時間があったので、オオニジュウヤホシテントウがどうしてナス科のジャガイモやトマト、ナス、イヌホウズキなどの葉を選択的に食べるのかについて調べてみました。
ニジュウヤホシテントウやオオニジュウヤホシテントウ等の草食性テントウムシはアフリカを起源として他の地域に分散し、アジアではウリ科を宿主として食性変異を遂げてきたようです。そのため、ナス科を食害するニジュウヤホシテントウとオオニジュウヤホシテントウは、今でもウリ科を象徴する苦味物質であるククルビタシン類に強く反応する特性を維持しているそうです(M. Abe, 2000)。
最近、オオニジュウヤホシテントウが何故ジャガイモやトマト、ナスなどのナス科を好んで食べるのかについての研究が行われていました。それによるとジャガイモやトマト、ナスの葉には、人間の必須脂肪酸でもあるリノール酸とリノレン酸のメチルエステルがあるからだということです1)。但し、ショ糖などの糖が共存することが必須とのことです。リノレン酸を摂食刺激因子とする昆虫などは結構存在するようで、アオスジアゲハやオニヒトデなどもそのようです。
ジャガイモに寄生して葉を食害するコロラドハムシの場合は、ポリフェノールの仲間でコーヒーの主要成分として良く知られているクロロゲン酸が摂食刺激物質になっているそうですので、同じジャガイモの葉を食べる昆虫でも、種類によって宿主の目印物質が異なることが分かります。
ニジュウヤホシテントウやオオニジュウヤホシテントウの場合は、ホオズキのフラボノイドであるルテオリン-7-グルコシドが摂食刺激因子になるようですので、フラボノイドに着目して見ると、ジャガイモの葉にはケルセチン配糖体が多く、ナスの葉にはケンフェロール配糖体が多いなどナス科横断的なフラボノイドは見当たりません。
そこで、ジャガイモやトマト、ナスにはグリコアルカロイドが特異的に存在しますので、やはりそれらが摂食刺激因子であるものと予測されますが、それらのグリコアルカロイドには反応しないそうです。グリコアルカロイドは、一般的にはウイルスやカビ、軟体動物等に毒性を示す物質として知られており、昆虫にも忌避作用等を示すとも言われています。オオニジュウヤホシテントウは、ナス科のグリコアルカロイドには反応しないとのことなので、それらの影響を受けないように進化し適応したものと予測されます。
コレステロールをソラニンやトマチンなどのグリコアルカロイドに変える鍵酵素は、コレステロールの側鎖の部分の二重結合を単結合に還元するSSR2(Sterol Side Chain Reductase 2)であることも最近明らかにされています3)ので、今後はグリコアルカロイドの含有量を制御することにも可能性が見えてきました。
1)M. Hori et al.: J. Appl.Entmol., 135, 121(2011)
2)Erik V. Petersson, et al.: PLos One, 8(12), 1(2013)
3)S. Sawai et al.: The Plant Cell, 28, 3763(2014)
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