2021年12月19日日曜日

新型コロナウイルスの弱毒化への期待

   数日前から新型コロナウイルスの集団感染が報告されるようになったので、日本でもこれから感染者が増加し始めるのでしょうか。心配です。

米国やイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど欧米では感染者の増加が顕著になっているようです。

中でも人口6千7百万人のイギリスの1217日の新規感染者数はWHOによると87,565人になっていました1)。日本の人口1億2千6百万人当たりに換算すると16万人強になります。δ変異株による感染ピーク時に日本は2万人で医療崩壊しそうだと言われていましたので、想像を絶する数です。

今、オミクロン株が騒がれていますが、新型コロナウイルスのRNA遺伝子の塩基数は約3万で、その変異速度は一カ月当たり2個程度(年に24~25個)と言われているようです2)

新型コロナウイルスが確認されたのは201912月なので、丁度2年が経過し、算数的には4850個の塩基が変異した計算になります。

3万の塩基のどの部位に変異が生じるかは無作為であるとすると、膨大な数の変異株が生じたことになるように思います。1個の変異でも3万通りあることになりますので。でも、デルタ変異株やオミクロン変異株のように、多くの変異がスパイクタンパク質に確認されていることから、変異部位には偏りがあるようにも見えます。

 これ程変異が多いと、やはり現存の4種(229E, OC43, NL63, HKU1)のコロナ風邪ウイルスやインフルエンザウイルス等と同様で、絶滅させることは困難なのではないかなと思ってしまいます。

 今はワクチンがたよりでワクチン接種を進めるのが最善ですが、ワクチン接種(全員の重症化予防対策)を一通り終えた後、症状の出た患者に有効な医薬品(重傷者のウイルス撲滅対策)を迅速に実施できるようになれば、強毒株が淘汰され、無症状者に潜む弱毒ウイルスが相対的に生き延びる方向になるのではないかと思っています。

 一網打尽にする方法から、悪い株を積極的にたたく対処療法(経口医薬品や抗体カクテル(モノボディー等の新たな人工抗体も)など)も慎重に導入し観察することが重要になっていると門外漢ながら思っています。

 従来の経口医薬品はワクチンに比べると有効性が少し低いようですが、日本政府は米国や英国ですでに承認されたメルクの経口治療薬モルヌピラビル(RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬)の年内の実用化を目指すとしていますし、ファイザーのリトナビル(タンパク質分解酵素阻害薬)も承認申請されているようです。

 残念ながらスイスのロッシュ社が開発した経口治療略AT-527の日本での実用化を中外製薬は断念したとのことですが、最近北海道大学が新型コロナウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを強力に阻害してウイルスの増殖を抑制する核酸代謝拮抗薬候補5-ヒドロキシメチルツベルシジン(HMTU)を見出しています3)ので、優れた医薬品の早急な開発を期待しています。

メルク社の経口医薬品と北大が発見した経口医薬品候補

経口治療薬が各国で発症患者に使用されることによって、毒性の強い株は次第に消える方向になり、悔しいのですが無症状株が優勢になっていくことを願っています。

参考)

1)The United Kingdom: WHO Coronavirus Disease (COVID-19) Dashboard With Vaccination Data | WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard With Vaccination Data

2)黒田誠:1. SARS-CoV-2ゲノミクスとサーベイランスへの応用、ウイルス、70(2)147-1542021

3)Kentaro Uemura et al: 5-Hydroxymethyltubercidin exhibits potent antiviral activity against flaviviruses and coronaviruses, including SARS-CoV-2., iScience, 24, 103120, Oct. 22, 2021

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