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2020年7月31日金曜日

新型コロナウイルスのワクチン開発への取り組み

一昨日7月29日の全国の新型コロナウイルス感染者数は1,259人で、ついに1,000人を超えました。3か月半感染者が0だった岩手県でも2名の感染者が出たようです。730日の感染者はさらに増え1,301人、今日31日は1,500人以上になってしまいました。WHOSituation ReportWorldometers.infoの情報を見る際には、感染者が1,000人以上増加している国名が目に止まり、きっと大変だろうなと思っていました。

 今後の日本の新型コロナ感染症はどのような経過をたどるのかが心配です。医薬品やワクチンの開発が頼りなのですが、様々な情報が入り乱れ不安になります。

頼りのワクチン開発も行われているようですが、参考のため新型コロナウイルスに対するワクチンについて調べてみました1,2)。従来の生ワクチンや不活化ワクチンから新たなRNAワクチンやDNAワクチンなどの開発が集中的におこなわれているようです。


伝染病の中で感染力が強いことで有名な疾病は麻疹(はしか)のようですが、麻疹に罹患し回復すると二度と感染せず、ワクチンも生涯有効とのことです。これは麻疹の抗原になるエピトープ部位が変異するとヒトに感染できなくなり、結果として感染性の麻疹のエピトープは変わらないからなそうです。

麻疹は新型コロナウイルスと同様にエンベロープを持つ一本鎖RNAウイルスのようですが、新型コロナウイルスとは異なり、RNAがプラス型ではなくてマイナス型のようです。

 麻疹はヒトのリンパ組織やマクロファージなどに発現しているSignaling lymphocyte activation molecule(SLAM)を受容体として利用し細胞に侵入することが、九州大学の柳先生らによって明らかにされているとのことで、詳しい感染機構が紹介されていました3)

 さらに歴史を振り返ると、ウイルスが細胞に侵入する際の膜融合機構は仙台ウイルスを発見した東北大学石田先生や大阪大学の岡田先生によって解明されています。ウイルスの侵入には宿主側のプロテアーゼが関与しているという画期的な発見です。

 利根川先生のノーベル賞は日本人なら誰でも知っている訳ですが、アレルギーに関与するIgE(レアギン)は米国の免疫学会長を経て、奥様の郷里の山形県で教育委員長をされた石坂先生が証明され、それには「免疫の意味論」で有名な富田先生が弟子として背中の皮膚での試験を共にされた仲であることも有名です。感動しました。

 さらに、最近では免疫寛容や自己免疫疾患に関わる制御性T細胞(Treg)は京都大学の坂口先生が、サイトカインストームの鍵と言われているIL-6は大阪大学の岸本先生と平野先生によってそれぞれ発見されています。

 これらノーベル賞級の業績はすべて医学の発展に寄与しているので、今回のワクチンも逸早く日本でも開発して欲しいと願っています。

 でもこの新型コロナ問題の発生によって初めて知りましたが、裁判など様々な経緯があり、日本はつい最近まで、ワクチン実施率の低い国という位置付けになっていたようです。

 リスクを日本語に訳すことは難しいと言われています。善悪、白黒を付けて安心したいと私も思ってしまいます。でも100%安全な医薬品の開発はできないように思います。

 食品の安全性もそうですが、科学技術の導入や開発さらには行政においてもリスク管理を念頭に置くことが重要だと感じるようになりました。リスクを恐れてとどまるのではなく、その時代に相応しい最善の対応策を考えて先頭を歩む各分野のリーダーがこの機会にたくさん生まれるよう、アフターコロナに期待しています。

参考)

1) Tung Thanh Le, et al.: The COVID-19 vaccine development landscape. Nature Reviews Drug Discovery 19, 305-306(2020)

2) WHO: Draft landscape of COVID-19 candidate vaccines.31 July 2020

3) 田原 舞乃ら:麻疹ウイルス. ウイルス,67(1),3-162017


2020年7月17日金曜日

新型コロナウイルス以前の保存血液の抗体検査はワクチン開発のヒントになる?

