2020年7月31日金曜日

新型コロナウイルスのワクチン開発への取り組み

一昨日7月29日の全国の新型コロナウイルス感染者数は1,259人で、ついに1,000人を超えました。3か月半感染者が0だった岩手県でも2名の感染者が出たようです。730日の感染者はさらに増え1,301人、今日31日は1,500人以上になってしまいました。WHOSituation ReportWorldometers.infoの情報を見る際には、感染者が1,000人以上増加している国名が目に止まり、きっと大変だろうなと思っていました。

 今後の日本の新型コロナ感染症はどのような経過をたどるのかが心配です。医薬品やワクチンの開発が頼りなのですが、様々な情報が入り乱れ不安になります。

頼りのワクチン開発も行われているようですが、参考のため新型コロナウイルスに対するワクチンについて調べてみました1,2)。従来の生ワクチンや不活化ワクチンから新たなRNAワクチンやDNAワクチンなどの開発が集中的におこなわれているようです。


伝染病の中で感染力が強いことで有名な疾病は麻疹(はしか)のようですが、麻疹に罹患し回復すると二度と感染せず、ワクチンも生涯有効とのことです。これは麻疹の抗原になるエピトープ部位が変異するとヒトに感染できなくなり、結果として感染性の麻疹のエピトープは変わらないからなそうです。

麻疹は新型コロナウイルスと同様にエンベロープを持つ一本鎖RNAウイルスのようですが、新型コロナウイルスとは異なり、RNAがプラス型ではなくてマイナス型のようです。

 麻疹はヒトのリンパ組織やマクロファージなどに発現しているSignaling lymphocyte activation molecule(SLAM)を受容体として利用し細胞に侵入することが、九州大学の柳先生らによって明らかにされているとのことで、詳しい感染機構が紹介されていました3)

 さらに歴史を振り返ると、ウイルスが細胞に侵入する際の膜融合機構は仙台ウイルスを発見した東北大学石田先生や大阪大学の岡田先生によって解明されています。ウイルスの侵入には宿主側のプロテアーゼが関与しているという画期的な発見です。

 利根川先生のノーベル賞は日本人なら誰でも知っている訳ですが、アレルギーに関与するIgE(レアギン)は米国の免疫学会長を経て、奥様の郷里の山形県で教育委員長をされた石坂先生が証明され、それには「免疫の意味論」で有名な富田先生が弟子として背中の皮膚での試験を共にされた仲であることも有名です。感動しました。

 さらに、最近では免疫寛容や自己免疫疾患に関わる制御性T細胞(Treg)は京都大学の坂口先生が、サイトカインストームの鍵と言われているIL-6は大阪大学の岸本先生と平野先生によってそれぞれ発見されています。

 これらノーベル賞級の業績はすべて医学の発展に寄与しているので、今回のワクチンも逸早く日本でも開発して欲しいと願っています。

 でもこの新型コロナ問題の発生によって初めて知りましたが、裁判など様々な経緯があり、日本はつい最近まで、ワクチン実施率の低い国という位置付けになっていたようです。

 リスクを日本語に訳すことは難しいと言われています。善悪、白黒を付けて安心したいと私も思ってしまいます。でも100%安全な医薬品の開発はできないように思います。

 食品の安全性もそうですが、科学技術の導入や開発さらには行政においてもリスク管理を念頭に置くことが重要だと感じるようになりました。リスクを恐れてとどまるのではなく、その時代に相応しい最善の対応策を考えて先頭を歩む各分野のリーダーがこの機会にたくさん生まれるよう、アフターコロナに期待しています。

参考)

1) Tung Thanh Le, et al.: The COVID-19 vaccine development landscape. Nature Reviews Drug Discovery 19, 305-306(2020)

2) WHO: Draft landscape of COVID-19 candidate vaccines.31 July 2020

3) 田原 舞乃ら:麻疹ウイルス. ウイルス,67(1),3-162017


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