2019年8月26日月曜日

アオバハゴロモの集団に会いました

 821日に牛久沼を散歩した際にアオバハゴロモの成虫の集団に初めて出会いました。この時期が鳥で言えば丁度巣立ちの時だったようです。そこでこれまで牛久沼周辺で撮った写真を見返し、6月から8月までのハゴロモ類の生育過程をたどることにしました。
アオバハゴロモの成虫群(8月21日)
日本で良く見られるハゴロモ類としては、アオバハゴロモ、ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、スケバハゴロモなどがあるようですが、私がこれまでに見た成虫は残念ながらアオバハゴロモとベッコウハゴロモだけです。今回も、アオバハゴロモの成虫だけを確認しています。多くの方々がこれら4種の写真を公開しているので、少し不甲斐ない気分です。

 ちなみに、ハゴロモ類は刺激すると飛び跳ねることから英語ではプラントホッパー(planthopper)と呼ぶようです。バッタがグラスホッパー(grasshopper)ですので紛らわしいです。海外にはアオバハゴロモと同じような形態で、赤色や白に斑点のある種類もいたり、ワニの形に似た手のひらより大きなハゴロモ(ユカタンビワハゴロモ)がいたりして、害虫ではあるもののその容姿が結構注目されているようです。
他国のアオバハゴロモ科(Flatidae)昆虫の例
 私もかなり興味はありますが、なかなか他のハゴロモ成虫を見つけることができません。そこで各ハゴロモ類が潜んでいそうな植物に関する情報を探したところ、ベッコウハゴロモはクズやクワに、スケバハゴロモはクワやウツギに、アミガサハゴロモはカシの木にいるとのことなので、これから注意して観察したいと思っています。

牛久沼周辺の道沿いには、白くなった枝や蔓が6月にはたくさんありました。7月中旬には、その白くなった小枝や蔓上でそれぞれの個体が独立して歩いていました。そして8月下旬にはアオバハゴロモの成虫がたくさん観察されたという経緯になります。
ハゴロモ類の幼虫の様子(牛久沼周辺:6月27日)
ハゴロモ類の幼虫の様子(牛久沼周辺:7月17日)
アオバハゴロモは食性も広く、見かける頻度が高い種類なのでこれまでに撮った写真からその生育過程がたどれました。他の種類についてはこれからも機会をみて観察を続け幼虫から成虫までをたどってみたいと思っています。
アオバハゴロモの生育経過
これらハゴロモ類の幼虫がいるところには、必ず蜘蛛が潜んでいるようです。青色蜘蛛のサツマノミダマシもハゴロモ幼虫のいる白い枝の近くいましたし、他に、コゲチャオニグモやイオウイロハシリグモなども見つかりました。
ハゴロモ類の近くにいたクモ類
サツマノミダマシ、イオウイロハシリグモ、コゲチャオニグモ
自分よりはるかに大きい蛾を両足でしっかりと捕獲している蜘蛛や、虫を捕まえて肉団子にしているムモンホソアシナガバチなども撮影できました。昆虫の世界は残酷なように見えますが、それでもしっかりと多様な種が維持されていくのでその仕組みに驚かされます。
クモによる蛾の捕獲
肉団子を造るムモンホソアシナガバチ
  散歩から帰った日の午後、自宅の天井にアオバハゴロモが一匹止まっていました。私の体にくっついてきたのでしょうか、あるいは家の周りの植物から飛び移ったのでしょうか。
散歩から一緒に帰宅していたアオバハゴロモ

2019年8月25日日曜日

7月と8月の牛久沼散歩 -トホシテントウとクロバネツリアブー

 7月17日と821日に牛久駅を経由して牛久沼周辺を散歩しました。717日には、いつも見かける2羽の白鳥が三日月橋周辺にいましたが、821日には三日月橋付近には見当たらず、稲荷川を1km以上さかのぼったところにいました。牛久沼から離れ、桜の小径沿いにかなり歩いたところに2羽が仲良くいましたので少しびっくりしました。
8月の牛久沼と散策路
牛久沼周辺の散歩には5月からほぼ毎月1回以上出かけ、気ままに歩きなが風景を眺め草花や虫の写真を撮っていますが、目にとまる草花や虫の種類が少しずつ変わるのが良く分かります。

