2023年10月27日金曜日

アサギマダラの吸蜜花とピロリジジンアルカロイドの不思議

    今年は10月に雪入山や宝篋山付近でアザミの花の蜜を吸っているアサギマダラに初めて出会いました。7月と8月は暑すぎたので出会えなかったのかなと思っていますが、登山・ハイキングの回数が少なかったせいなのかもしれません。

雪入山付近のアサギマダラ(2023/10/12)

昨年は7月17日に筑波山麓の鬼ヶ作林道で、ヒヨドリバナやアザミの花の周りを数羽が飛んでいました。

ヒヨドリバナとアサギマダラ(筑波山麓 2022/7/17)

アザミの花とアサギマダラ(筑波山麓 2022/7/17)

また、8月1日に那須岳登山口で、ヨツバヒヨドリやヒヨドリバナに群がるアサギマダラを見ることができました。

ヒヨドリバナとアサギマダラ(那須岳登山口 2022/8/1)

ヨツバヒヨドリに群がるアサギマダラ(2022/8/1)

アサギマダラはヨツバヒヨドリやヒヨドリバナ、フジバカマなどのキク科ヒヨドリバナ属の花で吸蜜する印象があったのですが、今年は2回ともアザミの花の周りを飛び回っていました。少し離れた場所にはヒヨドリバナもありましたが花も終わりかけていたので、10月頃にはアザミの花が好まれるのでしょう。

アサギマダラは毒性を示すピロリジジンアルカロイドを体内に蓄え鳥などによる捕食を回避する特性を持つことで有名で、ヒヨドリバナ属がそのピロリジジンアルカロイドを含有する代表的な山野草として良く紹介されています。

 調べて見ると、キク科のアザミ属にもピロリジジンアルカロイドが含有されているとのことです。

 植物毒を蓄えて鳥などの捕食から逃れるように進化した昆虫としては、テントウムシやジャコウアゲハが良く知られていますが、アサギマダラなどのマダラチョウの仲間やヒトリガの仲間も同じ方向に進化した昆虫のようです。

 アサギマダラが蓄えるピロリジジンアルカロイドは蜘蛛には効果てきめんのようですが、カマキリは腹部を残し胸部を食べ、鳥の中でもカラスなどには襲われるとする観察もあるようです。

 喋々など鱗翅目でのピロリジジンアルカロイドの役割について調べてみると、かなり多くの研究が行われていました。

 化学の分野ではピロールは有名のようですが、ピロリジジンの構造に出会うことな少ないようです。


    ピロリジジンアルカロイドに関する総説1)を見ると、ピロリジジンアルカロイドは蝶々など鱗翅目昆虫に対して様々な役割を担っている可能性があるとのことです。

ピロリジジンアルカロイドは、実はキク科を始めとする6000種類以上の植物に含有され500種類もの異なる化合物が存在する2)とのことで、ピロリジジン化合物であればどれでも良い訳ではないようです。


最近、アサギマダラなどマダラチョウではメスを誘引する性フェロモンの前駆体で、かつ雄の交尾行動を活発にするピロリジジンアルカロイドはヘリオトリン(heliotrine)とインターメディン(Intermedine)であることが明らかにされたようです2)

また、これら2種のピロリジジンアルカロイドからマダラチョウの性フェロモンの生合成経路も明らかになっているようです。

 
アサギマダラが最も好む吸蜜花と言われているキク科のヒヨドリバナ属にはインターメディン(intermedine)が含有されているようです4)

今後、キク科等が含有するピロリジジンの組成について調べて見たいと思っています。


参考)

1)本田 計一 : 鱗翅目昆虫とアルカロイド、化学と生物、38(6)359-3671998

2)Xianqin Wei et al. : Current Knowledge and Perspectives of Pyrrolizidine Alkaroid in Pharmacological Application : A Mini-Review, Molecules, 26, 1970 (2021)

3)Keiichi Honda et al.: Uptake of plant-derived specific alkaloids allows males of butterfly to copulate, Scientific reports, 8, 5516 (2018)

4)Steven M. Colegate et al.: Potentially toxic pyrrolizidine alkaloids in Eupatorium perfoliatum and three related species. Implication for herbal use as boneset., Phytochemical Analysis, 29(6), 613-626(2018)

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