日本でも、新型コロナウイルスの変異株が感染の主流になりそうだといわれているので、変異株について勉強しました。
1,273個のアミノ酸が繋がったスパイクタンパク質の614番目のアミノ酸のアスパラギン酸(D)がグリシン(G)に変異したD614G変異株がイギリス変異株として最初に注目されましたが、このD614G変異株はレセプター結合ドメインの露出度が高くなりヒト細胞のACE2への結合率が高くなったことが分かっているようです(1)。
この変異は、レセプター結合ドメイン(アミノ酸番号319~514)に生じたものではなく、レセプター結合ドメインを支える土台の部分に生じていて、構造全体がルーズになり、3個ある結合ドメインの内の2個が表面に出やすくなり、結果的にACE2への結合率が上昇しているとのことです。
D614G変異は、日本で主流になりつつある変異株のイギリス変異株や、世界的に良く知られているブラジル変異株、南アフリカ変異株に共通して存在し、感染率を高めているようです。
同様にスパイクタンパク質のレセプター結合モチーフに生じたN501Yも501番目のアスパラギンがチロシンに変わったことで、ACE2との親和性が強くなり感染率が高まったようですが、この変異もイギリス変異株などにも共通して存在するようです。
一方、E484Kは抗体との結合力が弱まり免疫系からエスケープする可能性があると言われているようですが、これはブラジル変異株と南アフリカ変異株に共通しています。
最近は、E484KとN501YとともにP681H変異を持つフィリピン変異株も日本では検出されたようです。P681H変異は、イギリス変異株に見られる変異でもあるため注視されているようです(2)。
米国のCDCは上記イギリス変異株などの3種に加え、レセプター結合モチーフにL452R変異を持つカリフォルニア変異株2種を「懸念される変異株(VOC:Variants
of Concern)」として公表しています(3)。
このL452RはY453Fとともに、日本人などの東洋人の細胞性免疫に関わるHLA(Human Leukocyte Antigen(ヒト白血球抗原))-A24との親和性を低下させ、感染率を高める可能性があるとのことですので、空港などの水際での発見と隔離がかなり重要になるようです。
もしかしたら東洋人が西洋人に比べて新型コロナウイルスに感染しにくいのは、過去の感染経歴を反映したこのHLA-A24が東洋人に備わっていたからなのでしょうか。
でも最近の論文(4)を見ると、HLAタイプによる新型コロナウイルスへの感染のしやすさの予測と現実の感染状況は全く異なっているので、何が正解なのかが全く見えてきません。
免疫は本当に不思議です。
参考)
1) Leonid
Yurkovetskiy et al.: Structural and Functional Analysis of the D614G SARS-CoV-2
Spike Protein Variant, Cell, 183(3), 739-751(2020)
2)国立感染研究所:感染・伝搬性や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について(第7報)
3)米国CDC:SARS-CoV-2
Variant Classifications and Definitions
4)Ingrid
Fricke-Galinodo et al.: Genetics Insight for COVID-19 Susceptibility and
Severity: A Review., Front Immunol. 12:622176.doi: 10.3389/fimmu.r0re.622176.
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