晴天だったので2月25日の午前中に太白山(標高320m)に登りました。平日でしかも冬なので登山者はいないのではないかと思っていましたが、年長者が結構散歩したり登山したりしていました。今回は長男も加わり3人での登山になりました。
冬ということで、草花や昆虫は見つけることはできませんでしたが、木々から葉が落ち見晴らしの良い登山道の岩場にはたくさんの地衣類が付いていました。以前、自然観察の森で緑藻が共生した地衣類の写真をとりましたので今回は藍藻(シアノバクテリア)が共生した地衣類の写真を撮りたいとおもっていたところ、麓の神社付近の岩場で黒色の葉状地衣類を見つけました。後で調べたところ、シアノバクテリアが共生光合成生物(photobiont)になっているコウヤクゴケのようです。苔の生えた岩場に結構たくさん生えていました。
そのコウヤクゴケから少し離れたところに、黒い海苔状の物体を見つけました。後で調べた結果、乾いていてぶよぶよ感に乏しかったもののイシクラゲではないかと思っています。イシクラゲのぶよぶよしたジェリー状物質はシアノバクテリアのNostoc communeが生産した多糖類だということです。このジェリー状物質があるため、日照りによって藻体が乾燥し数か月たっても、雨が降れば再び水を吸収して生命活動を行うことができるとのことです。ちなみに、イシクラゲは日本でも食用にしていたようです。
イシクラゲの乾燥耐性に関する研究結果によると、乾燥耐性をもたらす要因としては乾燥物の6割~8割を占める細胞外多糖類に加えて、可溶性のトレハロースが乾燥に伴い増加すること、ゲル状物質中に抗酸化物質のスキトネミンさらには抗酸化酵素のSODが存在することなどが明らかになっています1)。イシクラゲは、乾燥した状態で100年間も生存可能だと記載されていましたので、驚きました。
以前、極限環境下での生育が可能な地衣類が宇宙生物学(アストロバイオロジー)で注目され、欧州宇宙機構が火星環境下での生存試験を実施していることについて記載しましたが、実はこのイシクラゲの構成菌であるシアノバクテリア(Nostoc commune)については、日本でも筑波大学を中心として火星環境下での生存試験などが行われていました2)。火星農業の初期導入生物として注目しているとのことです。
はやぶさ2号が2月22日7時48分リュウグウへの着陸に成功し、生命の起源の解明に関する研究の進展が期待されています。地球の人口は、今日3月10日19時00分現在75億3038万4700人を数えました。1年に7千万人(フランスやイギリスの人口より多い)増加しているとのことですので、未来の食料問題が大きな課題ですが、多くの可能性を求めて多様な方向への発展を期待しつつアストロバイオロジー研究を進めることも必要かな~と思っています。
今回の太白山登山の際に撮った地衣類の写真も以下に載せます。
参考)
1)Kaori
Inoue-Sakamoto et al.: Characterization of extracellular matrix components from
the desiccation-tolerant Cyanobacterium Nostoc commune. J.Gen.Appl.Microbiol.,
64, 15-25(2018)
2)木村靖子ら:陸棲藍藻Nostoc. Sp.
HK-01の食品としての機能と宇宙食素材としての利用の可能性. Eco-Engineering, 28(2),
43-51(2016)