冬の散歩では草花や昆虫に出会うことが少なくなるので、昨年から普段はあまり注目することのない地衣類にも目を向けることにしています。岩にべったりと付着して成長する地衣類の生命力にはいつも感心させられます。すごいです。
岩に張り付いて成長する地衣類
子嚢菌とシアノバクテリアの共生体
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地衣類は菌類(主に子嚢菌)とシアノバクテリアなど光合成ができる緑藻類との共生体ですが、シアノバクテリアは大気の二酸化炭素を有機物に変換し地球に酸素を供給した生命体として、特に地球温暖化が叫ばれる昨今は注目されるようになりました。
シアノバクテリアは二酸化炭素を有機物に変換すると同時に炭酸カルシウムとしても固定する能力も持っているとのことなのでさらに期待が高まっています。
シアノバクテリアによる有機物合成と炭酸カルシウムの形成 |
炭酸カルシウムはセメントでもあることから、シアノバクテリアは長い年月を経て自ら分泌した粘液で砂などを囲い込みストロマトライトと呼ばれる岩石を形成できるとのことです1)。シアノバクテリアによって形成されたストロマトライトは、成長増殖できる「生きている岩」とも呼ばれ、その成長速度は年に0.3mm程度と言われています。
生きている岩(ストロマトライト)とその岩石 |
このシアノバクテリアの能力を生かした「生きているコンクリート」、「増殖するコンクリート」の開発が最近話題になっています。米国の研究者が成長の早いシアノバクテリア(synechococcus strain PCC 7002)を培養しそれに砂を混ぜて光合成を行わせ、生じた炭酸カルシウムをセメント代わりにして成形し、レンガ状のコンクリートを造ることに成功したようです2)。
砂と培地およびシアノバクテリア混合物から形成された「生きているコンクリート」 |
このコンクリートは自己増殖できるとのことですので、人間が開発した成長の早いストロマトライトということが出来るのかも知れません。今後さらに研究が発展することによって、建築資材等としての利用が可能になる見込みのようです。
ここで使用しているsynechococcus
strain PCC 7002は、増殖が速いので遺伝子組み換えによるイソプレンやテルペノイド等の「有機合成のスターター」の生産を目指した研究もおこなわれているようです3)。
光合成のできる微生物は、光エネルギーを蓄積できる存在でもある訳なので、今後の利活用に期待が膨らみます。
参考)
1)山本 純之、磯崎 行雄:ストロマトライト研究の歴史と今後の展望、地学雑誌、122(5)、791-806(2013)
2)Chelsea M. et al.: Biomineralization and Successive Regeneration of
Engineered Living Building Materials., Matter 2, 1-14(2020)
3)Fiona K. Davies et al.: Engineering limonene and bisabolene
production in wild type and glycogen-deficient mutant Synechococcus sp. PCC
7002., Bioengineering and Biotechnology, 2, 1-11(2014)
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