2021年3月12日金曜日

農道にたくさん生えたオオバコとその含有成分

   
 牛久運動公園では早咲きの桜が咲き始めました。菜の花も咲いています。

牛久運動公園の桜とその付近の菜の花(3月7日)

 種子に蟻の餌(エライオソーム)を付けて、蟻に種を運ばせる戦略をとっているホトケノザとヒメオドリコソウの争いはどちらが優占種になるのか、とても面白いと思いながら道端の土手に咲く花を眺めています。

ホトケノザとヒメオドリコソウ

牛久ではホトケノザはもうそろそろ枯れ始めていて、ヒメオドリコソウがあちこちで勢いよく伸びています。ホトケノザとヒメオドリコソウは最盛期がずれていているようで、これからはヒメオドリコソウが繁茂しそうです。

最近、良く目立つのはオオバコです。オオバコは、いま農道を占有しています。他の野草は踏まれるのが苦手のようですが、オオバコは農作業用の軽トラックが通る道でも、それに耐え密生しています。でも、春になると他の野草も元気に茂るので、葉が地面を這うオオバコは太陽の光を浴びることができなくなり、劣勢になるとのことです。踏まれる環境で優占種になるとのことなので、愛着を持ってしまいます。オオバコが車前草(シャゼンソウ)と呼ばれている訳が理解できました。

農道のオオバコ

耕した土地と固めた土地のどちらでオオバコが生存しやすいのかを調査した研究によると、やはり固めた土地の方が生育は良かったようです(1)。

オオバコ(Plantago asiatica)の種子は車前子(シャゼンシ)、花期の全草は車前草として日本薬局法に収載され、日本では生薬として利用されているとのことです。

 オオバコの種子には分子量が150万程度で(2)、L-アラビノースとD-キシロース、D-グルクロン酸、D-ガラクツロン酸が4:11:3:1の割合で含まれる粘質物質(プランターゴ・ミュシレージA)が存在することから、食物繊維源として有用であり、また薬理作用を示すイリドイドやフラボノイド等の存在も知られていますが、2008年に新規物質のグアニジン誘導体、プランタゴグアニジン酸(plantagoguanidinic acid)が発見され(3)、この物質が生薬である車前子の確認用物質として用いられるようになっているようです。

オオバコの葉にはイリドイドのアウクビンやフラボノイドのプランタギニンが含有されているものの、これらの含有量は0.01%程度と言われいるようです。一方、フェニルエタノイドのプランタマジョシド(Plantamajoside)は数パーセントも存在することから、この化合物が生薬である車前草の確認用物質として用いられているとのことです。

オオバコの近縁種であるヘラオオバコも良く見かけますが、オオバコとヘラオオバコでは含有成分が少し異なるようです。

アクテオシドやブランタマジョシドなとのフェニルエタノイド配糖体は、古くから有用な薬理作用を持つ化合物として注目されており、たくさんの研究報告が見つかりました。

また、フラボノイドのスクテラレインはかなり強いα-グルコシダーゼ阻害活性を示すとのことで(4)、血糖上昇抑制作用が期待されているようです。フラボノイドのA環に隣り合ったヒドロキシ基を3個有するフラボノイドとしてはバイカレイン(Bicalein)が有名ですが、フラボノイドの中でも様々な生理的機能性が報告されていることから、オオバコはフェニルエタノイドとフラボノイドの両面から生理的な機能性が期待できるように感じました。

 

参考)

1)松嶋賢一ら:オオバコは耕起した土壌で生育できるのか? 第222回作物学会講演会、講演要旨P2562006

2)Masashi Tomoda et al.: Plant Mucilages. XXIX. Isolation and Characterization of a Mucous Polysaccharide, “Plantago-mucilage A, ” from the Seeds of Plantago major var. asiatica., Chem. Pharm. Bull., 29(10), 2877-2884(1981)

3)Yukihiro Goda et al.: A guanidine derivative from seeds of Plantago asiatica., J. Nat. Med., 63, 58-60(2008)

4)Jichen Yang et al.: Comparative study of inhibition mechanisms of structurally different flavonoid compounds on α-glucosidase and synergistic effect with acarbose., Food Chem., Volume 347, 15 June 2021, 129056.

 

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