 6月の散歩では足元からアマガエルが飛び跳ねその多さに驚きました。ヤブガラシの葉に数匹のアマガエルがそれぞれチョコンと乗っている姿は圧巻でした。

7月の散歩ではベニシジミが特に目立ちました。繁殖期なのでしょう。同じところに2羽止まっているところを良く見かけました。また、アヤメ園のツクバネウツギが満開で、羽音の大きなクマバチが花びらを引きちぎる勢いで花から花へと飛びまわっていました。
牛久沼のベニシジミとイチモンジセセリ、キタテハ
ハナツクバネウツギ(アベリア)の花の蜜を吸うクマバチ
7月の散歩での大きな収穫は、トホシテントウ(Epilachma admirabilis)との遭遇でした。トホシテントウは成虫も幼虫もカラスウリ類の葉を食べるとのことです。岩手のジャガイモ畑で良く見かけるオオニジュウヤホシテントウとほぼ同じサイズでしたが、艶々して赤色が濃く大きな10個の黒斑が目立ちました。カラスウリは岩手や牛久で良く見かけるので、これからカラスウリを見かけたらトホシテントウを探してみます。トホシテントウは卵で越冬するとのことです。
トホシテントウとオオニジュウヤホシテントウ
8月の散歩では、ヤブガラシが本領を発揮しあちこちの藪で伸び放題になり花を咲かせているのが目立ちました。今回は、このヤブガラシの花に集まると言われている「クロバネツリアブ」の写真を撮ることができました。この虻の幼虫はハチ類に寄生するとのことです。右肩にダニのような赤いものが付いていますが、俊敏ではないのでダニに拡散用の動物としてうまく利用されているのかも知れません。クロバネツリアブの生態も面白そうです。
牛久沼のクロバネツリアブ
 また、7月には林の奥に飛んで行ってなかなか写真を撮らせてもらえなかったクロアゲハ(papilio protenor)の写真を、今回は撮ることができました。でも、羽がかなり傷んでいました。もうすぐ天寿を迎える個体なのでしょうか。わざわざ、直ぐ手の届くような小枝の葉に止まってしばらく動きませんでした。クロアゲハの幼虫の食草は柑橘類のようですが、成虫はクサギの花に集まるとのことです。近くにクサギがありたくさんの花が咲いていました。
クロアゲハ

アゲハ類が訪れるクサギの花
セミの鳴き声があちこちから聞こえました。アブラゼミの鳴き声が最も多いようですが、今回は羽化まもないようなミンミンゼミがカラスウリの葉に止まっている姿を撮ることができました。
ミンミンゼミ
8月はアオバハゴロモの成虫が特に目立ちましたので次回に書くことにします。


2019年8月22日木曜日

切手に採用されるなど人気のアカスジカメムシ

 お盆のお墓参りのため812日から18日まで岩手に行って来ました。畑の作業も少し行いました。

813日に畑に出かけましたが、その際、イタリアンパセリの花に赤い筋のあるカメムシがたくさんいました。初めての遭遇でしたので調べたところ、アカスジカメムシと呼ぶようです。アカスジカメムシは、セリ科の植物を食草にしているとのことです。
アカスジカメムシ(Graphosoma rubrolineatum)
イタリアンパセリとアカスジカメムシ
7月にはスカイブルーのカメムシに出会いましたので、このところカメムシとの相性がいいようです。珍しいキンカメムシとの遭遇も期待してしまいます。

イタリアンパセリには、たくさんのアカスジカメムシとともに赤い色をしたブチヒゲカメムシも一匹いました。プチヒゲカメムシはマメ科やキク科の他に大根や稲、さらにはニンジンも食草とする広食性のようなので、イタリアンパセリの樹液も吸っていたものと思われます。
イタリアンパセリにいたブチヒゲカメムシ

