秋の牛久沼周辺を散歩すると、コキアやヨウシュヤマゴボウ、マツバギク、シロザなど赤く色づいた植物や花に出会います。これらはナデシコ目に属しベタレイン色素を含有する植物のようです。
秋の散歩で出会うナデシコ目の植物 |
タデ科に属するイヌタデもたくさん見かけます。タデ科もナデシコ目ですがその赤い花にはベタレインが無くてアントシアニンが存在しているとのことです。
ベタレインはナデシコ目に含有される色素と言われていますが、タデ科やナデシコ科(例:カーネーション)などのようにナデシコ目に属するものの、ベタレインを含まずアントシアニンを含有するグループも少しあるようです。
ベタレイン含有植物として最も有名なものは、ウクライナ料理として有名なボルシチの素材である赤ビートのように思います。
そこで、赤ビート根のベタレイン組成に関する研究報告1)を調べたところ、赤色色素のベタシアニンとしては、主要成分であるベタニンの他に立体異性体のイソベタニンと酸化型のネオベタニンが検出されるとのことです。また、ベタニンやイソベタニンは加熱により著しく減少するものの、その一部はネオベタニンに変化することも分かっているようです1)。
加熱処理では、ベタシアニジンを構成するベタラミン酸部位のカルボン酸の離脱も生じるとのことで、多様な成分が生成されるようです2)。
赤ビート根の主要なベタキサンチンはブルガキサンチンⅠで、やはり加熱により著しく分解されるとのことです。
ベタキサンチンはベタラミン酸にアミノ酸やアミンが結合した化合物ですが、その慣用名は化合物が検出された植物に因んで名づけられていたようです。
その後2013年度までに、31種類のベタキサンチンが同定・報告されているようです3)。
ベタレインを含有する花としては、前回記載したオシロイバナとともにマツバボタン(ポーチュラカ)に関する研究が数多く行われているようです。
マツバボタンには黄色、橙色、赤色、紫色の花がありますが、ベタシアニンは紫色の花に多く、ベタキサンチンは黄色の花に多く含有されているようです4)。
また、ベタキサンチンについては花色に関わらずベタラミン酸にプロリンが結合したインディカキサンチンが、次いでチロシンが結合したポーチュラカキサンチンⅡが多く存在し、合わせて19種類のベタキサンチン含量が報告4)されていました。
ベタレインに関する研究はアントシアニンやカロテノイドに比べてかなり遅れ、最近ようやく生合成の基本部分が解明され、さらに抗酸化性を始め生態調節機能も次々に見出されたことから急激に注目され始め、学術誌も「La Vie en Rose:Mol. Plant. 11, 7-22(2018)」(cf. Édith Piaf) や「The down of betalains: New Phytologist, 227, 914-929(2020)」と題して総説を掲載しています。興味を持ちました。
参考)
1)Lucia Aztatzi-Rugerio et al.: Analysis of the degradation of betanin
obtained from beetroot using Fourier transform infrared spectroscopy., J. Food
Sci. Tchnol. 2019, 5(8), 3677-3686.
2)Katarzyane Sutor-Swiezy et al: Dehydrogenation of Betacyanins in Heated Betalain-Rich Extracts of Red Beet (Beta vulgaris L.)., International Journal of Molecular Science, 2022, 23, 1245.
3)
Fernando gandia-Herrero et al.: Biosynthesis of betalains: Yellow and violet
plant pigments., Trend in Plant Science, 2013, 18(6), 334-343.
4)Aneta Sporna-Kucab et al.: Metabolite Profiling Analysis and the Correlation with Biological Activity of Betalain-Rich Portulaca grandiflora Hook. Extracts., Antioxidants, 2022, 11, 1654.
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