717日の新型コロナウイルス感染者は622人と急増し、過去3番目の数字になったそうです。マスクや手の消毒など、4月に比べたら防御対策がしっかり講じられ、人々の心構えも格段に向上しているはずですが、まだ改善点があるということでしょうか。WHOも認めつつある空気感染対策でしょうか。
 新型コロナウイルスの抗体が数週間、数か月で減少するとの報告が中国、スペイン、イギリスから順次報告されたようですので、再感染の可能性も高いことから、医薬品やワクチンの実用化のさらなる加速が求められています。
 免疫について良く分からないので、現状の感染性疾患に対するワクチン抗体の安定性について調べてみました。
 医学では常識なのかも知れませんが、破傷風やジフテリアなどの病原性細菌に対する抗体の半減期は男性の方が女性より長く、それぞれ12年、26年だとする報告1)が見つかりました。また、ウイルス性の感染症である風疹やおたふく風邪、麻疹(はしか)の抗体の半減期は逆に女性の方が長く、男女ともほぼ寿命が尽きるまで有効性が継続されるようです。 

 天然痘撲滅の話題は知っていましたが、その天然痘ワクチンとして近縁種で軽症の感染症を引き起こすワクシニアウイルスが生ワクチンとして使用されていたことを初めて知りました。天然痘とワクシニアの抗体には交差性があるということのようです。
 もし、新型コロナウイルスにも同様な交差性抗体を生じさせる軽症あるいは無症状のウイルスが見つかればいいなと思ってしまいます。
そこで、近縁種のコロナ風邪に関する文献を探したところ、健常人の1985年から2020年までの保存血清について、コロナ風邪のOC43NL63229EHKU1に対する抗体の増減とそれらに共通する保存性エピトープの検討、さらに新型コロナウイルスのNタンパク質に対する抗体を調査した文献2)が見つかりました。まだアクセプトされていないmedRxivでの公開論文です。

それによると、それぞれのコロナ風邪の流行に伴い対応する抗体が増減していますが、新型コロナウイルスのN(ヌクレオカプシド)タンパク質抗体を、1985年に採取した血清、1992年に採取した血清、2006年に採取した血清の3件が保持していた可能性が高いとのことです。
 新型コロナ以前に採取した血清に新型コロナのN抗原に対する抗体の存在が予測され、それが中和抗体であれば、その抗体の原因になった抗原は天然痘に対するワクシニアの生ワクチン抗原のような「新型コロナウイルスのワクチン候補」になるのではないかと素人ながら思いました。
 フランスやイタリアでも昨年12月以前に採取した血液の新型コロナ抗体検査を行ったとの報道がありましたので、既に多くの国でそのような研究を行ったのかも知れません。
 日本などアジア諸国の新型コロナ感染者と死者が少ないと言われていますが、同じRNAウイルスのインフルエンザによる死者数を国別に見てみると、日本はイギリスやドイツよりも多いようです3)

 マスクや非接触での挨拶などの日本らしい生活習慣が感染症全般の予防に役立つのであれば、インフルエンザについても欧米諸国より日本の死亡率が低くなるように思ってしまいますが、そうでもないようです。「ファクターX」は何なのでしょうか。新型コロナ感染者や死者は確かに少ないので、その発見には欧米より日本に利があるように思われます。
 伝染性のDNAウイルスとともに変異が速いとされるRNAウイルスに対しても既に有効なワクチンは開発されているので、様々な視点からの研究が行われ、新型コロナウイルスに対する有効なワクチンが開発されることを願っています。

参考)
1)I.J.Amenna et al., : Duration of Humoral Immunity of Common Viral and Vaccine Antigens.,  N. Engl. J. Med., 357(19), 1903-1915(2007)
2)Arthur W.D. Edridge et al.: Coronavirus protective immunity is short-lasting. medRxiv,  https://doi.org/10.1101/2020.05.11.20086439
3)OECD.Stat, Health status, Causes of mortality


