日本の新型コロナの感染者が急増したことで、首都圏での外出規制が始まり楽観ムードが一変しました。でも、得体の知れないこの新型コロナに立ち向かうための要になる、ワクチンや医薬品が出回るのはまだ先のようです。
良く理解している訳ではないのですが、各国の感染者数の増加状況を見ると、どの国も最初は指数関数的な増加を示しているようには見えません。特に日本では、豪華客船での感染事態を経て、しばらくの間感染者の増加は横ばいでした。感染防止に向けた皆の努力の賜物だとは思いますが、それ以外に何かが感染のスピードを抑制しているのではないかと感じます。
その「何か」の一つとして期待するのは、新型コロナの親戚ともいえる、毎年かかるコロナ風邪に対する抗体の新型コロナ抗体との交差性です。
追加記載)5月20日
米国のラホヤアレルギー・免疫研究所の研究員が、新型コロナ発生前の保存血液にSARS-COV2反応性のCD4+T細胞が存在することを見出し、類似コロナウイルスへの感染による「交差性」の存在の可能性をCell誌に投稿しました。ACE2をレセプターとするHCoV-NL63への感染が有効だったのだろうか。詳細が知りたいです。
Journal Pre-proof
Alba Grifoni et al.: Cell, Targets of Tcell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals. https://doi.org/1016/j.cell.2020.05015
追加記載)5月20日
米国のラホヤアレルギー・免疫研究所の研究員が、新型コロナ発生前の保存血液にSARS-COV2反応性のCD4+T細胞が存在することを見出し、類似コロナウイルスへの感染による「交差性」の存在の可能性をCell誌に投稿しました。ACE2をレセプターとするHCoV-NL63への感染が有効だったのだろうか。詳細が知りたいです。
Journal Pre-proof
Alba Grifoni et al.: Cell, Targets of Tcell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals. https://doi.org/1016/j.cell.2020.05015
人間が感染するコロナウイルスは7種類のようです。その内、新型コロナと同じβ-コロナウイルスに属するものは5種類で、α-型は2種類とのことです。一方、新型コロナと同様にACE2をレセプターとするコロナ風邪ウイルスはNL63のようです1)。どのウイルスが新型コロナに最も近いのだろうか。あるいは、抗体交差性を持つ可能性が高いのだろうか。
最近ネットで話題になっているBCG接種が感染防止に有効だったのではないかという件については、既にBCGがナチュラルキラー細胞を活性化することが理化学研究所によって解明されており2)、そのことが感染防止に関係しているのではないかと推測されます。BCGによって活性化されるのは細胞性免疫のTh1系のようです。細胞性免疫系はサイトカインストームとの関連性がありそうなので、その点も考慮する必要があるように思います。
追加記載
世界的には、ポリオウイルス不活性化ワクチンのCOVID-19に対する有効性が取りざたされていることから、それに対するWHOの見解と方針が4月16日に公表されています。
http://polioeradication.org/wp-content/uploads/2020/03/Use-of-OPV-and-COVID-20200415.pdf
一方、液性免疫Th2系においても、抗体の交差性が確認されれば、軽症のコロナ風邪にしっかり感染することによって、COVID-19に対する予防あるいは症状の軽減が期待できます。
関連した研究は始まっていますが3)、まだ明確ではなく、SARSへの感染者や、軽症コロナ風邪のOC43感染者、229E感染者を被験者とした研究では、SARS感染者において、OC43や229Eに反応する抗体価が上昇していることが明らかになっています。
ヒト感性性コロナウイルスSARSやOC43、229Eの抗体交差性 |
コロナ風邪に関する調査は、日本ではまだ感染者が出ていない岩手県における直近のデータは見つかりませんでしたが、山形県や三重県、福井県などで行われています。山形県の例を見ると、主にOC43とNL63への感染が多いようです4)。米国と香港でも同様の調査がありますが、やはりOC43への感染例が多いようです。
山形県におけるコロナ風邪の事例 Yohei Matoba et al.:Jpn.J.Infect.Dis., 71, 167-169(2018)より |
USAにおけるコロナ風邪の流行状況 Marie E. Killerby et al.: J. Clinic. Virol.101, 52-56(2018)より |
免疫系の交差は、感染評価においては混乱の原因になりますが、予防の観点からはかなり重要な視点だと思います。この分野の発展を願っています。
軽い風邪、あるいはその他でもいいのですが、安全性の高い感染症にしっかりかかっていれば、COVID-19にかかりにくいということになるといいのですが。
参考)
1) Thanigaimalai
Pillaiyar et al.: Recent discovery and development of inhibitors targeting
coronaviruses, Drug Discovery Today, 2624, 21 (2019)
2) 理化学研究所:結核菌ワクチン「BCG」がアレルギーを抑制する機構の解明、2006年12月18日
3)Nisreen M.A.
Okba et al.:SARS-CoV-2 specific antibody responses in COVID-19 patients.,
medRxiv. https://doi.org/10.1101/2020.03.18.20038059
4)Yohei Matoba et al.: Trends of Human Coronaviruses in Yamagata,
Japan in 2015-2016 Focusing on the OC43 Outbreak of June 2016., Jpn. J. Infect.
Dis., 71, 167-169(2018)
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