カスジカメムシは結構人気があるようで、ハンガリーとトルコの切手にその写真が採用されていました。

 そこで少し調べて見たところ、世界的にGraphosoma類は8グループに分類されていることが分かり1)、日本にはその内の1種のGraphosoma ruburolineatumのみが分布しているようです。
世界のアカスジカメムシ類8種(日本にはNo.4が分布)

No.1とNo.2およびNo.7とNo.8は同種の雄と雌
 日本での研究によるとアカスジカメムシは第5齢まで脱皮をするようで、その詳細が報告されていました2)。アカスジカメムシの欧州型(Graphosoma lineatum)の場合も第5齢まであり、越冬前は赤と黒の色が薄いままで過ごし、越冬後に赤と黒の色が際立つようになり繁殖活動をすることが分かっているようです3)。カメムシに関する研究は良く行われているようなので、後でさらに調べて見たいと思いました。
日本のアカスジカメムシ(G. rubrolineatum)の成長過程
ヨーロッパに分布するアカスジカメムシ(G. lineatum)のライフサイクル
    今回はお盆ということで畑仕事は少しおざなりになってしまいましたが、それでもジャガイモは全部収穫しました。ホッカイコガネを始めて植えて見ましたが、現状の硬い赤土の畑では男爵やキタアカリよりも収量が多かったです。でも、かなり硬い土でしたので中には芋がショウがのように多方向に成長したものもありました。メークインのように煮崩れしにくく加工に向いた品種だということですので、今後食べ比べをしてみたいと思っています。
収穫したホッカイコガネ
豆類は、どれもほぼ順調に生育していましたが、虎豆に比べて紅花豆と白花豆の結実状況が悪いようです。花はたくさん咲くのですが実が出来にくいのが欠点です。
虎豆の生育状況
紅花豆の生育状況

白花豆の生育状況
 大豆類は病気や虫による被害はまだほとんど見られず、順調に生育しているようですが、残念ながら枝豆として食べられるほどの熟度になっていませんでした。次回の訪問の際には、食べることができるかも知れません。

参考)
1)Attilio Carapezza & Zdene K. Jindra : Naturalista sicil., S. Ⅵ、XXXⅡ、(3-4)471-478(2008)
2)小林 尚:応動昆誌、9(1), 34-41(1965)
3)Aleksandra I. Johansen et al. : Ecological Entomology, 35, 602-610(2010)


2019年8月10日土曜日

天台寺の丈六像を見に行きました

 7月27日に瀬戸内寂聴さんが住職をされたことで有名な岩手県二戸市浄法寺町の天台寺にいってきました。天台寺は聖武天皇の命をうけた行基が1291年前(奈良時代728年)に開山したお寺として知られています。

本堂は改修中で本年度(令和元年)完成予定のため、本堂に置かれていた2mを超える大きな木造の丈六像(薬師如来坐像)は別棟に展示されていました。撮影禁止でしたので写真は撮れませんでしたが、北国の母を思わせるぼくとつとした柔和な大きい顔の座像に心が魅かれ癒されました。

この座像は一時期不運な境遇に置かれたため、右側の頬に朽ち跡が出来るなど痛々しい姿なのですが辛抱強い大きな包容力が伝わってきました。このままの姿で今後何百年も人々を癒し続けて欲しいと思いました。

本堂の周囲にはたくさんのお堂がありますが、今回は毘沙門堂とその脇の鳥居をくぐって坂道を登り月山社までお参りに行って来ました。毘沙門堂の扉が開いていたので、中を覗いてみたところ毘沙門天と目が合い、その白い目に引き込まれました。
天台寺の毘沙門堂と毘沙門天
天台寺の境内で最も高い位置にある月山社
寂聴さんは天台寺の山道や境内に紫陽花を植えられたとのことで、その紫陽花が満開になっていました。この紫陽花を目当てに来られる方もおられるようです。
天台寺境内の紫陽花

紫陽花の花には様々なハナバチが止まって蜜を吸っていました。中でも、オオマルハナバチはクマバチと勘違いする程大きくて貫禄がありました。
トラマルハナバチとクロマルハナバチ

