筑波山など近隣の野山に出かけると、センニンソウやボタンヅルの花が目に止まります。これらはセンニンソウ属に分類されているようですが、学術名称はClematis(クレマチス)とのことです。
クレマチスは公園の花壇などで良く見かけますが、センニンソウやボタンヅルがクレマチスと近縁の植物だったとは知りませんでした。
センニンソウの花 |
センニンソウの種子 |
ボタンヅルの花 |
ボタンヅルの種子 |
でも、花を良く見ると確かにオシベとメシベが密集する様子が良く似ていますし、花が終わるとどれもメシベが白いヒゲのようになっているので、そうかなと感じます。
庭のクレマチスも確かに白いひげをたくさん付けていました。
庭のクレマチスの種子(9月7日) |
センニンソウやボタンヅルはキンポウゲ科の植物ですが、キンポウゲ科にはキンポウゲ属やイチリンソウ属、センニンソウ属などがあり、キンポウゲ属の学名はラナンキュラス(Ranunculus)、イチリンソウ属の学名はアネモネ(Anemone)、センニンソウ属の学名はクレマチス(Clematis)になっています。
ラナンキュラスやアネモネ、クレマチスはいずれも園芸用の花として有名で、花壇などで良く見かけますが、同じキンポウゲ科に属する花だとは全く知りませんでした。
ラナンキュラス属の野草には、良く見かけるウマノアシガタやタガラシなどが含まれるようです。
キンポウゲ科キンポウゲ属のウマノアシガタ |
アネモネ属の野草としてはキクザキイチゲやニリンソウ等があります。
イチリンソウ属のキクザキイチゲとニリンソウ |
これらキンポウゲ科の植物には、プロトアネモニン(Protoanemonin)と呼ばれる毒性の化合物が含有されているそうです。日本でもプロトアネモニンから生じるアネモニンが注目され、1920年代にキンポウゲ科のキツネノボタンを被験資料とした研究が行われていたようです(1)。
プロトアネモニンは配糖体のラナンキュリンとして含有されており、組織の傷害などに伴いβ-グルコシダーゼが作用することで生成し、それに触れると皮膚に水疱等(Dermatoses)ができるとのことです(2)。でも、プロトアネモニンは比較的不安定で、植物の乾燥等により二量体のアネモニンに変化し、そのアネモニンには毒性が無く薬理作用が注目され古くから研究が行われていたようです。
世界的には2,000年代に入ってから再認識され始め、アネモニンの薬理作用研究が順次行われているようです。
因みに、プロトアネモニンは葉に多いとの研究報告も発表されていました(3)。配糖体のラナンキュリンはアネモニンを経て、最終的にアネモニン酸へと変化する過程が解明されているようです。
センニンソウやボタンヅルに興味を持ち少し調べて見たところ、日本でも行われていた100年前の卓越した研究に出会うことができました。なじみ深い花や野草の不思議な成分について知ることができ感激しました。
参考)
1) 朝比奈泰彦:アネモニンの構造及合成(アネモニンの研究第5報)、薬学雑誌(乙号)455、1-13(1920)
2) Protoanemonin - an overview | ScienceDirect Topics
3) Fangming
Jin et al.: Protoanemonin Content Variation between Clematis spp.:Leaf,Stem,Root.,
Natural Product Communications, 8(2), 147-282(2013)
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