9月に10日間ほど岩手に行ってきました。「手抜き菜園」が草ぼうぼうになったためです。草刈り機による刈払いは、結構汗が出てキツイ作業なので1日に3時間程度にして、残りの時間は登山やハイキングに当てました。
畑は、細い花穂が少し紫色になったアキメヒシバと粟の原種とも言われるエノコログサに完全に覆われており、その中にマメ科のヤエナリが逞しく育っていました。一瞬、昨年植えた小豆がこぼれ種から生えたのかなと期待してしまいましたが、鞘が細いので、やはりヤエナリのようです。
雑草に覆われた畑の様子 |
コスモスの花が咲いた畑の草刈り跡 |
目についたそれぞれ数本のダイスと黒千石は残しましたが、あとは全て刈払いました。
刈り取った草の中から2匹のヒトリガが出てきました。幼虫は茶色の毛が密集しモフモフしている毛虫のようです。これまでに良く見かけました。
コンフリーの葉とヒトリガ |
翅を閉じたヒトリガ |
幼虫は広食性で、毒性を持つピロリジジンアルカロイドを体内に蓄えるとのことですが、畑にはピロリジジンアルカロイドを含有するコンフリー1)が生えていたので、これを食べていたのでしょうか。コンフリーは厚生労働省によって、含有食品の製造・販売の自粛と回収措置の実施が求められているようです。
昆虫が光に集まるメカニズムに関する論文2)の中で、ヒトリガについて取り上げていました。それによると、ヒトリガは、江戸時代にその名が付けられたようです。行燈の火を消す蛾を、「火取蛾」あるいは「火盗蛾」と書き「ヒトリガ」と呼んだとのことです。「飛んで火に入る夏の虫」という諺もありますが、ヒトリガは行燈に向かって飛び込み、火を消したのでしょうか。
正の走行性を持つ蛾は、太陽のコロナの光を反射した月に対して定位飛行をする性質を持つとのことです。人工の明かりを月と勘違いし、ぐるぐる飛び回り近づくことになります。
一方、ヒトリガの頭から口先の部分はまさに真っ赤で、さらに下翅は朱色で、火を連想させます。
蛾が火の上を舞う速水御舟の「炎舞」の美しさには圧倒されます。速水御舟は大正14年7月~9月に軽井沢で焚火に群がる蛾を写生・採集したとされていますが、残された克明な写生にこのヒトリガが含まれているのかどうか興味を持ちました。絵に描写された蛾は白色に輝いていて、ヒトリガではないように見えます。写生も公開されると昆虫少年も興味を持ちそうです。
京都山種美術館では、2021年9月9日~11月7日まで「速水御舟と吉田善彦―子弟による超絶技巧の競演―」を開催しており3)、重要文化財の「炎舞」も出展されているようです。
コロナ禍ですが、行ってみたいと思いました。
参考)
1)厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課: シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて|厚生労働省
(mhlw.go.jp)
2)弘中 満太郎等:昆虫が光に集まる多様なメカニズム、日本応用動物昆虫学会誌、8(2), 93-109(2014)
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