2019年10月25日金曜日

セイタカアワダチソウのポリアセチレン化合物


10月も下旬になり、散歩の際に良く見かける草花はセイタカアワダチソウやカタバミなど数種になってしまいました。

セイタカアワダチソウは日本生態学会によって、日本の侵略的外来種ワースト100に選定されているとのことです。セイタカアワダチソウは北米原産で、ススキなどの在来種と競合することから侵略的外来種に選定されたようです。
セイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウは、根で阻害物質(他感作用物質)を合成することによって他の植物の生育や種子の発芽を抑制して優占種になるものの、やがて土壌中の阻害物質濃度が高くなり過ぎると自身の生育も阻害され淘汰されてしまうとのことです。

阻害物質の土壌への溶出は、枯葉を通じたものが多く、根や生葉からはあまり溶出されていないことも明らかになっているようです。

根で生産される他感作用物質はその分子内にアセチレンと同じ炭素の三重結合を3個保持する化合物で「シス-デヒドロマトリカリア酸メチルエステル(cis-DME)」であることが、日本農芸化学会の1969年大会で報告されています1)
セイタカアワダチソウの他感作用物質
シスーデヒドロマトリカリア酸メチルエステル(Cis-DME)

 多くのキク科植物は、このような炭素の三重結合を複数持つ「ポリアセチレン化合物(polyacetylenes)」あるいは「ポリイン化合物(Polyyne)」を含有しており、マトリカリア酸の「マトリカリア」はハーブのカモミールに似たキク科植物の学名(Matoricaria inodora)に因んだ名称のようです。植物に存在するポリアセチレン化合物は特有な紫外線吸収スペクトルを示すことが明らかになり、それらに関する研究は1930年以降ソ連や北欧の研究者によって活発に行われその成果が報告されています。
植物由来のポリアセチレン化合物の紫外線吸収スペクトル
最近は、ニンジンにも「ファルカリノール(falcarinol)」と呼ばれるポリアセチレン化合物が見いだされ2)、抗ガン作用や抗菌作用などの保健的な効果を示す可能性がある化合物として注目され始めているようです。
ニンジンのポリアセチレン化合物[ファルカリノール]
でも、もっと有名な「ポリアセチレン」化合物は、ノーベル化学賞を受賞された白川秀樹博士らによって開発された導電性高分子ということになります。高分子のポリアセチレンは共役二重結合体であり、植物から単離されたポリアセチレン化合物のような炭素の三重結合を持つ化合物ではありません。アセチレン分子が結合して生じた高分子なのでポリアセチレンと呼んでいる訳です。
ポリアセチレン
この高分子ポリアセチレンに電子を受け取るヨウ素などを添加すると二重結合のパイ電子が移動できるようになり導電性が飛躍的に向上するとのことです。この導電性高分子はタッチパネルとしても利用されるなど、その用途が広がっているようです。
ポリアセチレンへのヨウ素添加による導電性の飛躍的向上
 なお最近は宇宙ブームでもありますが、土星の衛星のタイタンの大気にジアセチレンが存在することが確認されたとのことです。
土星の衛星タイタンの大気に存在するジアセチレン
 三重結合を複数持つポリアセチレン化合物については、共役二重結合体と同様に導電性に関する研究も行われていますが、食品成分の一つとしてその有用性が注目され始めているので、面白いと感じています。

参考)
1)河津一儀ら:昭和44年日本農芸化学会大会講演要旨集、p1301969
2)Dawid C. et al.:Bioactive C17-Polyacetylenes in Carrots: Current Knowledge and Future Perspectives., J. Agric. Food Chem., 63(42), 9211-9222(2015)

2019年10月24日木曜日

セイタカアワダチソウの花とキタテハ、ヒメアカタテハ

 10月24日は晴天でしたので牛久沼まで散歩しました。

牛久沼周囲の散歩道にはセイタカアワダチソウがたくさん咲いていて、その花の周りを蝶々や蜂が飛び交っていました。セイタカアワダチソウの花には蜜が結構あり、カナダなどでは蜂蜜が売られているそうです。
牛久沼周辺の散歩(10月23日)
 これまでの牛久沼散歩では、ツマグロヒョウモンなどのヒョウモンチョウ類が結構目に付きましたが、今回は特にキタテハ(Polygonia c-aureum)が多く、セイタカアワダチソウの大きな群落がある場所では10頭以上が飛んでいたように思います。キタテハの幼虫はカナムグラを食草にするとのことですが、沼周辺にはカナムグラがたくさん生えているので、生息環境に恵まれているのでしょう。
キタテハ(10月23日)
 