2020年7月8日水曜日

新型コロナウイルスやインフルエンザの無症状感染者対策

   新型コロナウイルスがサーズのように短期間の間に終息することを期待していますが、どうもそれは困難なようです。その要因の一つが、新型コロナウイルスの感染者に無症状者(不顕性感染者:無症候性キャリア)が多いことです。症状がないまま他人に感染させるのであれば防ぎようがないということになります。
 実際は、無症状者も陽性者なので徹底的に検査をして隔離することは可能だと思いますが、強制措置を伴うので現状ではそれを完全に行うことは困難な国が多いということになります。米国では、既に人口の11.5%に相当する3千8百万件のPCR検査を実施していますが、まだ感染が拡大しています。ロシアでは人口の14.8%、イギリスでは15.7%に相当するPCR検査を既に実施しています。
 そこで、問題の無症状者について文献を調べてみたところ、実はインフルエンザでもその型によって異なるようですが16%程度の無症状感染者がいるようです1)SARSでは該当する文献が見当たりませんでしたが、MERSでも無症状者はいるようです。でも、やはりなんといっても新型コロナの無症状者は断トツで40-45%程度だろうと予測されています2)
人類は長い間インフルエンザに悩まされてきたにも関わらず、無症状者に関するデータは新型コロナウイルスに比べても少ない程度のようで、バラツキも多くまだまだ研究の余地があるようです。たぶん、ウイルスの検出方法が技術的にも制度的にも煩雑だったことも一つの要因だったのかも知れません。
 新型コロナウイルスについては、既に唾液でのPCR検査が可能になりました3)が、さらに簡便化されて、遺伝子や抗原は少量のうがい液でも今後検出可能になるものと予想されます。
もっとも肝心な病気の判定は医師が当然行うわけですが、病原体や抗体の検査キットは体温計と同様に一般の保健用の器具・用具として出回るレベルまで発展・一般化することが期待されます。事実を知ることで責任ある行動が自覚されることになると思います。
定期健康診断で、インフルエンザなどの流行性疾患関連の抗原・抗体検査ができるようになれば、さらに安心できる社会になると思っています。
新型コロナウイルスの抗体は数か月で減少する4)との論文が出たようですが、将来に向け、特にウイルスに関する抗体やワクチンに関する研究がさらに活発に行われ、今回を契機に人類とウイルスの好ましい共存社会が構築されればいいなと思っています。

参考)
1)Gerardo Cowell et al.: Transmission characteristics of MERS and SARS in the healthcare setting : a comparative study., MRB Medicine, 210(13), 1-12(2020)
2)Daniel P. Oran et al.: Prevalence of Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection., Annals of Internal Medicine 3, June 2020.
3)Yoshimasa Takeuchi et al.: Saliva-based PCR test for SARS-CoV-2 detection., J. Oral. Sci., 2(3), 350-351(2020)
4)Quan-Xin Long et al.: Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infection., Nature medicine, Published online: 18 June 2020

2020年7月1日水曜日

新型コロナウイルスによる死者数の人種による差異

昨日(630日)の国内での新型コロナウイルス感染者が138人になったとのことで、自粛緩和が進むとやはり感染者が増加するようです。経済活動の自粛が世界的に困難な状況になりつつあることから、日本でも医療崩壊にならない程度の感染にとどめる努力をしながら「ウイルスとの共存戦略」を考えなければならない事態になりつつあると感じています。

日本や韓国、タイなどアジア諸国の新型コロナウイルスに対する感染者数や死亡者数は欧米に比べ明らかに少ないことから、それがアジア系民族の遺伝的な特性によるものかどうかに関心が寄せられています。そこで、最も感染者が多くかつ多様な人種構成からなる米国のデータ1)を検索・解析したところ、感染に伴う死亡者数の比率はアジア系やヒスパニック系の住民は白人とほぼ同程度でした。黒人の死亡者が明らかに多いので遺伝的要因を捨てきれないのですが、欧米に比べアジア諸国での死亡者が少ない根拠として遺伝的要因を取り上げるのは難しいように思われます。

   やはりそれぞれの地域住民の生活習慣や意識の持ち方が感染率等に大きく影響しているのでしょう。今後、食事についても注目したいと思っています。

10万人を超える死者数が出ている米国のデータによると、0歳から中学生くらいまでの死亡者はわずか26人で全体の0.025%のようです。一方、65歳以上の高齢者は死亡者全体の80.7%を占めており、どの病気もそうですが、加齢に伴い自然免疫系が低下した高齢者は特に感染に注意しつつ健康的な生活を送るよう心がける必要があるようです。


今日、たまたま「AI崩壊」をビデオで見ました。偶然です。「AIは人間を選別するようになるのだろうか」がテーマでした。医療崩壊による治療の優先順位の決定が頭をよぎりました。崩壊しないように協力する揺れない心が大切です。

パンデミックを収束させるため、ワクチンや医薬品等の開発に向けた新型コロナウイルスのヒト細胞への侵入機構に関する研究が活発に行われています。米国科学アカデミー紀要(PNAS)が526日に公表した論文2)では、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質表面に存在するACE2結合サイトの活性化に、タンパク質分解酵素のフーリンが関与することを見出したとしています。


新型コロナいうルスが宿主細胞に侵入するための疎水性鎖を露出させる作用を持つTMPRSS2とともにもう一つのプロテアーゼが重要な役割を果たしているようなので、これらプロテアーゼの阻害物質3)などに対する興味が湧いてきます。

参考)

1)米国CDC : Provisional Death Counts for Coronavirus Disease (COVID-19): Weekly State-Specific Data Updates.

