2022年5月28日土曜日

タツナミソウ属の花とその主要な化合物としてのフラボノイド

   5月のハイキングや散歩で撮った写真を見返したところ、シソ科のタツナミソウ属の花の写真がたくさんありました。

どの花も「波が立っている様子」に似ていますが、じっくり観察すると、咲いていた場所ごとに全部違っているようで、グループ分けが難しく、混乱してしまいます。

2017年に発表された研究論文によると、タツナミソウ属(Scutellaria)は、世界的には300-350種、そのうち日本では18種が知られているとのことで1)、染色体数は2n=26,28,30の3種類とされていました2)

5月4日に岩手から牛久に戻り、5月11日に筑波山の梅林の駐車場に車を止め沼田新田酒寄林道を歩きましたが、その際にタツナミソウ属の写真を撮っていました。

筑波山の沼田新田酒寄林道のタツナミソウ

三河の植物観察(https://mikawanoyasou.org)に掲載されていたタツナミソウ(Sctellaria indica L.)と良く似ていました。文献によればタツナミソウの染色体数は2n=26のようです2)

その後、518日に牛久城跡広場でタツナミソウ属の花を見つけました。開花当初は花弁が立ち上がらず、2対の花が水平方向に飛び出し、やがてやや上向きに伸びる、ヤマタツナミソウ(Sctellaria pekinensis var. transitra)のようです。染色体数は2n=28と報告されていました。でも、下唇弁に模様がないようなので、もう少し詳しく観察する必要があるのかも知れません。


牛久城跡のヤマタツナミソウ

519日には筑波山に登山しましたが、その際に通った桜川市の「ふるさとの森」でもタツナミソウ属の花が咲いていましたが、オカタツナミソウ(Scutellaria brachyspica)の特徴と一致するように思いました。オカタツナミソウの染色体数は2n=26と報告されていました。

桜川市「ふるさとの森」のオカタツナミソウ

同じ日に鬼ヶ作林道で見つけた花もオカタツナミソウのようです。

鬼ヶ作林道のオカタツナミソウ

 なお、タツナミソウ属の中でもっとも有名な種類はコガネバナ(黄金花:Scutellaria baicalensis, Georgi)で、黄色の根が漢方薬(黄芩:おうごん)として利用されているようです。中国北部や朝鮮半島に分布する種とのことです。

 この漢方薬の主要成分は種名に因んで命名されたバイカレインと黄芩(おうごん)に因んで命名されたオウゴニンで、共にフラボノイドのようです

 一方、属名のscutellariaに因んで命名されたフラボノイドのスクテラリンも有名のようですが、この化合物は中国に分布するセイタカナミキソウ(Scutellaria barbata D.Don)の主要なフラボノイドのようです3)

  嬉しいことに、スクテラレインとその配糖体のスクテラリン等は日本にも分布するタツナミソウ(scutellaria indica L.)の地上部にも存在することが分かっているようです4)

最近は、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス化合物が注目されていますが、タツナミソウ属に存在するバイカレインやオウゴニンの抗ウイルス作用に関する論文もありました5)

タツナミソウ属が含有するフラボノイドの機能性も面白そうです。

 

参考)

1)Yuichi Kadota et al.: A New Species of Scutellaria (Laminaceae) from Kyushu, Southern Japn., J. Jpn. Bot. 93(1), 18-22 (2018)

2)Takashi Sawanomukai et al.: Chromosome nunbers of Japanese Scutellaria (Lamiaceae)., The journal of phytogeography and taxonomy., 51(2), 131-136 (2003)

3)Xiao Haitao et al.: Chemical constituents of Scutellaria bartata D.Don., Shenyang Yaoke Daxue Xuebao, 23(10), 637-640 (2006)

4)Yukinori Miyaichi et al.: Studies on the Constituents of Scutellaria Spicies. XI. On the Flavonoid Constituents of the Aerial Parts of Scutellaria indica L., Chem. Pharm. Bull. 37(3), 794-797 (1989)

5)Sheng-Teng Huang et al.: Scutellaria barbata D.Don Inhibits the Main Protease (Mpro and TMPRSS2) of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) Infection., Viruses, 2021, 13, 826.