 ヒメアカタテハもキタテハに交じり飛び交っていました。
ヒメアカタテハ(10月23日)
 これらタテハチョウに比べるとかなり小型ですが、最近あまり見かけることの少なかったベニシジミも飛んでいて、夏型のくすんだ色合いから鮮明な色合いに変わっていました。
ベニシジミ(10月23日)
 そろそろ蝶などの昆虫は見られなくなるのかなと思っていましたが、おもいがけず、晴天でポカポカした陽気の中で楽しく写真を撮ることができました。

 家に戻りスマホで歩数を確認したところ2万歩を超えていました。

2019年10月23日水曜日

地球の人口増加(毎日34万人誕生し14万人死亡)

 昨日10月22日は令和の大嘗祭でした。日本の国、日本人という意識を強く感じ心が揺れました。親、自分、子供、孫、そして未来へと続くという感情からなのだろうか。

10日前に襲来した台風19号によって80名以上の方が亡くなり、長野の千曲川や茨城の那珂川、福島県と宮城県の阿武隈川の氾濫などによる被害が甚大で、復旧のためには相当の期間が必要なようです。そのような事情からお祝いのパレートは11月10日に延期されました。被災された方々を思うと心が痛みます。

明るい話題は、旭化成におられた吉野さんが米国の研究者2名とともにノーベル化学賞を受賞されたことです。現在は「スマホ社会」ですが、吉野さんが開発されたリチウムイオン電池がこの「スマホ社会」の実現に大きく貢献したことが評価されたようです。この成果は、これからの社会において最も重要と目される「蓄電技術」にも活用されていますが、これを契機に電気やエネルギーを蓄え簡易に利用できる革新的な技術が生まれることを期待します。

 地球に降り注ぐ太陽エネルギーは莫大で、人間が利用しているエネルギーはその2%に満たないとも言われているようです。
 これからの世界は地球環境問題や食料問題、エネルギー問題と向き合い、克服し発展し続けることが求められているように思います。

サステーナブル(sastainable:持続的)が大事だとといわれつつも人口は増え続け、地球の人口は既に76億人を超え、毎日33.7万人が生まれ14.2万人が死亡していると予測されています。地球の人口増加は約20万人/日のようです。
世界の人口は現在76億人(人口時計:10月23日)
中国 13億9千万人 (世界人口の18.3%)
インド 13億1千万人 (世界人口の17.2%)
米国 3億3千万人 (世界人口の4.4%)



2019年10月12日土曜日

シリアゲムシの奇抜な配偶行動

  台風19号の襲来が予告されていましたが、10月11日に牛久市の遠山保全林・谷津田散策コースを歩きました。以前歩いた際に、遠山保全林の入り口でルリタテハに会いましたので、今回もと期待していました。
牛久市遠山保全林の入り口と出口

 でも残念ながら、今回は蝶々など目立った昆虫はいませんでした。その変わり、セイタカアワダチソウの花に白い物が付着していることに気づきました。よく見ると白い蛾の上に見たことのない昆虫が2匹乗っかっていました。後で調べたところ、ヤマトシリアゲでした。交尾していたようです。
ヤマトシリアゲのツガイ(10月11日)
 なぜ蛾の上に乗っかってシリアゲムシが交尾しているのか腑に落ちませんでした。というよりも、なぜこのような状況になっているのか全く理解できませんでした。

 あとで調べたころ、シリアゲムシのオスは餌を獲得するとフェロモンを放出してメスを呼び寄せ、メスに餌を提供する配偶行動を行う習性があるとのことでした。これを「婚姻贈呈」というようです。白い蛾を確保して、メスを呼び配偶行動をしていたところに私が直面したということのようです。ということは、餌を食べている方がメスということになります。
ヤマトシリアゲ(10月11日)
 シリアゲムシの配偶行動には、環境に応じて①餌の贈呈なしの交尾、②餌贈呈(婚姻贈呈)による交尾、③唾液を提供する交尾などがあるようですが、やはり②の成功率が高いとの事です1)。餌が充分にあり交尾が20分以上続くとオスは交尾を止め、餌とともに移動し別のメスを呼び寄せることもあるそうです。う~ん。

 今回は、遠山保全林を通り過ぎ谷津田を通り抜けるあたりから雨が降り始め、急いで帰ることになり、昆虫の写真はヤマトシリアゲのみになってしまいました。でも、ヤマトシリアゲの婚姻贈呈には驚かされました、インパクトがあり過ぎです。

 昆虫の世界は本当に多様です。「まして人間おや」かな?

