2019年5月30日木曜日

筑波連山の宝篋山への登山                    -ジョウカイボン科を始めて知ったー


526日に家族で筑波連山の一つ宝篋山(ほうきょうざん)に登山しました。標高461mですのでハイキングと言ったほうが良いのかも知れません。10時頃に登山者用の駐車場に着きましたが満車でした。晴天の日曜日でしたので、良く知られている筑波山は相当混雑しているものと予想し宝篋山を選択したのですが、70台程度収容できる駐車場は満車で驚きました。結構人気のある山のようです。
5分程度待っていたところ、運よく帰られる方がおられたので無事駐車でき、この6月で5歳になる娘孫連れでしたが、極楽寺コースを選択し約2時間30分で頂上に到着することができました。

最初の三分の一は沢沿いの登山道でしたので、暑かったにも関わらず快適な環境でした。また、後半の三分の一には道沿いに草苺が茂っていて、ほぼ苺の時期は終わったような状況でしたが、それでも数個食べることができ得をした気分になりました。下りは頻繁に休憩をとりましたので1時間30分程度かかりましたが、楽しい登山でした。健康維持のための適度な運動になりました。
登山の道すがら、昆虫や草花等の写真をたくさん撮りました。山道に入る前の田んぼ道で最初に遭遇した虫はナナホシテントウでした。葦の葉にびっしりと着いたアブラムシを相当食べたようで背中に糞が付着していました。クサキリの幼虫と思われる小さなバッタも見つけました。小さな体に不似合いな長い触覚が印象に残りました。
その後山道に入り、沢沿いに少し歩いたところでハナカミキリムシのような小さな虫を見つけました。後で調べたところ、アオジョウカイ(Themus  cyanipennis)という「ジョウカイボン科(Cantharidae)」に属する肉食の昆虫であるらしいことが分かりました。ジョウカイボンという昆虫もいるようですが、それは羽の色が褐色のようです。昆虫に「ジョウカイボン」というグループが存在することを始めて知りました。このアオジョウカイとよく似たやや小ぶりの虫の写真も撮りました。
沢沿いの道が木々に覆われやや暗くなった登山道では黒い虫が飛び交っていました。沢路は足場が限られるので虫を追いかけることはできませんでしたが、それでもようやく2枚の写真を撮りました。初めて見る羽の生えた虫でした。後で調べたところ「ヨツメトビケラ(Perissoneura paradoxa)」のようです。ピント外れの写真の虫には白い斑点がありませんが、斑点のある方が雄で、斑点のないのは雌のようです。このトビケラの幼虫は水中に網をつくり引っかかった小さな有機物を餌にして成長するとのことです。なかなか興味深いです。少し暗い岩場にはコジャノメ(Mycalesis francisca)も飛んでしました。


薄暗い谷沿いの道を通り過ぎ、やや開けた急坂の道の木の穴に日本アマガエル(Hyla japonica)が一匹陣取っていました。カメラを近づけても全く動きません。餌を飲み込み消化しているところだったのでしょうか。肌の緑色がとてもきれいでした。愛嬌があります。
頂上は結構広くて鎌倉時代の遺跡が再建され、さらにテレビ局等の通信施設が建っていました。その脇には椅子とテーブルが10セット程設置してあり登山者が休憩をとっていました。草花はあまりありませんでしたがヒメジョオンの花にはツマグロヒョウモンチョウが訪れていました。

帰り路ではダイミョウセセリと、谷川でイトトンボに出会いました。
宝篋山登山は初めてでしたが、谷川があるためなのでしょうか、これまで見たことのなかった昆虫に出会いました。たぶん、まだまだ多くの種類が居るものと思われます。   
 昆虫の他に、草花ではオオタツナミソウ(Scutellaria brachyaspica)の花がたくさんあり綺麗でした。また、小アジサイの花も見ることが出来ました。

