2018年9月4日火曜日

花豆の花の色を形成するアントシアニン

 豆畑に行くと紫花豆の花の色が鮮やかな赤色で目立つことから、いつも何かに利用できないのかなと思ってしまいます。調べてみると西洋では観賞用の花として庭に植える他に、エディブルフラワーとても利用しているとの記述もありました。でも、積極的に食べていたという程ではないようです。かなり目立つ色なので、花の色素の構造は既に決定されているだろうと思い調べてみましたが、報告が見当たりませんでした。多くの花の色素はアントシアニンとカロテノイドのどちらかのようなので、とりあえずアントシアニンいついて調べてみました。

アントシアニンは植物の細胞内で合成され、最初に6種類の基本構造が形成されるようです。6種類の基本構造(アグリコン)は、さらに変化して様々なタイプの基本構造に変わるようですが、多くの植物はこの6種の基本構造に様々な糖や広い意味での有機酸が結合することで水に溶解できるようになり細胞の液胞に蓄積し花の色を形成することになるようです。

ペラルゴニジン、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペツニジン、マルビジンの6種の基本構造は、その化学構造が少し違うだけで色やその安定性が異なるようです。

歴史的には、これらアントシアニンの基本構造の名称は、それぞれ最初に研究された花の学名に由来しているようす。でも、その後研究が格段に進み、ムラサキツユクサの花やヤグルマギクの花、アジサイの花の色素は重金属や他の色素類と複合体を形成していること、朝顔の花色には液胞内のpH変化が関与していることなどが明らかになっています1)。これら花色の形成に関する研究は日本で行われたものであり、粘り強い緻密な研究が世界から注目されているようです。頼もしいです。

 花豆の花の色素は花弁の表と裏の表皮細胞に局在していることが分かっています2)。化学構造に関する報告は見つけられませんでしたが、明るい橙色の色調からすると、ペラルゴニジン構造を持つ色素であると推定されます。なお、豆類の色素については報告3)があり、紫花豆の表皮の主要な色素は花の色素と異なりデルフィニジン-3-O-グルコシドとのことです。そのほか、今回栽培している豆類の多くはアントシアニンを含有しているようですが、小豆の色素はアントシアニンと異なり緑茶で有名なカテキンが数個結合したプロアントシアニジンが主体のようです。


 アントシアニンやプロアントシアニジンはベンゼン環にOH基が結合したポリフェノール類であり、かつ基本骨格がフラボノイドに属することから、抗酸化性に富む化合物であることが明らかになっているようです。大きな花豆になって欲しいです。

参考)
1)近藤忠雄ら:有機合成化学協会誌、54(1)421996
2)Casper J. van der Kool et al: Royalsociety Publishing Org.,  May 11 (2016)
3)Kumi Yoshida et al.:Biosci.Biotech.Biochem., 60(4), 589 (1996)

0 件のコメント:

コメントを投稿