2021年12月1日水曜日

ブレークスルー感染の状況とオミクロン株予防に向けて(Herd prophylaxis)

    日本の新型コロナウイルス新規感染者数は順調に減少したまま推移していますが、世界的にはワクチンを2回接種した方も感染するブレークスルー感染が注目されるようになりました。

1214日からワクチン接種を開始した米国では、各州でブレークスルー感染の状況が報告され始めたようです。

オレゴン州のデータ1)によると20211010日から1120日までの感染者42,864人のうちの12,466人、すなわち29.1%がブレークスルー感染であったと報告されていました。

ワシントン州のデータ2)でも、ほぼ同様の傾向が得られているようです。

1227日からワクチン接種を開始したヨーロッパでは、10月に入ってから感染者数が増加しはじめ、オーストリアでは1122日から都市封鎖措置を行っているようです。

オーストリアに加え、ドイツやイタリアでも新規感染者が増え始めており、WHOのデータを見るとワクチン接種から約9ヵ月を経て、感染者(陽性者)が増加し始めていることが分かります。

日本は、217日にワクチン接種を開始しましたので、EUより2カ月半ほど遅く、もしヨーロッパでの感染増がブレークスルー感染によるものだとすると12月頃から感染増加が始まる状況に置かれていることになります。

でも、昨日(1130日)までは増加傾向が見られませんでしたので、日本では、マスクなどの感染予防行動が、功を奏しているいるのかも知れないと思いたくなります。

日本のワクチン接種率(2回済)は77%とされていますが、マスクの予防効果が85%とされていますので、全員がマスクをしている集団での予防効果は、ワクチン77 + マスク(100-77)0.85 92.6%)になり、集団免疫(Herd Immunity)の理論からすれば、かなり基本再生産数(R0)が高い変異株でも集団としての予防が可能になっているようにも見えます。

このようなワクチン+他の予防行動を合わせた集団感染予防行動(herd prophylaxis?)値は既に計算されているものと思われますが、話題になっていないように思います。

 でも本当は、マスクをしなくてもいい状況になって欲しいです。

 日本では、ナミビアの外交官がオミクロン株に感染していることが報道され話題になっていますが、いずれにしてもブースター接種を早める必要があるように思います。

 オミクロン株の変異箇所は32箇所とのことですが、レセプター結合ドメインの中でも、ACE2との結合に関わるレセプター結合モチーフ(RBM:アミノ酸番号437~508)にたくさんの変異が生じているようです3)



 オミクロン株はデルタ株より感染力が強いとすると、各国で対策を講じているものの、間もなくデルタ株のように世界中に分布する可能性が高いように感じます。

 感染力が強くても増殖力が弱く、人間慣れした「毒性の極めて弱い株」であることを願っています。

 

参考)

1)Oregon Health Authority:COVID-19 Breakthrough ReportNov.24, 2021

2)Washington State Department of HealthSARS-CoV-2 Vaccine Breakthrough Surveillance and Case Information Resource., Nov. 24, 2021

3)国立感染症研究所:SARS-CoV-2の変異株B1.1.529系統(オミクロン株)について(第2報)1128


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