2019年9月24日火曜日

キラキラ光るウラギンシジミと白いモンキチョウ


924日に牛久沼付近をいつものとおり散歩しました。18日に出かけた際、散歩道のあちこちに葛の花が綺麗に咲いていました。葛やフジはウラギンシジミの幼虫の食草だということなので、これまで写真を撮ることのできなかったウラギンシジミに会うことができるのではないかと思いました。

偶然でしたが、牛久沼に設置された板敷の遊歩道にそれらしい蝶が止まっているのを見つけました。最初は素早く飛び去るのでなかなか写真を撮ることができませんでしたが、しばらくして草に移動し、時々翅を広げました。
ウラギンシジミ(メス):9月24日撮影
ウラギンシジミ
ウラギンシジミ幼虫の食草の葛とそのそばに咲いていたキクイモの花
ウラギンシジミは、銀色の裏面をキラキラと光らせながら飛ぶので、公園などで時々見かけていたのですが写真を撮ることはできませんでした。牛久沼周辺では初めての遭遇でしたが、運よく撮影に成功しました。

  ウラギンシジミは南方系の蝶で、冬は成虫で越冬することから日本での北限が話題になっています。これまで山形県が北限と言われていたようですが、温暖化のためか最近は秋田県でも見つかるとのことで、その確認が行われているようです。

    その後、18日にムラサキシジミに遭遇した場所を通ったところ、3匹の個体に会いました。2については写真を撮ることができました。
ムラサキシジミ2個体:9月24日撮影
さらに散歩を続け、ツマグロヒョウモンやダイミョウセセリの写真を撮りました。今回撮影したダイミョウセセリには翅の淵にあるはずの白斑がありませんでした。ダイミョウセセリは、大きく関西型(後翅に前翅の白斑とつながる1本の白斑がある)や関東型(後翅に白斑なし)に分類されるようですが、今回出会ったダイミョウセセリは明らかに関東型と思われますが、翅の淵には白斑がなかったので成熟度や個体差などが関与しているのでしょうか。
ヒメアカタテハ(左)とツマグロヒョウモン(右)


ダイミョウセセリ(牛久沼) ダイミョウセセリ(つくば市洞峰公園)
     9月24日撮影         6月1日撮影        
三日月橋を渡ると右側に田んぼがあり、その崖にニラの花がたくさん咲いていました。そのニラの花には様々なハナバチ類がたくさん訪れていて、怖いぐらいでしたがモンキチョウやモンシロチョウも集まっていました。その中に、明らかにモンキチョウのような黒い紋様を持つモンシロチョウがいました。
モンキチョウの白いメス(左)
後で、調べたところモンキチョウの雌の中に白い翅を持つタイプがいるとのことでした。知らなかったです。知らないことが多いです。

2019年9月21日土曜日

シジミチョウとアリの不思議な共生関係


918日に牛久沼付近を散歩しました。牛久駅からスタートし民家の塀沿いを歩いていたところ、白い小さな蛾のような虫が飛んできて差し伸べた手に止まりました。アオバハゴロモでした。幸先がいいぞと思いました。

牛久沼沿いの遊歩道を一通り歩き、小川芋銭が晩年に暮らしたと言われている雲魚亭から再び牛久沼に戻る林沿いの道を歩いていたところ、裏面はヒカゲチョウのように目立たない色彩なのに、表面が鮮やかな青色に見える蝶が元気に飛びまわっていました。時々見える青色が美しく、初めて出会った蝶だったので追いかけて写真を撮りました。
ムラサキシジミ(9月18日)