 今日12日は東海・関東が台風19号の直撃を受けています。牛久市でも風と雨が家をたたき続けています。今22時、ゴーと風がうなり、家の屋根が飛ばされないかと心配しています。東日本大震災を仙台で経験しましたが、その後、日本では毎年自然災害が発生しています。耐え克服することで日本人は一つになり、その都度強くなっているように思います。
 東日本大震災の数か月後に、大きな被害を受けた南三陸の海沿いの道を車で通った際、一軒だけ被災を免れたガソリンスタンドがあり、営業していました。その入り口に「海のバカ」と書かれた木片が立てかけてありました。ホロリと涙がこぼれてしまった事を今も思い出します。それでも海とともに生きざるを得ない、嫌いになれないという思いを感じました。

参考)
1)佐藤 和樹ら:日本産シリアゲムシ9種の配偶行動の比較、信州大学環境科学年報、40号、64-712018

2019年10月11日金曜日

つくば宝篋山のアサギマダラ


10月9日につくば市の宝篋山に登りました。今回は北条大池付近の平沢駐車場に車を止め、山口コースⅠで登頂し、小田城コースを経て山口コースⅡで下山しました。丁度12時頃に頂上に着きましたが、晴天だったこともあり頂上には15人ほどの登山者が休憩をとっていて賑やかでした。
山口コースでの宝篋山登山
今回も草花や虫などを探しながら歩きましたが、山口コースⅠでは林から抜け出た明るい山道でフキバッタのように翅がなく、その上さらに尻尾がほとんど無いバッタ目の昆虫に出会いました。目が大きいのも特徴ですが名前は分かりません。ハナアブとコミスジにも会いました。
バッタ目昆虫   オオハナアブ    コミスジ
山口コースⅠから頂上に向かう道に出たところでアサギマダラに遭遇しました。アサギマダラは初めて見ましたので感激しました。山道で水を飲んでいたので近づくことが出来ました。
アサギマダラ(10月9日)

 その後、山頂に登り下山のため小田城コースを歩いたところ、さらに2匹のアサギマダラと遭遇し写真を撮ることができました。
アサギマダラ(10月9日)

頂上にはいつものとおり様々なチョウが飛んでいましたが、今回はウラナミシジミの写真を撮ることができました。
ウラナミシジミ(10月9日)
 もうすぐ紅葉の季節になります。虫の写真を撮るのは難しくなりますが、散歩は続けようと思っています。

2019年10月10日木曜日

牛久沼周辺のアオオサムシやアカボシゴマダラ


牛久沼周辺の道端にはカタバミがたくさん生えているので、107日の散歩ではカタバミを食草とし蟻と共生するヤマトシジミの幼虫あるいは少なくとも卵ぐらいは見つけたいと思っていました。でも、見つけることはできませんでした。ヤマトシジミはたくさん飛び回っているので必ず幼虫や卵もあるはずですが残念です。
メスに近づくヤマトシジミのオス(10月7日)
周りでは、イネ科植物を食草とするイチモンジセセリもたくさん飛んでいました。

ヤマトシジミの幼虫や卵を見つけようとしてカタバミをかき分け探していたところ、青色の少し大きな変わった甲虫を見つけました。後で調べたところ、アオオサムシのようです。急いで逃げていきました。
アオオサムシ(10月7日)
牛久沼から丘を登ると民家が続き、雲魚亭と河童の碑に到着しますがその駐車場の周囲にはイラクサがたくさん生えています。今回はそのイラクサの上にアカタテハが止まっていました。
アカタテハ(10月7日)
その後、前回記述したようにナガサキアゲハやウラギンシジミの写真を撮り、三日月橋を渡って桜並木を通り刈谷団地方面に向かいましたが、丁度団地に登る坂道の入り口で外来種として有名になっているアカボシゴマダラに遭遇しました。どうやらエノキの葉に産卵していたようです。
エノキの葉に産卵したアカボシゴマダラ
このアカボシゴマダラは翅の裾がちぎれ、左側の赤い斑点がなくなっていました。良く見るとお尻のあたりに小さな卵が産み落とされています。しばらく、このエゴノキの小枝を歩き回りやがてフワリと飛んでいったので、卵を探しましたが他には見当たりませんでした。

