2021年8月2日月曜日

ヒョウモンチョウ類の観察(産卵特性と生息地の違い )

    7月中旬の岩手への帰省は、畑仕事よりハイキング等の自然探索が中心になってしまいました。

八幡平山に行く時間はありませんでしたが、七時雨山麓や安比高原は風景の雄大さとともに、草花や蝶々などをゆっくり観察できたことから楽しい時間を過ごすことができました。

今回は、綺麗なクジャクチョウとの遭遇が最も強く印象に残りましたが、七時雨山麓や安比高原のヒョウモンチョウ類の多さにも驚きました。

ヒョウモンチョウ類の中では、一般的にミドリヒョウモンが最も多いと言われてるようですが、七時雨山麓ではウラギンヒョウモンが多かったように感じました。特にオスが多く、ほぼ終わりを迎えているノアザミの花に群れて蜜を吸っていました。メスは産卵のために幼虫の食草であるスミレ類の多い林にいるのでしょうか。

後で写真を整理したところ、安比高原の林に囲まれた山道でウラギンヒョウモンのメスの写真が撮れていました。前翅の先端にメスの性標と言われている白斑がありました。

安比高原の「ブナの駅」付近の「中の牧場」には、七時雨山麓よりさらに多くのヒョウモンチョウ類が飛んでいました。特に、ヨツバヒヨドリの花が好きなようで様々なヒョウモンチョウが集まっていました。

翅裏の模様の違いから、多くの種類がいると予想されましたが、ここではやはりミドリヒョウモンの数が多いように感じました。


ミドリヒョウモンの次に多い種類はオオウラギンスジヒョウモンのようです。オオウラギンスジヒョウモンのメスの性標も前翅の先端の白斑とのことです。


メスグロヒョウモンも「中の牧場」にいました。


クモガタヒョウモンは「奥の牧場」で観察することができました。

各個体について、翅の表面と裏面の写真を揃えて撮ることができると良かったのですが、今回はできませんでした。いつも、翅を広げたチャンスを捉えて写真を撮っていましたが、これからは翅を閉じている写真も撮るように心がけようと思っています。

日本に棲息するウラギンヒョウモンについては、サトウラギンヒョウモン、ヤマウラギンヒョウモン、ヒメウラギンヒョウモンの3種類に分類する方向になったようです,2が、外観からは判別しにくいようです。

ヒョウモンチョウ類の産卵場所や生息地等に関する研究報告2)も見つかりました。

七時雨山麓にウラギンヒョウモンが多かったのは、七時雨山麓はこれまで牧草地として利用されてきたことによるものと推察されます。

今回はツマグロヒョウモンを見かけませんでしたが、ツマグロヒョウモンは空き地(open land)が生息域で、しかも他のヒョウモンチョウ類と異なり幼虫の食草であるスミレ類に直接産卵する特性を持っているようです。街中の公園でツマグロヒョウモンを良く見かける理由が分かりました。

 最も数の多いミドリヒョウモンは生息域が森林なので、樹木に卵を産み付け、幼虫は樹木から降りて根元にあるスミレを食べて成虫になるようです。面白いです。

 以前から、散歩のたびにヒョウモンチョウ類の写真を撮っていましたが、一度にたくさんのヒョウモンチョウ類に遭遇することはありませんでしたので、種類についてはおざなりになっていました。

 以前に撮った写真も見返し整理してみたいと思いました。

 

参考)

1)新川 勉ら:昆虫と自然、分子系統による日本産ウラギンヒョウモン3種と形態、40(13)4-7(2005).

2)北原 曜ら:蝶と蛾、分子系統により分割された日本産ウラギンヒョウモン2型のケージペアリング実験―2型は別種であるー.66(3/4)83-892015

3)Hiroaki Shibata et al.: Off-host oviposition by two fritillary species (Nymphalidae, Argynninae) and its relation to egg predation., Trans. Lipid. Soc. Japan (蝶と蛾), 60(4), 268-276(

2010)

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