2020年1月19日日曜日

牛久沼周辺でヤママユガ科のウスタビガの繭を見つけました


  1月11日に牛久沼周辺を散歩した際にヤママユガ科のウスタビガ(Rhodinia fugax)の繭を2個見つけました。緑色の綺麗な繭でした。確か小さい頃にも見た記憶があります。「ヤマビコ」と呼んでいたと思います。ヤマビコなので、大きな声で叫ぶとこの繭がコダマを返すのだと思っていた時期があったように思います。
ヤママユガ科のウスタビガの繭

 今回は、春になったらきっと繭の中の蛹が蛾になって飛び出すに違いないと期待し、少しためらいがありましたが2個とも家に持ち帰りました。

 でも調べてみたところ、この繭の中の蛹は秋には成虫になって繭から飛び出し、卵で越冬するようです。提灯のように釣り下がっている繭の上部を開いて中を覗いてみたところ、確かに抜け殻らしき残骸だけが残っていました。全く知りませんでした。
ウスタビガの繭の様子(空になっている)

 言われてみれば確かに軽く、繭を振ってみても蛹の感触がありません。思い込みだけはしたくないといつも思っているのですが、残念です。

 日本には、カイコ(家蚕)のように繭を造る野蚕が結構いるようで、ヤママユ(天蚕)については現在も飼育している生産者やグループがおられるようです1)。でも、繭が小さいのでウスタビガの利用はほとんど行われていないようです。ウスタビガの繭はヤママユ(天蚕)とともに綺麗な緑色をしていることから、その色素に関する研究が現在行われていました。


実は、カイコ(家蚕)も本来はそれぞれ黄色や緑色あるいは褐色等の色付き繭を造る特性を持っていたそうで、突然変異体である白色の繭が日本では好まれ定着し現在に至っているとのことでした2)
様々な色のついた本来のカイコの繭(白は突然変異体)

 ヤママユの繭の色素に関する最近の研究3)によると、鮮やかな緑色になるためには光が必要で、薄暗い場所で形成された繭は黄色になるとのことです。明所下で形成される色素はビリン系色素の青色色素ビルベルジンで、これが黄色のフラボノイド(餌由来)と共存することによって、鮮やかな緑色になるとのことです。

 青色のビルべルジンはヒト等では赤い血液色素であるヘムの分解によって生じ、最終的には黄色のビリルビンとなり排出されますが、ヤママユやウスタビガの繭では、詳しい生成経路は不明ですがビルベルジンがビリルビンに還元されていないようです。
血色素ヘムの酸化分解によって生じる青色色素ビルベリジン
 人の赤ちゃんでも、ビルベルジンがビリルビンに還元されず、緑色の便が出ることがあるそうです。同じように青い糞をする鳥もいるとのことです。



参考)
1)鈴木 幸一:蚕糸・昆虫バイオテック、82(2)、69-71(2013)
2)横山 岳:シルクレポート、2014.1118-20
3)Yamada H. et al.: J. Insect Physiol., 50(5), 393-401(2004)


0 件のコメント:

コメントを投稿