2)Jian Shang et al.: Cell entry mechanisms of SARS-CoV-2, PNAS, 117(21), 11727-11734 (2020)

3)B. Robson: COVID-19 Coronavirus spike protein analysis for synthetic vaccines, a peptidomimetic antagonist, and therapeutic drugs, and analysis of a proposed achilles’ heel conserved region to minimize probability of escape mutations and drug resistance. Computers in Biology and Medicine 121(2020) 103749

2020年6月20日土曜日

新型コロナウイルスに対する抗体産生の状況


日本でも新型コロナの抗体検査が行われるようになりました。6月16日の厚生労働省の発表によると東京都(被験者:1971人)と大阪府(2970人)、宮城県(3009人)での検査結果は、東京都は0.1%、大阪府が0.17%、宮城県が0.03%になったとのことです。本日、620日の岩手県の発表によると、医療関係者を含む1000人の検査を行ったところ、陽性は0人とのことでした。

各都府県が公表している数値と照らし合わせると、東京都は2倍以上、大阪府と宮城県は10倍前後感染経験者が存在するということになります。

「日本での感染者は本当に少ない」ということが良く分かりました。「検査数が少ないから少なく見えるだけ」ということではないようです。

欧米に比べで何故少ないのかの理由がまだ分からないので、感染者が少ないと二次感染が心配だとする意見も多くみられます。「日本では、3蜜をしっかり守っている」ことが、やはり主要な要因なのでしょう。

 でもやはり、一度感染したら感染しにくくなるのかなどヒトと新型コロナウイルスの戦いの仕組みが分からないと心配です。

Trend in immunologyにコロナウイルスのヒト細胞への侵入と増幅機構に関する図が掲載されていましたので自分のためにできるだけ日本語にしてみました。感染から複製まで全くDNAが関与していないことに驚かされました。セントラルドグマに従っていませんでした。
コロナウイルスの感染と増殖スキーム
新型コロナウイルスの感染に伴い、RNAの情報を基にして数種の主要なタンパク質が感染細胞内で合成されますが、それらはヒトにとっての異種タンパク質であるため抗原になると思われます。しかも一つのタンパク質が複数の抗体認識部位(エピトープ)を持つそうなので、ウイルス感染に伴いヒトが生産するIgG抗体の種類はかなりの数に上るものと予想されます。こうした抗体混合物はポリクローナル抗体と呼ばれるようです。

このポリクローナル抗体の中に、新型コロナウイルスの感染や病原性を阻害できる中和抗体存在するとのことなので、それらに関する最近の研究を調べたところ、スパイクタンパク質のヒト細胞ACE2結合部位に存在する3種の抗原認識部位(エピトープ)A,B,Cの内のAが最も優れた中和活性を示したとする報告がScience誌の6月版(最新)に報告されていました。
新型コロナウイルスの疾病予防作用を持つ抗体の探索


ワクチン開発は、国家間あるいは企業間の競争になっている様子なので公表されていない成果がたくさんある可能性もあり、WHOへの期待が高まります。

 PubMedSars-CoV2Antibodyを検索したところ643件がフィットしました。SarsCov2AntibodyJapanを検索すると11件になります。日本も頑張っていますが、さらに研究が進むような環境の改善を願っています。

参考)
1)Shibo Jiang et al.:Neutralizing Antibodies against SARS-CおV-2 and Other Human Coronavirused, Trend Immunology 41(5), 355-359(2020)
2)Thomas F. Rogers et al.: Isolation of potent SARS-CoV-2 neutralizing antibodyies and protection from disease in a small animal model. Science 15 June (2020)

2020年5月25日月曜日

緊急事態宣言が解除されたのでささやかな手抜き菜園に行きます


本日5月25日に日本全体の緊急事態宣言の解除を政府が決定しました。解除の条件は、「10万人当たりの一週間の感染者が0.5人以下」とのことです。残念ながら、北海道と神奈川はこの条件を満たしていないようですが、全国一律解除に踏み切ったようです。

 近隣のアジア諸国の状況をWorldometerが提供しているデータで確認したところ、逸早く収束に向かったのは韓国で、次いで台湾、タイと続き、日本もほぼ終息に近い状況になっています。一方、フィリピンやインドネシアはまだ感染が継続しています。

 521日現在、日本の致死率(死亡者数/感染者数)は4.7%ですが、タイは1.8%、台湾は1.6%で韓国の2.4%より低い数値になっています。検査数の違いもありますので、単純に比較しても意味がないのかも知れませんが、爆発的な感染が生じた欧米に比べ、極めて低い値になっていることが不思議です。オーストラリアとニュージーランドの感染もほぼ終息を迎えており、致死率はそれぞれ1.4%1.8%と低いので、人種によって感染しやすさや致死率に差異があるようには見えません。

