10月も下旬になり、散歩の際に良く見かける草花はセイタカアワダチソウやカタバミなど数種になってしまいました。
セイタカアワダチソウは日本生態学会によって、日本の侵略的外来種ワースト100に選定されているとのことです。セイタカアワダチソウは北米原産で、ススキなどの在来種と競合することから侵略的外来種に選定されたようです。
セイタカアワダチソウ |
セイタカアワダチソウは、根で阻害物質(他感作用物質)を合成することによって他の植物の生育や種子の発芽を抑制して優占種になるものの、やがて土壌中の阻害物質濃度が高くなり過ぎると自身の生育も阻害され淘汰されてしまうとのことです。
阻害物質の土壌への溶出は、枯葉を通じたものが多く、根や生葉からはあまり溶出されていないことも明らかになっているようです。
阻害物質の土壌への溶出は、枯葉を通じたものが多く、根や生葉からはあまり溶出されていないことも明らかになっているようです。
根で生産される他感作用物質はその分子内にアセチレンと同じ炭素の三重結合を3個保持する化合物で「シス-デヒドロマトリカリア酸メチルエステル(cis-DME)」であることが、日本農芸化学会の1969年大会で報告されています1)。
セイタカアワダチソウの他感作用物質
シスーデヒドロマトリカリア酸メチルエステル(Cis-DME)
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多くのキク科植物は、このような炭素の三重結合を複数持つ「ポリアセチレン化合物(polyacetylenes)」あるいは「ポリイン化合物(Polyyne)」を含有しており、マトリカリア酸の「マトリカリア」はハーブのカモミールに似たキク科植物の学名(Matoricaria inodora)に因んだ名称のようです。植物に存在するポリアセチレン化合物は特有な紫外線吸収スペクトルを示すことが明らかになり、それらに関する研究は1930年以降ソ連や北欧の研究者によって活発に行われその成果が報告されています。
植物由来のポリアセチレン化合物の紫外線吸収スペクトル |
最近は、ニンジンにも「ファルカリノール(falcarinol)」と呼ばれるポリアセチレン化合物が見いだされ2)、抗ガン作用や抗菌作用などの保健的な効果を示す可能性がある化合物として注目され始めているようです。
ニンジンのポリアセチレン化合物[ファルカリノール] |
でも、もっと有名な「ポリアセチレン」化合物は、ノーベル化学賞を受賞された白川秀樹博士らによって開発された導電性高分子ということになります。高分子のポリアセチレンは共役二重結合体であり、植物から単離されたポリアセチレン化合物のような炭素の三重結合を持つ化合物ではありません。アセチレン分子が結合して生じた高分子なのでポリアセチレンと呼んでいる訳です。
ポリアセチレン |
この高分子ポリアセチレンに電子を受け取るヨウ素などを添加すると二重結合のパイ電子が移動できるようになり導電性が飛躍的に向上するとのことです。この導電性高分子はタッチパネルとしても利用されるなど、その用途が広がっているようです。
なお最近は宇宙ブームでもありますが、土星の衛星のタイタンの大気にジアセチレンが存在することが確認されたとのことです。
ポリアセチレンへのヨウ素添加による導電性の飛躍的向上 |
土星の衛星タイタンの大気に存在するジアセチレン |
三重結合を複数持つポリアセチレン化合物については、共役二重結合体と同様に導電性に関する研究も行われていますが、食品成分の一つとしてその有用性が注目され始めているので、面白いと感じています。
参考)
1)河津一儀ら:昭和44年日本農芸化学会大会講演要旨集、p130(1969)
2)Dawid C. et al.:Bioactive C17-Polyacetylenes in Carrots: Current
Knowledge and Future Perspectives., J. Agric. Food Chem., 63(42),
9211-9222(2015)
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