2022年5月26日木曜日

5月下旬の土浦市小町の館から宝篋山への登山

   5月25日は快晴だったので、土浦市の小町の館駐車場に車を止め小町山頂上を経由し宝篋山に登りました。

小町の館から「おかめ岩」経由で小町山頂上へ

「おかめ岩」の道を通り小町山に登りましたが、おかめ岩付近には、丁度たくさんのオカタツナミソウの花が咲いていました。季節外れのフユイチゴの実も見つけました。登山道の両脇にあるつやつやした緑色のフユイチゴの葉から赤い実が顔を出していました。

オカタツナミソウとフユイチゴ(5月25日)

小町山の頂上に朝9時頃到着したので「もぐもぐ処」にはまだ誰もいませんでした。頂上では一組の登山グループが休憩されていました。

頂上付近の登山道で一匹のセンチコガネを見つけました。危うく踏むところでした。頂上のパラグライダー飛行場では、ハナアブやハナバチとともにクロハナムグリがヒメジョオンの花にとまっていました。

センチコガネとクロハナムグリ

小町山頂上から、鬼越山を経て尾根伝いに宝篋山に向かいました。

小町山頂上から尾根伝いに宝篋山へ

途中、様々な野草の花が咲いていましたが、ハハコグサとチチコグサが一緒に咲いていたので写真をとりました。ガマズミやエゴノキなど樹木の花も満開でした。

ハハコグサとチチコグサ   ガマズミ    

電波棟等の管理道路のゲートをくぐり宝篋山へと向かいましたが、道の両脇にはキンポウゲのつやつやした黄色い花が咲いていてとても綺麗でした。

ヒメジョオンの花に蟻のような小さな虫が2匹いたので、写真を撮り後で調べたところ「モモブトカミキリモドキ」だったことが分かりました。初めてみました。

モモブトカミキリモドキ

少し前に、ハンミョウには毒がないらしいということをブログに書きましたが、ハンミョウの毒として間違われていた毒物質の「カンタリジン」を、実はこの「カミキリモドキ科」の昆虫が持っているとのことなので、潰したりすると、皮膚に水ぶくれができるようです。

道路わきの草花を楽しみながら宝篋山頂上に到着しましたが、頂上には数組の登山グループが休憩しておられました。

頂上付近でコジャノメとコミスジを見つけました。頂上の椅子に腰かけると「クマバチ」が周りを飛んでいて、その羽音が響いていました。リムスキーコルサコフの曲「クマンバチの飛行」でクマバチは有名ですが、様々な逸話があるようです。

コジャノメとコミスジ

 その後、少し休憩し東城寺コースで下山しました。

宝篋山から東城寺経由で小町の館へ下山

 東城寺コースには比較的水量の多い小川が流れていて、せせらぎの音が聞こえます。

宝篋山から東城寺に向かう下山道の景観

小川のほとりには、フタリシズカが咲いていました。林から出た日当たりの良い所では、ウツギの花が満開でした。

フタリシズカとウツギの花

また、見慣れないトンボが飛んでいたので写真を撮り、調べたところシオヤトンボのようです。

シオヤトンボ

東城寺でお参りをし、小町山の天の川コースを横切り12時前に駐車場に戻ることができました。楽しい登山ハイキングでした。

午後は、孫の下校サポーターがあります。

2022年5月20日金曜日

5月中旬の筑波山の草花と昆虫

   519日につくし湖(標高50m)に車を止め、「ふるさとの森」から薬王院(標高220m)を経て鬼ヶ作林道出会い(標高440m)まで歩き、筑波高原キャンプ場(標高510m)から三本松コースで筑波山(標高877m)に登り、その後つくば高原キャンプ場から湯袋峠コースを下り、県道月岡真壁線出会いから折り返して、もときた道を通って駐車場に戻りました。 

 つくし湖から薬王院までの「ふるさとの森」は、木々の葉が茂りすっかり緑の森になっていました。このところ雨が続いたので「鹿威し」の音がコーンと高く響いていました。

つくし湖から薬王院まで
(鹿威しがコーンと鳴っていました)

 4月に来た際にはニリンソウが咲いていましたが、一か月過ぎた今回はタツナミソウに良く似た水色の花が目に止まりました。何回も歩いているのに、初めてみたように思うのですが、調べたところ「オカタツナミソウ」のようです。

オカタツナミソウとタツナミソウの比較

 薬王院から鬼ヶ作林道出会いの区間も木々の葉が生茂り、緑の林の中を通るいつもの登山道になっていました。

 鬼ヶ作林道ではやはり「ツクバキンモンソウ」が気になります。たくさん見つかりましたが、花は終わったようです。昨年は4月下旬にたくさんの花が咲いていました。

ツクバキンモンソウ(5月19日)