門外漢ですが、なぜこのように感染状況が各国で異なるのか興味がありますので、これからも感染データに注目したいと思っています。

全国の緊急事態宣言は解除されましたが、観光などのために他県へ移動することについては自粛するようにとのことのようです。私の「ささやかな手抜き菜園」は岩手県にあることから、農作業をするためには茨城県から福島県、宮城県を通過して岩手県に移動しなければなりません。3月末以来岩手には出かけておりませんでしたが、そろそろ農産物の種まきや草刈り等がタイムリミットに近づいているので、明日から岩手に出かけようと思っています。草ぼうぼうなんだろうか。心配です。

2020年5月4日月曜日

新型コロナウイルス収束に向けた実数把握と助け合い


緊急事態宣言が5月31日まで延長されました。外出自粛が続きます。アジアや欧米での感染は収束に向かうような気配になっており、二巡目の感染がいつ来るのかが話題になり始めています。

でも、それまでに有効性の高い医薬品やワクチンが提供できるのかどうかは不明のままです。サーズ(SARS)やマーズ(MERS)のワクチンができなかったのは、世界的な水際対策が奏功したことによって、感染を逸早く抑制できたからかのように思われていますが、その影で、もしかしたらワクチン開発が難しかったことも一つの原因だったら、大変です。

ユーチューブで Martin HurkensYou rise me up (https://www.youtube.com/watch?v=4RojlDwD07I) を聞いたら、少し涙がでました。年のせい?   イタリアのトリノオリンピックでの荒川静香選手のイナバウワーが目に浮かびました (https://www.youtube.com/watch?v=y_74NLQG9tw) 。早く収束して欲しいです。
You rise me up
世界が困っている時には、企業を含めてほとんどの人は「助けたい、力になりたい」と思っているように感じます。

南アフリカでは抗争するギャングが、この緊急事態を目にして、休戦し困窮者に食事の配達をする役割を担っているそうです。皆人間なのです。いつか死にます。

ワクチン開発を頼りにして、自粛しながら待つことが正しいのかどうかは誰も分かりません。ヘルペスウイルスやHIVのワクチンは長い年月を経てもまだ開発されていません。

ウイルスや病原体の核酸検出(PCR検査)や抗原検査、抗体検査技術の開発は日進月歩で、必要性がありかつ予算が投入されれば急速に進歩するように思います。既にベンチャー企業もクラウドファンディングを活用し活動を始めており心強いと思っています。

一方、フォトン数個を検出する技術を持つ浜フォトや高分子検出で世界をリードする島津製作所等などのような優れた企業の多い日本が、例えば東大や京大等の大学さらに国立研究機関等の英知を集めて抗原や抗体の高感度検出技術開発に一丸となって取り組めば、たぶん早々に現在のPCR検査の困難さを克服した、血液や唾液での新型コロナウイルスの検出技術を開発できたのではないかと素人ながら思います。
現在の技術を駆使した最高水準のキットの作製に取り組み早急に提供し、理想形への改善については予想より期間が長くなっても決して悔いはないと思いますし、ベンチャー事業を評価し応援することになってもいいと思います。思いが一つであれば皆集まると信じます。

この災難に向かい助け合い、今をしっかり生き、将来の災いを消す思いが大事です。

感染者の実数とその分布、そして動態を無理なく簡易に把握することができれば、経済活動の自粛・再開を迷うことなく決定できるはずです。事情主も一緒です。感染させない、感染の場にならないとの重圧に耐えて営業するためには、事実を知る必要があります。
実数が把握できず、予測だけで決定することには誰でも不安があり、失敗を恐れるあまり厳しい措置を継続することになります。市民は事実を知らない方が良いとする方法は、とりあえず最悪の災難を防ぐ方法であって、前例として定着させてはならないと思います。

日本は世界で最も長寿の国を実現し、疾病の治療から予防に向けた医療体制にシフトした結果、他国に比べ医師が少なく薬剤師の増加が顕著になっていますが、この新型コロナウイルスの経験を経て、医師を増加させることによって医療体制にゆとりが生まれるようになることを願っています。
医学部学生数の国際比較
薬剤師数の国際比較
ジョンホプキンス大学のデータによると、国民当たりのPCR検査数が最も多く、既に感染が抑制されているアイスランドでの新型コロナウイルス感染による死亡率は0.6%のようです。若い方のPCR検査率は低いものと予想されることから、実際の死亡率はもっと低いので、今回の新型コロナウイルスについては、病院と高齢者施設さらに就業率の低い高齢者に対する感染を従来以上に厳しく制御する体制を敷くことで、あまり経済活動に影響を与えることなく凌ぐことができるように思われます。

