2020年7月8日水曜日

新型コロナウイルスやインフルエンザの無症状感染者対策

   新型コロナウイルスがサーズのように短期間の間に終息することを期待していますが、どうもそれは困難なようです。その要因の一つが、新型コロナウイルスの感染者に無症状者(不顕性感染者:無症候性キャリア)が多いことです。症状がないまま他人に感染させるのであれば防ぎようがないということになります。
 実際は、無症状者も陽性者なので徹底的に検査をして隔離することは可能だと思いますが、強制措置を伴うので現状ではそれを完全に行うことは困難な国が多いということになります。米国では、既に人口の11.5%に相当する3千8百万件のPCR検査を実施していますが、まだ感染が拡大しています。ロシアでは人口の14.8%、イギリスでは15.7%に相当するPCR検査を既に実施しています。
 そこで、問題の無症状者について文献を調べてみたところ、実はインフルエンザでもその型によって異なるようですが16%程度の無症状感染者がいるようです1)SARSでは該当する文献が見当たりませんでしたが、MERSでも無症状者はいるようです。でも、やはりなんといっても新型コロナの無症状者は断トツで40-45%程度だろうと予測されています2)
人類は長い間インフルエンザに悩まされてきたにも関わらず、無症状者に関するデータは新型コロナウイルスに比べても少ない程度のようで、バラツキも多くまだまだ研究の余地があるようです。たぶん、ウイルスの検出方法が技術的にも制度的にも煩雑だったことも一つの要因だったのかも知れません。
 新型コロナウイルスについては、既に唾液でのPCR検査が可能になりました3)が、さらに簡便化されて、遺伝子や抗原は少量のうがい液でも今後検出可能になるものと予想されます。
もっとも肝心な病気の判定は医師が当然行うわけですが、病原体や抗体の検査キットは体温計と同様に一般の保健用の器具・用具として出回るレベルまで発展・一般化することが期待されます。事実を知ることで責任ある行動が自覚されることになると思います。
定期健康診断で、インフルエンザなどの流行性疾患関連の抗原・抗体検査ができるようになれば、さらに安心できる社会になると思っています。
新型コロナウイルスの抗体は数か月で減少する4)との論文が出たようですが、将来に向け、特にウイルスに関する抗体やワクチンに関する研究がさらに活発に行われ、今回を契機に人類とウイルスの好ましい共存社会が構築されればいいなと思っています。

参考)
1)Gerardo Cowell et al.: Transmission characteristics of MERS and SARS in the healthcare setting : a comparative study., MRB Medicine, 210(13), 1-12(2020)
2)Daniel P. Oran et al.: Prevalence of Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection., Annals of Internal Medicine 3, June 2020.
3)Yoshimasa Takeuchi et al.: Saliva-based PCR test for SARS-CoV-2 detection., J. Oral. Sci., 2(3), 350-351(2020)
4)Quan-Xin Long et al.: Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infection., Nature medicine, Published online: 18 June 2020

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