後で調べたところムラサキシジミのようです。ムラサキシジミの幼虫はアラカシやイチイガシ、スダジイなどのブナ科の常緑樹を食草としているとのことでした。スダジイは牛久沼周辺の林にたくさん生えていて、小川芋銭の河童の碑の側にある大木は「市民の木」に指定されていました。今回の散歩ではムラサキシジミと3回遭遇しました。いまま気づかなかったのが不思議なくらいです。
牛久市の市民の木スダジイ
その後、カタバミ(Oxalis corniculata)が群生する道を歩いていたところ、小さな蝶が足元を飛び交っていたので写真を撮りました。ヤマトシジミのようです。ヤマトシジミは、唯一カタバミだけを食草とする昆虫のようです。カタバミはいわゆる野菜等のアクの一種であるシュウ酸(Oxalic acid)を多く含有する植物として有名ですが、シュウ酸濃度が高いため他の昆虫は食草にできないのかも知れません。ヤマトシジミはシュウ酸を解毒することができるのでしょう。
ヤマトシジミ(9月18日)
カタバミ(Oxalis corniculata
今回の散歩で出会ったムラサキシジミとヤマトシジミの幼虫は、体表から蜜を分泌することによって特定のアリと共生し、他のアリや蜂などから身を守ってもらうとのことです。

最近の研究によるとムラサキシジミの幼虫から分泌される蜜には、アリの活動を活発にする作用を持つ脳内ドーパミンの働きを抑制する作用があることが分かったようです1)。その作用によってムラサキシジミは身の回りにアリを引き付けておくことが可能なようです。他の虫に目移りさせないすごい戦略です。

また、ヤマトシジミも蜜を与えることによってアリとの共生関係を結んでいるようです。でも、こちらの関係はそれほど濃密ではなく時々アリが訪れる程度とのことです。一方、毎回出会うベニシジミは蜜を放出する機能がないので、幼虫の形態をヤマトシジミと似せてアリの訪問を促す作戦をとっているようです。シジミチョウとアリとの共生関係は多様でとても興味深いです。

 アリと共生する虫としてはアブラムシが有名ですが、実はシジミチョウ類ではその約75%の種類がアリと共生し2)、一方アブラムシの共生率は20~30%のようなので驚いてしまいます。でも、シジミチョウの幼虫や蛹に出会う機会はめったにないので、シジミチョウとアリの共生関係はあまり知られていないのだと思います。

 シジミチョウの中には、アリの巣の中で保護してもらう種類や、中には保護されつつアリの卵や幼虫を餌として食べるものもいるとのことなので不思議です。不思議な関係です。アリの巣の中で育ったベニシジミは、巣の入り口で蛹から成虫になると、アリに攻撃されないようすぐさまそこを飛び立つとのことでした。不義理の最たるものですが生きるための行動のようで、少し悲しいシジミチョウです。
 でも、シジミチョウの成虫に出会ってもアリは攻撃しないとする報告もあるので、今後それぞれの種別にライフスタイルに応じたアリとの関係が明らかにされることでしょう。
これまでに出会ったシジミチョウ
左上からムラサキシジミ、ベニシジミ、ヤマトシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミ
これまでに撮ったシジミチョウの写真を探したところ、ルリシジミやツバメシジの写真も見つかりました。これら2種もアリとの共生関係にあるようです。

参考)
1)Masaru k. Hojo et al.: Lycaenid Caterpillar Secretions Manipulate Attendant Ant Behavior., Curr. Biol., 25(17), 2260-2264 (2015)
2) 大村 尚:数種のアリと任意共生を行うシジミチョウ幼虫の化学的適応様式の解明、科学研究費助成事業成果報告書(平成28年)


2019年9月18日水曜日

岩手山焼走りの地衣類(環境指標生物)と宮沢賢治


97日の午後岩手山の焼走りに行って来ました。見渡す限りの溶岩流でした。
岩手山(9月7日)
「焼走り」と言う地名は岩手山が噴火した際に流れ出た溶岩により、あたり一面が焼き尽くされて形成された広大な岩だらけの原野(溶岩流)に因んで名付けられたようです。原因となった噴火は、サツマイモ栽培が奨励される要因にもなった「享保の飢饉」で有名な江戸時代の1732年に発生したとのことです。
岩手山焼走りの溶岩流
岩に付いた白い植物は地衣類
溶岩流の規模はその長さが最大4kmにも及び幅は約1kmあり、見学コースはその1kmの溶岩流を横断できるように配置され、終点には宮沢賢治の歌碑と展望台が設置されていました。宮沢賢治は溶岩流の風化の様子を観察するために度々この地を訪れていたようです。

