2020年9月28日月曜日

新型コロナウイルス感染に伴う致死率と今後の検査技術

   世界的に見ると新型コロナウイルスの感染者数はまだ減少し始めたと言えるような状況にはなく、ヨーロッパ諸国での感染者が再び増加し始めているようですが、3月から6月までの第一波の流行を経験し、医療技術等の向上によって、油断は禁物ですが、感染者がヨーロッパ等で再び増加傾向にあるものの死亡者が少ないので、明るい兆しが見えてきたように感じます。

期待するのは致死率の低下と高感度・簡易・安価検出技術の共同開発です。全くの素人ながら文献を探したところ、イギリスのケンブリッジ大学や米国のフロリダ大学、ジョンスホプキンス大学、スイスのジュネーブ大学、フランスのパスツール研究所の共同研究による45か国を対象にした報告が見つかりました1)

まだアクセプト前の論文で、ドイツのマックスプランク感染研や日本の感染研の名前がないのが残念ですが、応援したい気持ちになります。

15件の抗体検査による感染者数の推定値を加味し、さらにヨーロッパにおける高齢者施設での死亡者の多さ等を考慮して調整した年齢階層別の致死率は、中国武漢で算出された値よりかなり低い値になっていました。

この値を基に日本における新型コロナウイルス感染による致死率を計算したところ0.89%になりました。

 高齢者の致死率が高いので、日本の致死率が比較的高いのはそのせいですが、高齢化率が低いアフリカ諸国の中で、比較的人口の多い国を選定して致死率を計算したところ、人口が約2億人のナイジェリアでは新型コロナ感染による致死率が0.068となり、かなり低い値になりました。

 


   年齢階層別に見ると、60歳を超えると致死率が明らかに増加し、70歳以上では1%を上回りますが、産業を支えている49歳までのグループは0.1%に満たない状況にあるとのことなので、少し安堵します。

日本では高齢者に対するインフルエンザワクチン接種の支援を始めていますが、さらに知恵を絞って70歳以上への効果的な具体策を案出すれば、高齢化の先頭を走る国として注目されることになります。

技術的な面で期待しているのは、もちろんワクチンの早期実現ですが、感染者の検査の精度向上と簡便化、安価提供システムの構築も将来に向けた重要な課題だと感じています。

SARSMERS対策に威力を発揮したのは非接触型体温計の急速な普及だったと思います。各国の空港の映像が目に焼き付いています。

最近は、進化分子工学の発展が著しいようです。


名古屋大学が918日公開のScience Advancesに抗体様分子のモノボディ(monobody)を用いて、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する人工抗体の作成に成功したとを報告2)しています。抗体医薬の開発が目的で大きな前進だと思います。

また、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のレセプター結合ドメインをターゲットにした抗体様分子のアプタマーも海外で開発されています3)

これらの抗体様分子の開発は医薬品への応用が主目的になっていますが、今後は新型コロナウイルスのような病原体の検出技術への応用が世界的な協力体制の構築によって、将来に向け実施されることを期待しています。

参考)

1)Megan O’Driscoll et al.: Age-specific mortality and immunity patterns of ARAS-CoV-2 infection in 45 countries. medRxiv (

 https://doi.org/10.1101/2020.08.24.)

2)T. Kondo, et al.: Antibody-like proteins that capture and neutralize SARS-CoV-2. Sci. Adv., on September 18, 2020 http://advances.sciencemag.org/

 3)Yanling Song et al.: Discovery of Aptamers Targeting the Receptor-Binding Domain of SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein., Anal. Chem. 92(14), 9895-9900 (2020)

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