宝篋山の登山ルートは6コースあるようですのでチャレンジしたいと思っています。


2019年5月24日金曜日

ヤブガラシの巻きヒゲは相手を選ぶ             -植物の自己認識システムの発見ー

つくばで桜の花を見学した際に草花の写真も撮りましたが、その中で、特に気になったのは、どこにでもある逞しいヤブガラシ(Cayratia japonica)です。 

ヤブガラシを見つけるとなぜか反射的に引っこ抜きたくなるからです。ヤブガラシはビンボウカズラ(貧乏葛)とも呼ばれているそうで、生命力が強いのでほったらかしておくと家の周りがビンボウカズラだらけになってしまうそうです。「雑草が好きです」といいながらも、真逆の反応をしてしまう相手がヤブガラシです。なお、ヤブガラシには2倍体と3倍体があるようで、葉が5葉の鳥足状複葉のみのものは2倍体、5葉に加えて7葉の葉が混在するものが3倍体であると言われているようなので、今回遭遇したヤブガラシは3倍体のようです。
でも最近このヤブガラシが注目されています。ヤブガラシ(藪枯らし)はその名前のとおり、草木に「巻きヒゲ」でとりついて繁茂し、陽ざしを遮ってしまうので、覆われた藪が枯れることからこの名前が付けられたそうですが、この覆うという作業を効率的に行うための自己(他)認識システムが備わっていることが明らかになったようです1)。自分の茎や葉には、巻きヒゲが絡みにくいとのことです。
 動物のみならず植物にも様々な相互作用が存在することが明らかになり、加害された害虫の天敵を誘引する香りを放出する「助けを呼ぶ植物」2)や、隣の植物が害虫に加害された際に放出される香りをキャッチして防御物質のファイトアレキシンを蓄積し始める「立ち聞きをする植物」3)などが有名になっていますが、今度は植物の自己(他)認識システムの発見です。人間のMHCMajor Histocompatibility Complex)のような仕組みにはかなわないにしても、すごいことだと思います。


このヤブガラシの自他認識システムの発見を契機に蔓性植物を研究素材とした植物の自他認識システムに関する研究が活発に行われ始めたようでそのメカニズムの解明を楽しみにしています。

人間が長い間育種して作成したキュウリや、最近注目され始めたニガウリ(ごうや)と野草に近いトケイソウを用いた研究では、自他認識はトケイソウで強く、次いでニガウリでも優位差が認められたものの、キュウリではそのシステムが失われていることが明らかにされています4)

この仕組みが植物に存在することを知らなかったため、長い育種の過程を経たキュウリではその能力が除去されてしまったものと予想されていますが、今後は新たな形質として活用できるようになるのかも知れません。最近では、ハダニに感染した植物の茎葉には巻きひげがからまないことや、サツマイモでは他の品種と混植するよりも自株同士のペアで栽培する方が収穫量が多くなることなども報告され始めています。
 それにしても、ヤブガラシが植物の基本的な能力の解明に貢献するとは思っていませんでしたのでヤブガラシに謝りたい気分です。それでもやっぱり見つけたら引っこ抜くことになると思いますが。

 もっとも、ヤブガラシの若芽はあく抜きをすれば食べることができるそうで、「ウレンボ(烏苺)」と呼ばれて中国では民間薬的に利用され、消炎や解毒作用が期待できるとのことで、昔から活用されていたようです。特に地下に張り巡らされた根茎は有望で、虫刺されの際には患部に生の根の汁をつけると良いとの記述が大学の薬学部における紹介にも記載されていました。

 ただ、有効成分に関する研究がほとんど行われていないようです。最近の報告では長寿遺伝子(サーチュイン)活性化作用を持つとされるレスベラトロールやその二量体、四量体が存在する5)とされていますので、今後は茎葉も注目されるかもしれません。

 どんな植物であっても「あなどれない」ということを身に染みて感じました。

参考)

1)Fukano Y., Yamawo A.*(equal contribution) (2015) Self-discrimination in the tendrils of the vine Cayratia japonica is mediated by physiological connection. Proceedings of the Royal Society B. 282: 20151379.
2)K.Shiojiri, et al.:Herbivore-Specific, Density-Dependent Induction of Plant Volatiles: Honest or “Cry Wolf” Signals?, Plos One, August 17, 2010, 5(8).
)松井健二ら:みどりの香りを介した生物間相互作用、におい・かおり環境学会誌、40(3)1662009
4)M. Sato, et al.:Self-discrimination in vine tendrils of different plant families. Plant signal Behav., 13(4), e1451710, (2018)
5)Boa L. et al.: Chem. Biodivers, Two new resveratrol tetramers isolated from Cayratia Japonica (Thunb.)Gagn. With strong inhibitory activity on fatty acid synthase and antioxidant activity.


