2020年6月20日土曜日

新型コロナウイルスに対する抗体産生の状況


日本でも新型コロナの抗体検査が行われるようになりました。6月16日の厚生労働省の発表によると東京都(被験者:1971人)と大阪府(2970人)、宮城県(3009人)での検査結果は、東京都は0.1%、大阪府が0.17%、宮城県が0.03%になったとのことです。本日、620日の岩手県の発表によると、医療関係者を含む1000人の検査を行ったところ、陽性は0人とのことでした。

各都府県が公表している数値と照らし合わせると、東京都は2倍以上、大阪府と宮城県は10倍前後感染経験者が存在するということになります。

「日本での感染者は本当に少ない」ということが良く分かりました。「検査数が少ないから少なく見えるだけ」ということではないようです。

欧米に比べで何故少ないのかの理由がまだ分からないので、感染者が少ないと二次感染が心配だとする意見も多くみられます。「日本では、3蜜をしっかり守っている」ことが、やはり主要な要因なのでしょう。

 でもやはり、一度感染したら感染しにくくなるのかなどヒトと新型コロナウイルスの戦いの仕組みが分からないと心配です。

Trend in immunologyにコロナウイルスのヒト細胞への侵入と増幅機構に関する図が掲載されていましたので自分のためにできるだけ日本語にしてみました。感染から複製まで全くDNAが関与していないことに驚かされました。セントラルドグマに従っていませんでした。
コロナウイルスの感染と増殖スキーム
新型コロナウイルスの感染に伴い、RNAの情報を基にして数種の主要なタンパク質が感染細胞内で合成されますが、それらはヒトにとっての異種タンパク質であるため抗原になると思われます。しかも一つのタンパク質が複数の抗体認識部位(エピトープ)を持つそうなので、ウイルス感染に伴いヒトが生産するIgG抗体の種類はかなりの数に上るものと予想されます。こうした抗体混合物はポリクローナル抗体と呼ばれるようです。

このポリクローナル抗体の中に、新型コロナウイルスの感染や病原性を阻害できる中和抗体存在するとのことなので、それらに関する最近の研究を調べたところ、スパイクタンパク質のヒト細胞ACE2結合部位に存在する3種の抗原認識部位(エピトープ)A,B,Cの内のAが最も優れた中和活性を示したとする報告がScience誌の6月版(最新)に報告されていました。
新型コロナウイルスの疾病予防作用を持つ抗体の探索


ワクチン開発は、国家間あるいは企業間の競争になっている様子なので公表されていない成果がたくさんある可能性もあり、WHOへの期待が高まります。

 PubMedSars-CoV2Antibodyを検索したところ643件がフィットしました。SarsCov2AntibodyJapanを検索すると11件になります。日本も頑張っていますが、さらに研究が進むような環境の改善を願っています。

参考)
1)Shibo Jiang et al.:Neutralizing Antibodies against SARS-CおV-2 and Other Human Coronavirused, Trend Immunology 41(5), 355-359(2020)
2)Thomas F. Rogers et al.: Isolation of potent SARS-CoV-2 neutralizing antibodyies and protection from disease in a small animal model. Science 15 June (2020)

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