2017年12月24日日曜日

サボテンの花とフロリゲン


 今日はクリスマスイブです。かなり寒くなりましたが家の窓辺にあるサボテン、マミラリア・ハーニアナ(玉翁殿)の花が一輪きれに咲いています。また、マミラリア・エロンガータ(黄金丸)からはかわいい小さな芽が出ています。野外で昆虫を見かけることはほとんどなくなり野草も少なくなったので、屋外での写真撮影ができず寂しい思いでしたが、長いつきあいのサボテンが話題を提供してくれました。

 20年ほど前から一緒にいて、3段重ねで30cm弱になった我が家のサボテン玉翁殿の開花は今年2回目です。いつもは丸いサボテンの輪郭に沿って円を描くようにたくさんの花を咲かせるのですが、花芽は円状に出ているものの、今回は一輪だけ抜け駆けしてしまったようです。

黄金丸
 
玉翁殿
 

 同じ環境にあっても開花が不揃いになるのは不思議です。そもそも、花やわき芽が出来る基本的な仕組みや、どこの部位に花芽が出てくるのかなど、誰もが思い浮かべるような質問に答えられるようになっているのだろうかと思い少し調べて見ました。

花については、チャライヒャン(Chailakhyan)というロシアの研究者がいまからちょうど80年前(1937年)に、接ぎ木の実験から植物の葉が日長を感知し花の形成に関わっていることを発見したようです。彼は葉で花の形成を促す「花成ホルモン(フロリゲン)」が合成され茎頂に移動すると予言したため、それがフロリゲン仮説となり植物最大の謎の一つとして世界に広まったようです。

 それ以来、多くの研究者がフロリゲン探しにしのぎを削りましたが、提唱から70年を経た2005~2007年に候補物質(FTタンパク質)が日本の研究者によって発見され、このタンパク質が葉から維管束を通って茎頂に輸送され花を形成させることが日本やドイツ、イギリス、米国などで証明され、フロリゲンであることが確認されたとのことです。

その後、このフロリゲンは葉で日中に増加するフォスファチジルコリンと特異的に結合し茎頂に移動することが解明されるなど、そのメカニズムの詳細が明らかにされ始めているようです。さらに、フロリゲンFTタンパク質は、花の形成のほか、ジャガイモの塊茎形成、玉ねぎの鱗茎形成にも関与する多機能性を示すことも明らかになってきており、植物ホルモンとしても認められるまでになっているようです。

オーキシンやジベレリン、サイトカイニン、エチレン、アブシジン酸、ブラシノステロイドなどの植物ホルモンは数十年前の高校の教科書にも掲載されていましたが、その後植物遺伝子の解明とその発現メカニズムの解析技術が格段に進歩したため、上記古典的植物ホルモンの他に、ここで取り上げた花成ホルモン-フロリゲンに加え、植物の抵抗性(植物免疫)に関わるシステミンやジャスモン酸、サリチル酸など新しい植物ホルモン(様物質)が次々に提唱され始めているようです。

科学の進歩が速すぎて追いつけませんが、花成ホルモンの他にも植物の抵抗性に関与する植物ホルモンには興味があります。学んだ知識は何とかして農業に生かしたいと思っています。 

参考)
1)辻 徳之ら:化学と生物、54(5)3582016

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