 林道にはヒメジョオンがたくさん咲いていて、たくさんのハナアブやハナバチが訪れていました。

ヒメジョオンに群がるハナアブ
(シマハナアブ、アシブトハナアブ、ナミハナアブ)

 シマハナアブ、アシブトハナアブ、ナミハナアブなど様々な種類が群れていたので、もっと真剣に写真を撮るべきでした。ハナバチもいました。

 つくば高原キャンプ場から女体山に向けて登山しましたが、すれ違った登山者は数名程度で、意外に少ない感じがしました。

つくば高原キャンプ場から女体山頂上へ

 女体山頂上には相変わらず大勢の観光客がいました。汗だくだったので今回は、自然研究路の散策を諦め頂上の神社前から直ぐにキャンプ場に引き返しました。

 頂上付近には「ユキザサ」の花がたくさん咲いていました。

筑波山のユキザサ(5月19日)

 おかげで時間に余裕があったので、湯袋峠コースに向かい沢を下りました。

湯袋峠コース(キャンプ場から県道150号月岡真壁線へ

湯袋峠コース道沿いの小川

 道沿いに「ハナネコノメソウ」があるのかも知れないなどと期待しながら歩きましたが、既に時期が遅かったようで「ニホンカワトンボ」を数匹確認しただけでした。

縁紋が赤色の日本カワトンボ

 このコースはきれいな沢沿いを歩く遊歩道なのでとても好きなのですが、これまで歩いて見てほとんど利用者がいない感じです。一人よりも数人でワイワイ歩くようにした方が良いのかも知れません。

 今回も車が走っている県道の月岡真壁線に出たところで引き返しました。いつかは後1.1㎞向こうにある湯袋峠終点まで歩いて見たいと思っています。

 帰りの鬼ヶ作林道で、コミスジが足元にとまりました。

足元に止まったコミスジ

 いつもは、木々の枝まで高く飛ぶので写真が撮りにくいのですが、今回は靴でふみそうな砂利道に飛んできて、しばらく止まっていました。綺麗なコミスジでした。

2022年5月19日木曜日

5月中旬の牛久城跡と牛久沼のほとりの野草と昆虫

    5月18日に牛久城跡を通って牛久沼まで散歩しました。

牛久城跡や牛久沼のほとりでは、木々や野草の新芽がかなり大きくなり、緑に包まれて爽やかな雰囲気の中を歩くことができました。

春の牛久城跡(5月18日)

春の牛久沼(5月18日)

広場や散歩道では、様々な野草の花を観察することができました。

牛久城跡の広場には、ヤマタツナミソウがたくさん咲いていました。これまで気づかなかったのが不思議です。

ヤマタツナミソウ     ジシバリ   

群生するジシバリやキツネノボタンに加えて、背の高いオニタビラコの花も見つけました。

キツネノボタン    オニタビラコ  

牛久沼のほとりの散歩道では、ムラサキカタバミやユウゲショウの花があちこちに咲きピンクの花が良く目につきます。きれいです。

 
  ムラサキカタバミ    ユウゲショウ   

ニワゼキショウもたくさん咲いていましたが、赤色や白色の他に薄い水色の花もみかけましたので調べたところ、水色の花はオオニワゼキショウと呼ばれているようです。

    ニワゼキショウ     オオニワゼキショウ

 赤色の花の種からは赤色の花が、白色の花の種からは白色の花が咲くのでしょうか。中間色が無いのが不思議です。交雑しないのかな?

 越冬成虫の時期もほぼ終わり、今年の幼虫から羽化したと思われるチョウや蛾なども少しずつ見かけるようになりました。

 牛久城跡の広場では、ヒメウラジャノメやヒメジャノメを見つけました。広場は木々に囲まれているので、木陰に生息するチョウ類が多いのでしょうか。

ヒメウラナミジャノメ

 牛久沼のほとりで、最近良く見かけるのはやはりギシギシやスイバなどのタデ科ギシギシ属を食草とするベニシジミです。ヒメジョオンの花の蜜を吸っているのを良く見かけました。

4個体のベニシジミ

 また、クローバの花にはヒメアカタテハが止まっていました。でも、じっとしていないので写真を撮るのが大変です。翅の裏側の模様が鮮やかです。

ヒメアカタテハ

 今回は、蝶々の他に比較的大きな蛾の「オオウンモンクチバ」を見つけました。また、餌を求愛行動の道具として使用する「ヤマトシリアゲムシ」も見つけました。春型は胴体が黒色で、夏から秋になると胴体が飴色になるとのことです。