スウェーデンやブラジルでは、たぶん内情は異なるものと思われますが、経済活動の制限を他国より緩くし、当面の労働者の生活を守る方向を重視した新型コロナウイルス対策を行っています。今後数年間継続するものと予想される新型コロナウイルス感染に伴う被害の実数が、それぞれの国の政策の適否を歴史的に決めることになるものと思います。

 今回は、医療関係者に負担をかけない簡易な迅速検査技術の開発が、最も緊急でかつ可能性の高い重点施策だったように思っています。検査の継続よって、抗体の形成率やその安定性・持続性等の特性把握もできるように思います。
 若くして財をなした方々のリーダーシップ期待されています。二巡目に間に合うといいのですが。

2020年4月19日日曜日

新型コロナ医療従事者への感謝と協力


新型コロナウイルス感染者の増加によって、医療関係者が家族への感染を気にかけ、窓ガラス越しに子供や家族にハイタッチして職場に出勤しているとの情報が伝わってきて、感謝の気持ちでいっぱいになりました。ありがたいです。

日本では、かなりの人々がマスクを何回も洗濯し(沸騰水やハイターの希釈液等で消毒するなど)、使っていると思います。最近のマスクは選択してアイロンを当てれば、新品によみがえります。実は、賢い消費者が多いように思いますし、皆協力したいと思っています。

でも、最も不安なのは新型コロナウイルスに関する情報で、どれが正しいのかです。マスクの配布はありがたいのですが、その予算の十分の一でもいいので、正しい情報を得るための、新型コロナウイルスの調査研究費にして頂ければ、得られた情報の信頼性が増すのではないかと思っています。でも、たぶんその分野では十分の一でも莫大な予算になるので担当者は大変なのかも知れません。しかし、大変でも将来に備えることになるはずだと想像しています。研究分野も人手がないだろうとは思いますが。

 これまでに、病原性のコロナウイルスとしてのサーズやマーズの教訓はありましたが、今回の新型コロナウイルスの性質を暴くまでの解明が不運にも行われていなかったように思います。サーズは発生から終焉までの期間が短く、マーズではその発見者であるエジプトのZaki博士が母国と解析を依頼したオランダとの狭間で冷遇されているなどの情報もあるように、人類の共通の敵に向かう姿勢ができていなかったように見えます。

 最も重要なことは、発生源における発生過程の解明からその伝搬様式や感染者の実数の把握など正しい情報を専門家が入手解析することです。でも多くの場合、正しい行動ではあるのですが、患者を助けることに全力を注ぐため、次にバトンタッチできる情報を入手しきれないという現状にあることは想像できます。

 今回の新型コロナウイルスについては、今のところ中国からの論文が大半を占めていますが、学術論文の多くは学術誌出版社の配慮からほとんどが公開され、私のような門外漢も全文を閲覧でき、さらにCOVID-19サイトが設けられるなど積極的な情報公開が行われ感激しています。科学的に戦うための体制は、たぶん相談なしに作ることができたのだと思います。

 次にやるべきことは、次(将来)のための作戦に必要な客観的なデータをとることのように思います。アイスランドは人口当たり最もPCR検査数が多い国のようです。また、サンマリノは日本を凌ぐ長寿国で、感染が蔓延したイタリアの真ん中にある国でどちらも人口当たりの感染率はかなり高い水準にあります。


 すでにデータはある訳なので、是非両国のデータを早急にまとめて世界に供給できれば、中国のデータを超えてかなり信ぴょう性の高い情報を世界の人々が得られることになるように感じます。①無作為に調査したと仮定した場合の年齢階層別感染率と死亡率の推計、②他者への感染力の経時的な把握、③家族間の感染率と感染しない人の割合などは、少なくとも算出可能かも知れません。

 コホート研究は是非必要だと思います。感染拡大は始まってしまいましましたが、RT-PCR検査は検体採取者へのクシャミ・シャワーなど負担が大きすぎるのであれば、抗体検査をコホート内で継続的に実施するなど、確かなデータを積み重ねることが次につながると思います。感染しても抗体ができるかどうかわからないとの議論もありますが、実施したデータを解析することで次の手が見えてくるとはずです。陽性者が少なくても無駄になることはないと思いますし、有効なワクチンの開発に資するものと期待されます。
 




 

2020年4月14日火曜日

新型コロナを予防するコロナ風邪(OC43やNL63など)の交差性抗体はあるのだろうか?


