新型コロナウイルス新規陽性者数がかなり減っているようです。報道されている次の第6次感染が杞憂となり、このまま消滅して欲しいと願っています。
今回の日本における顕著な陽性者数減少は「ワクチン接種だけでは説明できない」と言われているようです。
ワクチン接種率を根拠とする集団免疫(herd immunity)が分かりやすかったことから有名になりましたが、一般市民の感染予防行動についても、集団免疫のような数理モデルがすでにあるように思いますので、それが分かりやすい用語として紹介されれば理解が進み、行動変容につながるように感じています。
また、市民の感染予防行動こそが陽性者数減少の大きな要因であることが理解されれば、将来に向け大きな教訓になるように思います。
日本感染症学会の「一般市民の皆様へ」1)で提言されている感染予防のためのマスク着用や適切な換気などの実施率を根拠とする、市民集団の感染予防力が数式化され、それが例えば集団感染予防行動(herd prophylaxis)のような用語で紹介され、限界実施率などが具体的に提示されれば、集団免疫のように情報が広まり、協力を得やすくなるように思っています。
不織布マスクの飛沫阻止率は85%程度と計算されているようですが2)、換気や三密低減に伴う実行再生産数(R1)の変動の他に、人口密度や社会構造・習慣の違いに伴う国や地域社会の基本再生産数(R0)の違いについて、今回の新型コロナウイルスに関する膨大なデータからのケーススタディがたくさんあるものと予想されますので、国や地域での感染率が異なる理由を分かりやすく紹介して頂きたいと思っています。
将来の感染予防に向け、集団感染予防行動の評価の見える化への期待が大きいです。
一方、各国でワクチンの接種が進められていますが、Our world
in data によると、ジブラルタル(人口約3万2千人)での10月15日現在の接種率が119%になっていましたので、既に3回目摂取に取り組んでいるようです。
でも、アフリカ諸国での接種率が低いのがやはり気になりますし、早くから接種を開始したイギリスや米国での2回接種率はそれぞれ66%、56%と頭打ちの状態なので、経済活動の再開は止むをえないとしても、ワクチンに加え市民の感染予防行動がまだまだ必要のように思われます。
最近、メルク社が新型コロナウイルス用の飲み薬モルヌピラビルを開発し、それをFDAが許可する方向で検討しているとのニュースが出ていました。
このモルヌピラビルは、RNAを構成するシトシンリボシド(シチジン)の類似化合物(アナログ)で、コロナウイルスのRNAポリメラーゼの酵素作用を阻害するようです。
メルク社のモルヌピラビルとRNAを構成するシチジンの構造 |
RNAの構成成分と類似した構造を持つ核酸塩基系の抗ウイルス薬としては、抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビルが有名です。アシクロビルはRNAを構成するグアニンリボシド(グアノシン)に類似した化合物で、口腔ヘルペスなど単純性ヘルペスウイルスにとても良く効くことから、開発は1974に成されましたが、様々な障壁を乗り越えめでたく1988年のノーベル生理学・医学賞に輝いています。
単純ヘルペスウイルス薬のアシクロビルとグアノシンの構造 |
モルヌピラビルの有効性は50%と公表されているようですが、これが新型コロナウイルスに良く効き、新型コロナウイルスが終息することを願っています。
10月15日の午前11時頃に上野駅構内で、80歳前後とおぼしき布袋を抱えた女性に声をかけられたので、列車のプラットホームナンバーでも質問されるのかと思ったところ「朝から何も食べていいないので弁当を買って欲しい」との依頼を受けました。長い人生の中で初めての経験でした。上野駅の炊き出しの行列は増えているのでしょうか。
経緯は何も聞いていませんが、2日経てもまだ心が痛みます。新型コロナウイルスによる経済活動の制限が影響しているのでしょうか。
参考)
1)日本感染症学会:一般市民の皆様へ〜かからないために、かかった時のために〜(2021年8月6日) (kansensho.or.jp)
2)Hiroshi
Ueki et al.:Effectiveness of face
masks in preventing airborne transmission of SARS-CoV-2., mSphere, 5(5), 637-20(2020)
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