2017年5月19日金曜日

ジャガイモのソラニンは花に多い

 ゴッホが描いた「ジャガイモを食べる人たち」をまだ見ていません。農地を耕しジャガイモを植え、土にまみれながら収穫する人々への思いが良く出ている絵だと言われています。アンデスからヨーロッパに導入され、当初は忌み嫌われたり、さほど注目されることもなかったものの、戦争が続き荒れた土地で良く育ち、庶民の飢えを満たしたジャガイモとそれを栽培・収穫する人々の素直な生き方にゴッホは共感したのだと思う。ゴッホはオランダで育ち「ジャガイモを植える農民」や「ジャガイモのある静物」も描いているので、当時のジャガイモの地位はかなり高まっていたのでしょう。実際に19世紀末のドイツでは、一人当たりのジャガイモ消費量は年間300kgにもなっていたとの記録があるので、主食に近い位置まで上り詰めていたのだと思います。

そのジャガイモを草まみれの中で栽培するのは少し後ろめたいのですが、ジャガイモはジャガイモなりに体中にソラニンやチャコニンなどグリコアルカロイドと呼ばれる毒成分を蓄え外敵に対抗するようです。グリコアルカロイド類は花の部位に最も多く1)0.20.5%程度含まれ、次いで発芽した芽の部分そして葉、塊茎(ジャガイモ)と続くようです。花に多い理由は、次世代の種を生産する部位である花を守ろうとするためだと思います。ジャガイモの花をそのままにしておくと小さな果実が実るのですが、不思議なことにソラニンはジャガイモより多いものの葉よりも少ないとのことです。動物に食べてもらい、あちらこちらに落とされる糞から種が発芽して子孫を増やす戦略かも知れません。アルパカの先祖のような姿のビクーニャはジャガイモの葉や茎を避けて、果実だけを食べるそうです。
でもやっぱりソラニンやチャコニンの安全性が気になったので、少し調べてみました。すると海外では、ジャガイモのグリコアルカロイドの含有量が100gあたり20mg以下のものを食用として用い、その基準を守って互いに輸出入していることが分かりました。ジャガイモは収穫後長い期間食べますので、貯蔵温度の影響や光の影響なども気になりますが、種類によって違いがあるので注意は必要ですが、育種を経て出回っている品種では、光をあてなければほぼソラニンの増加は気にしなくていいようです。
日本では、グリコアルカロイドのないジャガイモ育の育種も行われ始めています2)
 最近はソラニンなどグリコアルカロイドの良い面にも光が当てられているので、少し調べてみたいと思っています。


1)Mohammad B. Hossain et al. : Molecules, 2016, 21, 403
2)梅基直行:化学と生物、53(12)8432015



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