日本の新型コロナの感染者が急増したことで、首都圏での外出規制が始まり楽観ムードが一変しました。でも、得体の知れないこの新型コロナに立ち向かうための要になる、ワクチンや医薬品が出回るのはまだ先のようです。

良く理解している訳ではないのですが、各国の感染者数の増加状況を見ると、どの国も最初は指数関数的な増加を示しているようには見えません。特に日本では、豪華客船での感染事態を経て、しばらくの間感染者の増加は横ばいでした。感染防止に向けた皆の努力の賜物だとは思いますが、それ以外に何かが感染のスピードを抑制しているのではないかと感じます。

その「何か」の一つとして期待するのは、新型コロナの親戚ともいえる、毎年かかるコロナ風邪に対する抗体の新型コロナ抗体との交差性です。

追加記載)5月20日

 米国のラホヤアレルギー・免疫研究所の研究員が、新型コロナ発生前の保存血液にSARS-COV2反応性のCD4+T細胞が存在することを見出し、類似コロナウイルスへの感染による「交差性」の存在の可能性をCell誌に投稿しました。ACE2をレセプターとするHCoV-NL63への感染が有効だったのだろうか。詳細が知りたいです。

Journal Pre-proof
Alba Grifoni et al.: Cell,  Targets of Tcell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals. https://doi.org/1016/j.cell.2020.05015


人間が感染するコロナウイルスは7種類のようです。その内、新型コロナと同じβ-コロナウイルスに属するものは5種類で、α-型は2種類とのことです。一方、新型コロナと同様にACE2をレセプターとするコロナ風邪ウイルスはNL63のようです1)。どのウイルスが新型コロナに最も近いのだろうか。あるいは、抗体交差性を持つ可能性が高いのだろうか。


最近ネットで話題になっているBCG接種が感染防止に有効だったのではないかという件については、既にBCGがナチュラルキラー細胞を活性化することが理化学研究所によって解明されており2)、そのことが感染防止に関係しているのではないかと推測されます。BCGによって活性化されるのは細胞性免疫のTh1系のようです。細胞性免疫系はサイトカインストームとの関連性がありそうなので、その点も考慮する必要があるように思います。

追加記載
 世界的には、ポリオウイルス不活性化ワクチンのCOVID-19に対する有効性が取りざたされていることから、それに対するWHOの見解と方針が4月16日に公表されています。
http://polioeradication.org/wp-content/uploads/2020/03/Use-of-OPV-and-COVID-20200415.pdf
    (The use of oral polio vaccine (OPV) to prevent SARS-CoV2 )


  一方、液性免疫Th2系においても、抗体の交差性が確認されれば、軽症のコロナ風邪にしっかり感染することによって、COVID-19に対する予防あるいは症状の軽減が期待できます。

 関連した研究は始まっていますが3)、まだ明確ではなく、SARSへの感染者や、軽症コロナ風邪のOC43感染者、229E感染者を被験者とした研究では、SARS感染者において、OC43229Eに反応する抗体価が上昇していることが明らかになっています。
ヒト感性性コロナウイルスSARSやOC43、229Eの抗体交差性
 コロナ風邪に関する調査は、日本ではまだ感染者が出ていない岩手県における直近のデータは見つかりませんでしたが、山形県や三重県、福井県などで行われています。山形県の例を見ると、主にOC43NL63への感染が多いようです4)。米国と香港でも同様の調査がありますが、やはりOC43への感染例が多いようです。
山形県におけるコロナ風邪の事例
Yohei Matoba et al.:Jpn.J.Infect.Dis., 71, 167-169(2018)より
USAにおけるコロナ風邪の流行状況
Marie E. Killerby et al.: J. Clinic. Virol.101, 52-56(2018)より
香港におけるコロナ風邪の流行状況
Cyril C.Y. Yip et al.: Virologica Sinica 31(1), 41-48(2016)より

 免疫系の交差は、感染評価においては混乱の原因になりますが、予防の観点からはかなり重要な視点だと思います。この分野の発展を願っています。

軽い風邪、あるいはその他でもいいのですが、安全性の高い感染症にしっかりかかっていれば、COVID-19にかかりにくいということになるといいのですが。

参考)

1) Thanigaimalai Pillaiyar et al.: Recent discovery and development of inhibitors targeting coronaviruses, Drug Discovery Today, 2624, 21 (2019)
2)  理化学研究所:結核菌ワクチン「BCG」がアレルギーを抑制する機構の解明、20061218
3)Nisreen M.A. Okba et al.:SARS-CoV-2 specific antibody responses in COVID-19 patients., medRxiv. https://doi.org/10.1101/2020.03.18.20038059
4)Yohei Matoba et al.: Trends of Human Coronaviruses in Yamagata, Japan in 2015-2016 Focusing on the OC43 Outbreak of June 2016., Jpn. J. Infect. Dis., 71, 167-169(2018)