オオマルハナバチ
 改修中ということで参拝客は数人でしたが、丈六像(薬師如来坐像)に会えてよかったです。


2019年8月7日水曜日

7月の豆栽培の状況 ー毒虫マメハンミョウに遭遇ー


7月22日から一週間、岩手の畑に行ってきました。7月は雑草の成長が早いので2回目の作業になります。

大豆類は、発芽当初に葉虫による食害が多かったので、成長とともにさらに被害が激しくなるかも知れないと思っていましたが、意外にも順調に成長し、黒大豆、黄大豆、茶豆、鞍掛豆ともそれぞれ花が咲き始めていました。今後は鳥による食害も予想されますが、とりあえず今回はその件については何もせずに帰ってきました。8月に対策します。
大豆類の生育状況
紅花豆や白花豆、虎豆などの蔓性の豆については、前回、花が咲いているものの結実率が悪いのではないかと心配しましたが、今回はハナバチ類も飛んできているようで、それぞれ莢が出来始めていました。このまま順調に育って欲しいと思っています。
白花豆の結実状況

紅花豆と虎豆の生育状況
実は前回、少し遅かったのも知れませんが小豆の種を蒔きました。それから一週間後の訪問でしたが、きれいに発芽していました。今後は、ほったらかしになりますが順調な成長を期待しているところです。

ジャガイモは栽培が簡単なので今年も植えています。男爵とキタアカリ、ホッカイコガネ等を植えました。ホッカイコガネは花が多く咲きジャガイモの果実がたくさんついていました。良くみると小さな青いトマトのようです。でも赤く熟することはないようです。育種をされる方々は、この果実の種子を播いて良い品種を見つけ出すのでしょう。
ジャガイモの実と種子(ホッカイコガネ)
前回の訪問時にはジャガイモ畑にオオニジュウヤホシテントウはそれなりに見つかったものの、被害はありま目立ちませんでした。でも、今回はかなり食害が激しくなっていたので、オオニジュウヤホシテントウがそこらじゅうにいるだろうと予想しましたが、あまり見つかりませんでした。代わりに、見たことのない虫がジャガイモ畑の所々にまとまって群れていました。中にはジャガイモの葉を噛んでいる虫もいました。後で調べたところ、マメハンミョウの黒化形であることが分かりました。マメハンミョウの成虫は肉食でもあるので、オオニジュウヤホシテントウの卵と幼虫を食べたのではないかと予想しています。
マメハンミョウ
マメハンミョウはカンタリジンと呼ばれる猛毒を持っていて、体液に触れるだけで皮膚に水膨れができるとのことです。実は、ジャガイモ畑の2か所に5-6匹のマメハンミョウが群れていたので、2~3匹ほどを手でつぶしました。残りはサッと逃げてしまいましたが、手袋には毒物質が着いていたことになります。その後、この毒による被害は受けていませんが、手でつぶすのはかなり危険な行為でした。
マメハンミョウの毒物質のカンタリジン
日本では、古来より「ハンミョウ」に毒があると言われていましたが、ハンミョウはオサムシ科に属し毒はなく、実はツチハンミョウ科(ゴミムシダマシ上科)に属するマメハンミョウやツチハンミョウに毒があるとのことです。忍者が暗殺に使ったなど、小さい頃に恐いと思っていたハンミョウには実は毒がなかったようです。「ハンミョウには毒がある」と多くの日本人が思っている(私もそう思っていました)のは、「本草綱目」を訳したときの間違いによるものだというから驚きました。

 マメハンミョウに遭遇できて良かったです。でも、今回のマメハンミョウはマメに誘引されて飛んできたものの、オオニジュウヤホシテントウの卵や幼虫など餌の多い隣のジャガイモ畑に魅力を感じ移動したものとと思われます。でも、今後はやはり豆の被害が心配になります。マメハンミョウの幼虫はイナゴを食べて成長するとのことですが、田んぼのイナゴはめっきり少なくなっているので、もう来ないことを期待しています。