2017年10月9日月曜日

ニジュウヤホシテントウの食性の不思議

 今年私が植えたジャガイモの葉は、オオニジュウヤホシテントウムシに散々食べられてしまいましたが、オオニジュウヤホシテントウはナスやトマトの葉も同様にどんどん食べることで知られていて、ナス科(Solanaceae)の天敵になっています。

今年は、ジャガイモの近くにナス科でトウガラシ属のシシトウも1本植えてみました。シシトウの葉や実もオオニジュウヤホシテントウはかじっているのですが、ジャガイモの葉のようにどんどん食べ進むことはありませんでした。おかげでシシトウは、茶色になったジャガイモ群の隣でほぼ健全に育ち、ジャガイモの姿が消えた畑で、今でも収穫しています。

ニジュウヤホシテントウの餌となる宿主について調べた報告1)を見ると、これらのテントウムシはトウガラシ属の植物を餌として認識してかじるものの、トウガラシ属の植物が含有している何らかの物質の影響で食べ進めることができなくなるとのことです。どんな物質なのだろうか。
  逆に、餌と認識し飛んで行って食べることのない白菜(アブラナ科アブラナ属)にニジュウヤホシテントウをのせてかじらせると、どんどん食べて正常に生育できるとのことで、ハクサイには宿主として認識させる何か(誘引する匂い?)が存在しないものの、摂食を拒否させる物質も存在せず栄養補給が可能になるということです。白菜は、八百屋さんで購入できるので、ニジュウヤホシテントウやオオニジュウヤホシテントウの簡便な人工飼料として使用できる訳です。

ところが、ジャスモン酸メチルという香り物質を白菜に与えると、ニジュウヤホシテントウはその白菜を食べなくなるとのことです。一方、トマトにジャスモン酸メチルを与えても影響はでないので、ジャスモン酸メチルによって白菜に特殊な物質が誘導生成され、それが摂食を阻害させるものと推定されているようです。


ジャスモン酸やそのメチル化体は、多くの植物に特殊な防御物質(resistance)を誘導させる鍵物質として有名で、植物ホルモンと呼ぶ研究グループもいます2)。ジャスモン酸はジャスミン茶で有名なジャスミンの香り成分で、私も好きな香りの一つですが、この香気成分は植物が昆虫による摂食傷害や病原菌の感染による障害を受けると合成され、防御機構関連遺伝子の発現を活性化するとのことです。


さらに、このジャスモン酸が植物体内でジャスモン酸メチルに変化すると揮発性が増し、植物の気孔から飛散される結果、周囲の植物もその影響を受け抵抗性物質を生産するようになるそうです。このように、ジャスモン酸やジャスモン酸メチルが回りまわって農薬の削減に貢献する可能性も考えられるとのことですので、興味深いです。
 
参考)
1)Shinogi T. et al.: Plant  Science 168, 1477-1485(2005
2)理化学研究所プレスリリース(2007319日)

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