 

2021年1月8日金曜日

令和3年、新年の牛久城跡と牛久沼散歩

  新年になりました。今日は8日ですが、牛久城跡を通り牛久沼周辺を散歩しました。寒かったのですが雲一つない晴天でした。

牛久城跡散歩コース

1月の牛久沼

牛久城跡の広場に着き、あたりを見まわしていたら足元から蝶々が飛び立ちました。追いかけてよく見るとムラサキシジミでした。草むらにいるムラサキシジミを見たのは初めてでした。これまでは、いつも木の葉に止まっていたので意外でした。


牛久城跡のムラサキシジミ(1月8日)

このムラサキシジミは越冬成虫なので、寒い冬を一生懸命乗り越えて命をつないでいくのでしょう。

ムラサキシジミが、瑠璃色の翅を一瞬一瞬キラリキラリと見せながら飛ぶ様子に魅かれて気に掛けるようになりましたが、新年を迎え、初めて出会った蝶々がムラサキシジミだったことは何かの因縁なのかなと感じました。

10月に撮影した動画を掲載します。

昨年12月には同じ場所でヒメアカタテハの越冬成虫に出会いました。小さな命ですが繋がっていきます。

新型コロナの感染は収束せず、むしろ拡大していますが、自然はいつもの顔をしているようです。

未来に通ずる収束技術の開発を願っています。