2021年1月12日火曜日

春の七草ハコベの耐寒性

   17日の七草の日の朝食はスズナ(カブ)とスズシロ(大根)のお粥でした。残念ながら、残りの5種(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ)は入っていませんでした。

七草の中でもハコベ(ハコベラ)は、牛久城跡や牛久沼の散歩の際に良く見かけますが、日本には結構たくさんの種類があり、中でもコハコベとミドリハコベ、ウシハコベが多いとのことです。

コハコベとミドリハコベは花の形状や大きさがほぼ一緒なので見分けにくいようですが、コハコベは茎が赤紫色で地面を這うように成長し、ミドリハコベは茎も葉と同様に緑で立ち上がる性質があるとのことです。一方、ウシハコベはコハコベやミドリハコベよりかなり大きいので判別が容易ですが、花柱がコハコベとミドリハコベは3本に分かれるのに対し、ウシハコベは5本に分かれていることからも判断可能とのことです。

牛久城跡の草むらを探したところ、コハコベとミドリハコベ、ウシハコベはそれぞれたくさん生えていたので写真をとりました。



これらハコベに関する情報を検索したところ、コハコベは耕地に、ミドリハコベは空き地や里山に良く生える特性を持っているとする論文1)が見つかりました。

 コハコベの種子は土中で休眠が解除され、その後の耕起によって地表に出て光を浴びることによって発芽する特性があるため、人手が加わる春と秋に畑で増殖しやすいとのことです。一方、ミドリハコベの種子は夏の高温で休眠が解除され、秋になって気温が低くなると発芽するので、空き地など人手が加わらない場所で秋に発芽し翌年増殖するようです。


 牛久城跡では、モグラによって土が掘り起こされたと思われる所に、コハコベが多かったように思います。

ハコベについて不思議に思うのは、その耐寒性です。ハコベはどの種類も葉が薄くてひ弱に見えるのですが、零度以下の気温下でも元気に生えています。そこで、耐寒性について調べてみました。

植物の耐寒性には、①細胞膜の柔軟性(リン脂質が豊富)、②細胞膜内液の不凍性(可溶性糖質等による凍結温度の低下)、③抗凍結タンパク質の存在、④その他の機構などが関与しているようです。中でも、細胞外液の凍結に伴い生じる細胞からの脱水による「細胞内液凍結の回避」が分かりやすい耐寒性メカニズムの一つとして良く取り上げられているようです。

植物の耐寒性機構の一例

調べて見ると、ハコベは4単糖のリクノースと5単糖のステラリオースを蓄積する特性を持っている2)とのことなので、これらの糖やその分解物が細胞の凍結温度を低下させ、耐寒性に寄与しているものと想像されます。

これに良く似た例として、稲の耐寒性に5単糖のフルクタンのニストースが関与しているとの報告3)がありました。

昆虫の例としては、テントウムシの耐寒性にイノシトールが関与しているとの報告もあります。

耐寒性については、樹木などでの研究も進んでいるので大変興味を持ちました。

 参考)

1)R. Miura et al.: A comparative study of seed dormancy and germination behavior between stellaria media, an Agrestal weed, and S. neglecta, a Ruderal., Weed Research Japan, 40(4), 271(1995)

2)M. Vanhaecke et al.: Isolation and characterization of a pentassaccharide from stellaria media., J. Nat. Prod 71(11), 1839(2008)

3)Z. Zhang et al.: Nystose regulates the response of rice roots to cold stress via multiple signaling pathways: A comparative proteomics analysis., Plos One, 15(9):e0238381(2020)

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