2017年9月4日月曜日

シオヤアブと翅音の利用

 仙台市の三神峯公園で尻尾が丸くて白いアブに出会いました。7月の中ごろのことです。ネット等で調べたところシオヤアブの雄だと分かりました。このシオヤアブは、スズメバチやオニヤンマも捕えて餌にするとのことで、見かけによらず最強の昆虫と呼ばれることもあるそうです。


 早速、シオヤアブの情報を探しまたところ、シオヤアブが捕まえた餌に注入する消化酵素の特徴などに関する情報は見当たらず、翅音の波形が蚊に良く似ているとの報1)が見つかりました。

それによると、オオクロヤブ蚊の翅音の周波数は500Hz程度、シオヤアブの翅音の周波数は310350Hz程度で、蚊よりやや低音ですが、両者の波形は音叉から出る純音に近い形です。残念ながら私はシオヤアブの翅音を確認していませんが、蚊の翅音には度々悩まされた経験があります。耳元を飛び去る時の音の強さの変化とともに、ドップラー効果を頼りにパチンと手でたたき捕まえた時の爽快感は忘れられません。


 昆虫の翅音は、種によって異なるようで、オニヤンマやカナブンの音はかなり複雑な波形になっています。一方、熱帯シマカの場合、雄の蚊は雌が発する羽ばたきの音(380Hz)を聞き分け、強く反応するそうです。翅音が仲間を誘引する昆虫も多いことから、既にトラップ技術としての特許も成立していますが、シオヤアブが最強であるとすれば、その翅音はハエや蜂、蚊、アブなどを遠ざけるために活用できるかも知れません。特に、自動車内への昆虫の侵入は子供が嫌がるので、利用者がたくさん出るように思います。

 いっそのこと、バイオリンのような翅音のする昆虫がいても面白いのかなと思ったりします。以前、気仙沼徳仙丈山のツツジを見に行った際、観光客を撮影するために飛んでいるドローンの音を、昆虫の翅音と勘違いし何度もその姿を探した経験があります。昆虫の翅音を研究して、環境に溶け込む音あるいは周囲が和やかになる音の出るドローンの開発をすると面白いと思います。そうすれば、新たな役割が生まれるかもしれません。
 
最近、モスキート音が話題になっています。高齢者は聞き取ることができない1700Hz程度の音のようで、若いグループのための携帯電話の着信音や商業施設などに長時間たむろする者の不快音として活用されているようです。幸い私は聞き取れませんでした。このモスキート音の開発者のHaword Stepletonさんらには、2006年にイグノーベル平和賞が与えられていま)が、アラームとしての活用にはやや行き過ぎとの声もあり種々議論されています。その後、20082月にイギリス政府はモスキートアラームを禁止する計画はないと発表しているようです。

これまでに蚊の翅音に悩まされたことのない人達は、話題のモスキートアラームが本物の蚊の翅音だと思っているのかも知れません。また、最近本物の蚊と遭遇した高齢者の中には、“まだまだ高周波モスキート音は聞こえるわい”と思っている方がおられるかも知れません。残念ながら、どちらも間違いです。これを機会に、“虫の声”に加え、翅音にも注目しようと思っています。

 

参考)

1)鷲塚 靖:日応動昆誌、18(3)991974

2)Jha. Alok : “Electronic teenager repellant and scraping fingernails, the sounds of Ig Nobel success / UK news”






  

 


 


 
 

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