2020年4月6日月曜日

新型コロナウイルスの伝染を断ち切る


新型コロナウイルスの最初の感染者・伝染者は誰だったのでしょうか。同時多発的な場合もあるので探すのは難しいかもしれません。話題になったミトコンドリアの祖先「ミトコンドリアイブ」のように決定できるとは限りません。

 でも実は感染者全員が、感染した瞬間から新型コロナウイルス遺伝子の先祖(伝搬者)になります。感染者自身の細胞がコロナウイルスの+鎖RNAを基にしてDNA(遺伝子)二本鎖RNAを合成し、+鎖RNAが次々複製されコロナウイルスとなって次にうつされ、そしてうつされた人がまた伝搬者となってうつし感染が次々に広がります。
(DNAを経由せずにRNA二本鎖が形成されて、RNA鎖が複製されるそうです)

 新型コロナウイルスの伝搬力は一人から1.52人程度のようですが、仮に2人とすると自分を含めて、1人から3人、9人、27人と続きます。3の指数関数で伝搬します。10回これが繰り返されると1人から10世代ということになり5万9千人が感染者になります。恐ろしいです。
感染者がうつす人数の違いによる感染者総数の増加曲線の比較

 もし1日に2人にうつすとすると、自分から次々に感染者がつながり、10日後には約6万人、11日後には葯18万人です。12日後には53万人になり、19日後には日本の人口を超えて13千万人が感染する計算になります。

これは1日に2人にうつし、それが継続される環境にある場合という条件での計算なので、現実にはうつせる人が周りにいなくなるので、そのようにならないのですが、でも恐ろしいです。

 すこし行動を自粛して、仮に1日に0.5人にうつす程度になると、10日後に約87人にうつしてしまったという程度で収まります。1人ひとりの行動がいかに大事かが良く分かります。感染を止めるには、感染者からの伝搬を断ち切るしかありません。
 伝染を制御できなくなった時は、陽性者を見逃さず隔離し重大さを自覚させる方法が最も確実のように思われます。

 46日時点で閲覧できるデータ(WHO)を基に3n乗を縦軸にして、国民の感染率が高いアイスランドと、急激な感染途上にある米国を加えた図を作成して見たところ、米国(USA)の感染者の増加速度は31日から322日までは、一人の感染者が二日間で二人に感染させる勢いで感染が広まり、その後ゆるやかになっていることが推定できます。政策の効果が一週間後に出ると仮定すると、315日ごろに実施した政策の効果が出ているということになります。
国民の感染率の高いアイスランドと低い日本、そして米国との比較


 国民の感染者率の高いアルルランドは、感染者が急激に増加したことから感染検査を民間に委託し徹底的に感染者を把握・管理する方針に変更したので、国民の感染率は0.4%になったものの、ほぼ終息に近づいている状況に見えます。

 一方日本は、感染率が低く推移しているものの、最近になり増加傾向が著しくなっているので、Our World in Dataの死亡者総数に関する図を閲覧したところ、やはり安定的に推移していた死亡者の数が増加する気配が見えます。
 
COVID-19による死亡者総数の推移(4月5日)


   明日(4月7日)には、政府が非常事態宣言を出すとの報道があります。

  日本は、感染クラスターの把握と徹底管理に特化した取り組みを行い、世界的に見ても最も効率的な感染者の検査体制を1月から4月まで継続してきました。諸外国と異なる独自の感染対策で、その成功を期待していましたが、感染元が追えない例が増え始めています。

感染源が不明で管理ができなくなった場合は、徹底的に検査をして陽性者を一人残らず把握する方法をとるか、あるいは人々の接触を制限する方法をとるかの二者択一になるように思います。本当は、ワクチンがあれば一番いいのですが。
各国のPCR検査実施総数と国民百万人当たりの実施数の比較(4月5日現在)
江戸から文明開化を経てまもなく、北里柴三郎や野口英世、志賀潔などの病理学者がこの分野で活躍しました。世界から見れば、江戸の科学レベルから類推して、当時の日本人がこの分野で活躍できたのはかなり不思議なことだったろうと思います。でもそれは、学問や学術等ということではなく、役立つことをしたいと思う日本人の価値観によるものだったような気がしています。


 自分のことを棚に上げた言い方ですが、そのことが続いていると信じたい。