結構ボロボロになったアカボシゴマダラでしたので、写真に写った1個の卵が最後の産卵だったのでしょうか。外来種の卵ですがそのままにして帰りました。

2019年10月9日水曜日

牛久沼周辺のナガサキアゲハ

 107日に牛久沼周辺を散歩しました。「牛久沼かっぱの小径コース」と「三日月橋さくら散策コース」です。
牛久沼周辺の散歩コース
 いつもどおり牛久駅からアヤメ園まで歩き、さらに牛久沼湖畔を通って雲魚亭に向かい、そこからアヤメ園を経て三日月橋を渡り、さくら散策コースの桜並木を歩き刈谷団地を経て牛久駅に戻るコースです。10km程になります。

今回は、雲魚亭からアヤメ園に行く途中の田んぼ道でナガサキアゲハに遭遇しました。
ナガサキアゲハ(10月 7日)
田んぼの畔にヒガンバナが綺麗に揃って咲いていたので、写真を撮り通り過ぎたところ、大きな黒い蝶が飛んできてそのヒガンバナに止まりました。慌てて戻ったところ全部で3匹いました。大きな翅で羽ばたきながら花から花に飛び移る様子は本当に優雅で豪快で感激しました。写真を撮りながらしばらく観察しましたが5分ほどで高く舞い上がり、揃って林の方に飛んで行きました。
ヒガンバナに飛んできたナガサキアゲハ
ナガサキアゲハ

そこからアヤメ園に向かう途中では、ウラギンシジミが一匹飛んでいたので写真を撮りましたが、すぐその後もう一匹が何故かカメラの方に飛んできて、最初私の手に止まり次にカメラに止まりました。とっさに捕まえ良く見たところ翅に傷のある老蝶でした。勢いよく胸のあたりを捕まえてしまったので、放しても飛び立てないようでした。すまないと思いましたが後の祭りです。心に残ってしまいました。
3頭のウラギンシジミ
(中央は手に止まった老蝶)
  でもその後、桜並木の道で元気なウラギンシジミが足元に止まってくれました。残念ながら翅を広げることなく飛んで行きましたが、なんだかホットした気分になりました。

107日は、今年のノーベル賞発表の初日でした。

2019年のノーベル医学・生理学賞は「細胞の低酸素応答の解明」を行った3名に与えられました。素晴らしい研究ですが、残念ながら日本人研究者は該当しませんでした。でもこの細胞の低酸素応答によって増加する鍵物質の「エリスロポエチン」は、1977年に当時熊本大学医学部におられた宮家隆次先生によって世界で初めて精製され、その後研究が大きく進展したようです。

  宮家先生は再生不良性貧血患者の協力を得て約2.5トンの尿を採取し、日本で粗精製品を調製した後、設備の整ったシカゴ大学での精製にほとんど休日を取らずに18ヵ月チャレンジし、8mgのエリスロポエチンの取得に成功されたとのことです1)。
  研究を指導されたシカゴ大学のゴールドワッサー(Eugene Goldwasser)教授は2010年に逝去されていますが、エリスロポエチン研究に25年携わられたとのことです。
  この精製品を用いてエリスロポエチンの部分的一次構造が解明され、それを手掛かりに遺伝子用のプローブが作製され1985年にエリスロポエチン遺伝子が吊り上げられたとのことです。これによって現在のような研究の発展が可能になった訳です2、3)。

宮家先生やEugene Goldwasser先生のように、信じて黙々と働く生き方に人間としての魅力を強く感じました。

参考)
1)Takaji Miyake et al. : Purification of Human Erythropoietin, JBC, 252(15), 5558-5564 (1977)
2)JBC Centennial 1905-2005, The purification of Erythropoietin by Eugene Goldwasser., JBC, 286(6), e2-e3(2011)
3)Wojchowski D. : Eugene Goldwasser (1922-2010), Nature, 470(7323), 40(2011)