2020年7月17日金曜日

新型コロナウイルス以前の保存血液の抗体検査はワクチン開発のヒントになる?

717日の新型コロナウイルス感染者は622人と急増し、過去3番目の数字になったそうです。マスクや手の消毒など、4月に比べたら防御対策がしっかり講じられ、人々の心構えも格段に向上しているはずですが、まだ改善点があるということでしょうか。WHOも認めつつある空気感染対策でしょうか。
 新型コロナウイルスの抗体が数週間、数か月で減少するとの報告が中国、スペイン、イギリスから順次報告されたようですので、再感染の可能性も高いことから、医薬品やワクチンの実用化のさらなる加速が求められています。
 免疫について良く分からないので、現状の感染性疾患に対するワクチン抗体の安定性について調べてみました。
 医学では常識なのかも知れませんが、破傷風やジフテリアなどの病原性細菌に対する抗体の半減期は男性の方が女性より長く、それぞれ12年、26年だとする報告1)が見つかりました。また、ウイルス性の感染症である風疹やおたふく風邪、麻疹(はしか)の抗体の半減期は逆に女性の方が長く、男女ともほぼ寿命が尽きるまで有効性が継続されるようです。 

 天然痘撲滅の話題は知っていましたが、その天然痘ワクチンとして近縁種で軽症の感染症を引き起こすワクシニアウイルスが生ワクチンとして使用されていたことを初めて知りました。天然痘とワクシニアの抗体には交差性があるということのようです。
 もし、新型コロナウイルスにも同様な交差性抗体を生じさせる軽症あるいは無症状のウイルスが見つかればいいなと思ってしまいます。
そこで、近縁種のコロナ風邪に関する文献を探したところ、健常人の1985年から2020年までの保存血清について、コロナ風邪のOC43NL63229EHKU1に対する抗体の増減とそれらに共通する保存性エピトープの検討、さらに新型コロナウイルスのNタンパク質に対する抗体を調査した文献2)が見つかりました。まだアクセプトされていないmedRxivでの公開論文です。

それによると、それぞれのコロナ風邪の流行に伴い対応する抗体が増減していますが、新型コロナウイルスのN(ヌクレオカプシド)タンパク質抗体を、1985年に採取した血清、1992年に採取した血清、2006年に採取した血清の3件が保持していた可能性が高いとのことです。
 新型コロナ以前に採取した血清に新型コロナのN抗原に対する抗体の存在が予測され、それが中和抗体であれば、その抗体の原因になった抗原は天然痘に対するワクシニアの生ワクチン抗原のような「新型コロナウイルスのワクチン候補」になるのではないかと素人ながら思いました。
 フランスやイタリアでも昨年12月以前に採取した血液の新型コロナ抗体検査を行ったとの報道がありましたので、既に多くの国でそのような研究を行ったのかも知れません。
 日本などアジア諸国の新型コロナ感染者と死者が少ないと言われていますが、同じRNAウイルスのインフルエンザによる死者数を国別に見てみると、日本はイギリスやドイツよりも多いようです3)

 マスクや非接触での挨拶などの日本らしい生活習慣が感染症全般の予防に役立つのであれば、インフルエンザについても欧米諸国より日本の死亡率が低くなるように思ってしまいますが、そうでもないようです。「ファクターX」は何なのでしょうか。新型コロナ感染者や死者は確かに少ないので、その発見には欧米より日本に利があるように思われます。
 伝染性のDNAウイルスとともに変異が速いとされるRNAウイルスに対しても既に有効なワクチンは開発されているので、様々な視点からの研究が行われ、新型コロナウイルスに対する有効なワクチンが開発されることを願っています。

参考)
1)I.J.Amenna et al., : Duration of Humoral Immunity of Common Viral and Vaccine Antigens.,  N. Engl. J. Med., 357(19), 1903-1915(2007)
2)Arthur W.D. Edridge et al.: Coronavirus protective immunity is short-lasting. medRxiv,  https://doi.org/10.1101/2020.05.11.20086439
3)OECD.Stat, Health status, Causes of mortality


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