11月11日に筑波山に登りました。その際に鬼ヶ作林道で咲き終わった花が行儀よく揃い垂れさがっている黄色の花を見つけました。後で調べ、ハナニガナだろうと推定し11月18日のブログに記載してしまいましたが、その後範囲を広げて近縁の類似種を調べたところ、葉の形状等がヤクシソウに最も類似していることが分かりましたので、11月22日に修正しました。ヤクシソウは、アゼトウナ属に分類され染色体数は2n=10のようです。
筑波山の鬼ヶ作林道沿いに咲いていたヤクシソウ |
良く出かける朝日峠展望台付近でも11月に同じような花の写真を撮っていました。こちらは、ハナニガナのようです。
朝日峠展望台付近のハナニガナ(11月) |
牛久沼付近を散歩した際にも似たような花の写真を撮りましたが、良く見るとハナニガナよりも舌状花の数が多く、また葉の付き方や形状が異なっていました。こちらはオオジシバリのようです。
牛久沼付近のオオジシバリ(11月) |
ニガナとジシバリは、以前ニガナ属(Ixeris)に分類されていたようですが、ゲノム解析等を基本にした新分類法であるAPG体系(Angiosperm Phylogeny Group)が1998年に公表され、それ以降の数回の改定を経て、旧ニガナ属はニガナ属とタカサゴソウ属に2分割されたとのことです。
ニガナ属(Ixeridium)の基本染色体数はx=7で、その倍数に相当する染色体を持つニガナやシロニガナ、ハナニガナ、シロバナニガナ等がその仲間になるようです。一方、タカサゴソウ属(Ixeris)の基本染色体数はx=8で、その倍数に相当する染色体を持つジシバリやオオジシバリ、ノニガナ、タカサゴソウなどが属しているとのことです。
APG体系では、ほうれん草などが属することから良く知られているアカザ科もヒユ科の中に含まれることになっているとのことなので、今後植物の分類については新しい情報を注意深く調べる必要があるようです。
なお、ニガナ属で染色体が3倍体になっているニガナやハナニガナでは、受粉を伴う両性生殖による種子形成を経ることなく、アブラムシなどで良く知られている単為生殖(アポミキシス:apomixis)によって、増殖している1)とのことなので驚きました。
挿し木などによるクローン苗の生産は有名ですが、ニガナで確認されたような単為生殖を行う植物は熱帯の雑草によく見られるとのことで、この単為生殖特性を利用したクローン育種技術の開発研究が行われているとのことです2,3)。
植物の自家不和合性および種間不和合性の分子機構に関する研究もかなり進んでいるようです。
人間を含む動物に備わっている免疫への関心が高まっていますが、ニガナを調べているうちに、植物の自他識別メカニズム解明もかなり進んでいることが分かりました。興味を持ちました。
なお、ニガナのアルコール抽出物が唾液の分泌を促し、ドライマウスに有効かもしれないとする研究報告4)がありました。
マスクをすると、空気をたくさん吸おうとして口呼吸が増え、口腔内が乾燥する場合が多くなるとのことです。
でも「ニガナ」と呼ばれながら、その苦味成分についての研究報告がみつからないのが不思議です。インターネット等で探しているだけなので、たぶん見つけられないだけなのかも知れませんが、不思議な気がします。
ニガナにはフラボノイドのルテオリン配糖体等、セスキテルペンのイキセリン類(Ixerin)等、トリテルペノイドのサポニン類など多様な二次代謝成分が含まれている5)そうなので、それらの複合的な味として苦味を感じているのでしょうか。
参考)
1)西岡 泰三:ニガナの分化について(1)高山植物と海岸植物の雑種およびニ、三の問題、Bot. Mag. Tokyou, 73, 431-437(1960)
2)中川 仁:熱帯牧草におけるアポミクシス育種とアポミクシス遺伝子単離を目指した研究の現状、育種学研究、9,3-12(2007)
3)Gianni Barcaccia
et al.: Apomixis in plant reproduction: a novel perspective of an old dilemma.,
Plant Rprod. 26, 159-179(2013)
4)Kashi Raj Bhattaral
et al.: Ixeris dentata Extract Increase Salivary Secretion through the
Regulation of Endoplasimic Reticulum Stress in a Diabetes-Induced Xerostomia
Rat Model., Int. J. Mol. Sci., 2018, 18, 1029.
5)Kun-Wei Li et
al.: Ixeris sonchifolia a review of its traditional uses, chemical
constitutents, pharmacology and modern applications., Biomedicine &
Pharmacotherapy 125(2020)109869.
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