2019年5月23日木曜日

桜の花をちぎるスズメ


渡り鳥ではありませんが、春の訪れとともに仙台市から牛久市に移りました。

つくば市観音台にある農林研究団地の桜が有名なので413日に孫娘とともに花見に出かけました。約1.5kmの桜並木が満開になり、風が吹くたびに花びらが飛び散り、両手で捕まえることができるほどなので孫娘と競争しました。

花びらは歩道に散らばり、蜘蛛の巣にもひっかかっていましたが、何故か5枚の花弁が着いた丸ごとの花がちぎられたように歩道やその植え込みにたくさん落ちていました。 

上を見上げるとスズメが桜の枝に止まっていました。他の鳥を探したところ、ムクドリも見つかりました。

どうもスズメが花をちぎる犯人のようです。スズメは、主に硬い穀物を食べるのでクチバシが太く短く、桜の花にクチバシを差し込んでも蜜腺に届かないため、花の裏側の花托を噛み切り蜜を舐めるようになったとのことです。子スズメは親の仕草を見て学習するのだそうです。

人間の居住区に棲む鳥としてはスズメの他に群れて騒ぐムクドリが有名ですが、その他にヒヨドリも良く見かけます。これら3種の鳥のクチバシの形を比較すると、スズメが最も太くて短くついでムクドリ、比較的長いクチバシを持つのがヒヨドリのようです。ヒヨドリは、クチバシが長いので花の蜜を上手に舐めることができ、クチバシには良く花粉が付いているようです。ムクドリは、かろうじて桜の蜜を舐めることもできるようですが、スズメと同様に花をちぎることもあるとのことです。

桜の木は人間が植えたものではありますが、スズメやムクドリ、ヒヨドリそれぞれが三者三様に、人間も加えると四者四様にこの時期を楽しんでいるということになります。




2019年5月22日水曜日

牛久沼かっぱの小径での出会い


3月27日に仙台市から茨城県牛久市への転入手続きをしました。でも、岩手でのささやかな家庭菜園は続けることにし、5月の連休中にとりあえず豆類を播きましたので、6月初めにその状況を確認しようと思っています。

今日は5月22日、昨日の雨も上がり晴天でしたので牛久沼の散策に出かけました。三日月橋生涯学習センターと牛久市観光アヤマ園から牛久沼に沿って歩く「牛久沼かっぱの小径コース」です。牛久市役所のパンフレットによれば、牛久駅からの往復で約9kmあり、男性だと501Kcalの消費エネルギーということになっています。おにぎり2個半程度です。

牛久駅からアヤメ園に向かう途中で、幸先よくツマグロヒョウモンチョウの雌に出会いました。一瞬の出会いでしたが民家の壁にとまったところを撮影することができました。今年初めての遭遇でした。


アヤメ園は初めての訪問でしたが、残念ながらアヤメの花はまだでしたので、畦道に咲いていたアヤメ科ニワゼキショウ属の赤と白のニワゼキショウの花やヘビイチゴの実、ジシバリの綿毛などの写真を撮りました。散策路には河童の座像と子供と犬の像もあり、のんびりと過ごせる雰囲気でした。


アヤメ園から牛久沼湖岸の散策路を歩いていたところ、一羽のヒメアカタテハがシロツメクサの花に止まっていました。近づくと飛び去りますが、何度も同じところに戻ってきたので、綺麗な写真を撮ることができました。一羽のベニシジミにも出会うことができました。


驚いたことに、シオカラトンボも飛んでいました。数回目撃しましたが、ようやく地面に止まったところを写すことができました。


草叢を良く見てみるとナナホシテントウも潜んでいました。遭遇したテントウ虫は2匹ともナナホシテントウでした。道沿いにクサノオウの花が綺麗に咲いていたので写真を撮りましたが、後で確認したところ、羽の生えた小さな赤い虫がその写真に写っていました。調べたところカメムシ目キジラミ科のベニキジラミのようです。


「かっぱの小径」には木道の部分がありますが、アヤマ園から歩き始め木道にさしかかったところで一羽のハクチョウに出会いました。突然、近くにいるのに気づいたのでかなりビックリしました。渡り鳥のはずですが牛久沼に居ついたのだろうかと思いましたが、後で調べたところ、牛久沼のハクチョウはコブハクチョウで渡り鳥ではないそうです。1966年に皇居から譲り受けたハクチョウの子孫のようです。手を伸ばすと触れそうになる程、近くまでよって来るのですが、機嫌が良いのか悪いのか判断できません。今回の散策は私一人だけで周りには誰もいませんでしたので、少し距離をとって眺めることにしました。このコブハクチョウは、この付近のアイドルなのかも知れません。


今回の散歩で、牛久沼の散策コースには草花や昆虫にたくさん出会えることが分かったので、天気の良い日にはまた来たいと思いました。アヤメ園には駐車場もあるのでありがたいです。