賢治が焼走りに通っていた頃には、岩手山の噴火が1688年(貞享4年)に発生したとされ、その後235年を経ていると記載していますので、この歌碑の詩は賢治が27歳の時に書かれたものということになります。
岩手山焼走りに設置されている宮沢賢治の歌碑
賢治は、寂莫として一羽の鳥さえも見えない岩原は235年を経ても風化が進まず、2種類の苔のみが岩に張り付き乾燥しパサバサしているだけだと書き残しています。

賢治が溶岩流を眺めていた頃から100年の月日が流れていますが、噴火から287年を経た今でも風化はあまり進んでいないように見えました。アカマツやオオイタドリも所々に生えていますが、圧倒的に多く生えている植物は白い地衣類の「ハイイロキゴケ(stereocaulon vesuvianum)」のようです。ハイイロキゴケが生えた岩石には蘚苔類のシモフリゴケも時折見受けられました。
岩に生えたハイイロキゴケ(地衣類)とシモフリゴケ(蘚苔類)
地衣類は菌類と藻類の共生体ですが、人工的に設定した火星環境での生存試験も行われるなど、その生命力は圧倒的でありながら、大気が汚染された場所には生えないので環境指標生物としての側面も併せ持つ優れものでもあります。

 岩手山焼走り溶岩流の風化に地衣類がどのように関わるかについて興味を持ちました。たぶんハイイロキゴケ以外の地衣類も生えていることでしょう。地衣類は寿命が長いので、3.11東日本大震災に伴い生じた汚染物質の蓄積状況の把握にも役立つ可能性があり1)、今後焼走りの地衣類に関する研究が行われることも期待したいと思っています。

 賢治は苔に囲まれた石を見てパンを連想したようですが、ハイイロキゴケに取り囲まれた岩は、そういわれて見れば確かにパンに見えないこともないように感じました。
岩を覆ったハイイロキゴケ
残念ながら赤いリンゴは持参しませんでしたので、賢治のように岩原に座り強大な自然の力を感じ「うるうるしながら」食べることはできませんでした。

参考)
1)Savino F. et al.: Thirty years after Chernobyl: Long-term determination of 132Cs effective half-life in the lichen Stereocaulon vesuvianum (ハイイロキゴケ). J. Environ. Radioact. 172, 201-206(2017)

2019年9月17日火曜日

9月は虎豆などを収穫               オオニジュウヤホシテントウはシシトウの幼果が好き


 岩手の畑に行ってきました。今回は9月6日に牛久を出て岩手に到着し、12日に仙台に戻り14日に牛久に帰還しました。

畑は雑草まみれになっていましたが、茶豆、黒大豆、黄大豆、鞍掛豆はそれぞれ結構間隔を開けて播種したつもりでしたが肩を触れ合いながらも立派に育っていました。端に植えた茶豆の葉は黄色になり完熟を迎えそうなので、そろそろ収穫時期のようでしたが、次回に収穫をすることにしました。

大豆類の生育状況(9月7日)

蔓性の紅花豆と白花豆には莢が茶色になったものもありましたが、まだ花が咲いているので茶色の莢を収穫し、しばらくそのまま育てることにしました。
紅花豆(9月7日)

白花豆(9月7日)
虎豆の莢はどれも茶色になっていましたので、莢を一つずつ収穫して乾燥することにしました。
虎豆(9月7日)
昨年から豆類に焦点を当てて畑作業をしていますが、今年も豆類はとりあえず病気や虫害に会うこともなく順調に育っていました。月に一度程度の作業にも関わらす作物は良く育っています。ありがたいです。