オオウンモンクチバ  ヤマトシリアゲムシ

 不思議な鳥がいると思い写真を撮って、後で調べたところ「ミカドキジ キジ(雄)」でした。

 (本ブログを閲覧された方から、ミカドキジではなくてキジ(雄)ですとのご指摘を受け、ご指摘内容に沿って再確認したところ、ご指摘のとおりでした。岩手で良く見たキジとかなり印象が違っているように感じ、見たこともないミカドキジにしてしまいました。)ご指摘ありがとうございました。6月24日

ミカドキジ キジ(雄)5月18日

 野生のものでしょうか。わかりません。

記:6月24日

 実は珍しいとの想いから鳥との再会を目指し、度々同じ場所を歩きました。6月18日に牛久沼方面を歩いた際に、同じ場所で注目していた鳥と思われる鳥を見つけ写真を撮りました。

 素早く逃げてしまい写真はボケましたが、後ろ姿はキジの雄のようでしたので「ミカドキジ」からキジの雄に修正すべきでした。

牛久沼のほとりのキジ(雄)6月18日

 これから草花や昆虫のシーズンになるので、散歩が楽しみです。でも虫が嫌いな方もたくさんいるので、すこしは遠慮しつつ、写真を撮り続けたいと思っています。

2022年5月12日木曜日

早春の朝日峠と小町山登山

    5月4日(水)に岩手から牛久に戻りました。その後雨模様が続きましたが、5月10日(火)に久しぶりに良い天気になったので、小町の館駐車場に車を止め、朝日峠展望台と小町山に登りました。

小町の館から朝日峠へ(5月10日)

朝日峠に登る途中「おかめ岩」に立ち寄りましたが、その付近で青い虫が足元から飛んだので追いかけ確認したところハンミョウでした。虹色の翅がとても綺麗でした。久しぶりに観察することができました。

おかめ岩付近で出会ったハンミョウ
(毒を持っていないのに毒虫と誤解されている)

小さい頃、ハンミョウには毒があると思っていましたが、本当は毒物質を持っていないようです。ハンミョウはオサムシ科に属し、毒を持っているのはツチハンミョウ科に属する昆虫だったようです。ハンミョウはツチハンミョウ科に属しているものと勘違いされたのかも知れません。毒物質はカンタリジン(cantharidin)という物質で、ジョウカイボン(浄海坊:平清盛)の学名Cantharidaeに因んで命名されたとのことですが、ジョウカイボンにもカンタリジンがほとんど無いとのことなので、ややこしいです。少し調べて見たいと思いました。

ツチハンミョウ科に属し、時々見かけることのあるマメハンミョウにはカンタリジンがあり、その毒が手に触れると水ぶくれができるそうです。以前、岩手でマメハンミョウを見かけました。

ジャガイモの葉の上のマメハンミョウ(岩手にて)

おかめ岩から朝日峠コースに戻り、改修が済んだもみじ谷を通り水源の森を経て、朝日峠展望台に登りました。

もみじ谷から水源の森を経て朝日峠へ(5月10日)

樹木の若葉に包まれて歩くことができ、爽快でした。

朝日峠展望台では数名の登山者が休んでおられました。

朝日峠展望台からの眺めとその付近の様子(5月10日)

 朝日峠展望台ではツツジの花が満開でした。その花にトラマルハナバチとクロマルハナバチと思われるハナバチ類が訪れていました。

ツツジの花の蜜を吸う2種類のハナバチ(5月10日)

朝日峠展望台からハート石の所まで杉並木を歩き、そこから小町山の坂道を一生懸命登りました。途中十数名の団体登山者とすれ違いました。新緑が綺麗なので登山者が多いようでした。

ハート石から小町山頂上へ(5月10日)

2時から小学生の下校サポーターをすることになっていましたので、小町山頂上で筑波山を眺め、さらに頂上にあるパラグライダー飛行場から朝日峠展望台を眺めて、直ぐに天の川コースで下山しました。

小町山頂上から天の川コースで下山(5月10日)

天の川コースでコミスジとニホンカワトンボに会いました。

天の川コースにいたコミスジとニホンカワトンボ

山の樹木の新芽は樹種別に色が異なっているので、この時期の山は色とりどりに染まり、生命感に溢れ本当に綺麗です。

色とりどりの早春の山(5月10日)

楽しい登山ができました。雨が続きますが晴れたらまた来ます。