豆類のついでに、ジャガイモやトマト、ナス、ピーマン、カボチャなども植えましたが、ジャガイモの収穫は終わり、今はトマトがたくさん実っています。またピーマンやナスも大きくなり特に米ナスの果実は巨大になっていました。
トマト
米ナスとピーマン

ナスやトマトはナス科なのでその葉にはオオニジュウヤホシテントウがいて、食害は目立つものの枯死するほどではありませんでした。オオニジュウヤホシテントウの斑紋の融合などには興味があるので、作物別に観察しましたが相違は不明です。ナス科のピーマンやシシトウもオオニジュウヤホシテントウの食草ですが、葉よりむしろ花から子実体が形成され始めた幼果を良くかじるようです。そのため、シシトウ果実の肩の部分が食害で穴が開き茶色になってしまいます。ピーマンやシシトウの果実の中には蛾の幼虫が入っている場合があるので、果実の肩の部分に少しでも傷があると中に虫がいるかもしれないと思ってしまいます。オオニジュウヤホシテントウは何故ピーマンやシシトウの葉より幼果を好むのだろう。不思議です。

畑の草取り作業は結構きついのですが、たまにしか来ない我々にもたくさんの収穫物を提供してくれる畑に感謝したいと思いました。

2019年9月4日水曜日

ルリタテハに会いました(牛久市遠山保全林)


牛久市が推奨するヘルスロードの一つ「遠山保全林・谷津田散策コース」を9月3日に歩いてみました。女化青年研修所からスタートして再びそこに戻る9.4kmのコースでしたが、少し迷ったりしたため11.8km1万8千歩の散歩になりました。天候は曇りでしたが雨に降られることもなく快適に歩くことが出来ました。

遠山保全林の入り口で、大きな黒い蝶々が私のズボンに止まったのでビックリしました。その後、目の前の支柱そして草に移動してくれたので写真を撮ることができました。かなり綺麗な蝶々でした。調べて見たところルリタテハという蝶々で、サルトリイバラを食草にしているとのことです。同じ場所でカラスアゲハも一匹見かけましたが頭上を飛び交い近くに来てくれませんでした。

牛久市遠山保全林で出会ったルリタテハ
 遠山保全林の小径は木々に囲まれた綺麗な歩きやすい道でしたが、日光が差し込まないのでキノコが生えていました。街中に棲む方々にとっては木々の香り(フィトンチッド)を体感できる身近な良い小森林だと感じました。
牛久市遠山保全林の入り口(左)と出口(右)

  保全林の出口では、時期外れのサツキの花が一輪咲いていました。
時期外れのサツキの花
谷津田の田んぼ道では稲がたわわに実り、道端の草にはバッタやイナゴなどがたくさんいました。林に面した田んぼ道ではサトキマダラヒカゲと思われるタテハチョウの写真を撮りましたがピンボケです。
サトキマダラヒカゲ
ヤブアズキの黄色い花がとこどころに綺麗に咲いていました。
ヤブアズキ
その後、女化街道を横切り教会を通り過ぎ民家の垣根に差し掛かったところで、アゲハのような蝶々が素早く飛んで行く姿を目撃しました。とっさに写真を撮りましたが、その後近くに飛んでくることはありませんでした。後で写真を確認したところ、どうもアカボシゴマダラのようです。アカボシゴマダラは、外来蝶で1995年に埼玉で確認されたのが最初で、以後各地で個体数が増加しているとのことです。
アカボシゴマダラ(牛久市9月3日)
今回は他に、女化街道から遠山自然林に向かう小径の桑の木にベッコウハゴロモの成虫が止まっているのを見つけました。2匹いました。
桑の枝に止まったベッコウハゴロモ
ハゴロモ類はカメムシ目なので蝶とはかなり遠縁ですがようやく見つけましたので記載しました。

 途中に休憩所がないので水の補給を意識しながら歩くと良いようです。