カテキンは、お茶の抗酸化成分として日本では有名ですが、オレウロペインはオリーブオイルの抗酸化成分としてヨーロッパにおいて有名で、欧州食品安全機関(EFSA)は「オリーブオイルの抗酸化成分は、血液の脂質を酸化ストレスから防護する(protection of blood lipids from
oxidative stress)」とのヘルスクレームを許可しています。オリーブオイルを販売する際に、ヨーロッパではこの文言を商品に表示できる訳です1)。
オレウロペインは、カテキンと同様ポリフェノールの一種ですが、もう一つの「イリドイド」という顔も持っています。イリドイドにポリフェノールが結合しています。その上、オレウロペインはイリドイド部位に糖(グルコース)が結合した「配糖体」になっています。すなわち、オレウロペインは、ポリフェノール
+ イリドイト + グルコースから成っているいる訳です。
このイリドイト構造がイボタの葉を食べようとする昆虫に対する抵抗成分としての役割を果たしていることが明らかにされています2)。昆虫が、イボタの葉をかじると細胞が破壊され、通常は液胞などに局在しているオレウロペインに細胞内の酵素がアタックできる状態になり、イリドイド部位に結合したグルコースが酵素によって遊離されるとのことです。
グルコースが外れるとイリドイドの環構造が不安定になり開裂し、2個のアルデヒドが生じ、このアルデヒドが細胞内のタンパク質のリジンと結合して、リジンは栄養素としての機能を失うことになるということです。リジンは、動物にとって必須アミノ酸なので、昆虫はリジン不足に陥り成長不良になります。すなわち、昆虫はイボタの葉を餌として生育できないことになります。
では、イボタ蛾のようにイボタの葉を食べる昆虫は、なぜ生育可能なのでしょうか。実は、イボタ蛾の唾液にはグリシンが存在し、そのグリシンがリシンの代わりにアルデヒドと結合し、イボタの狙いであるリジン不足を阻止するとのことです。当然イボタ蛾は、未反応のオレウロペインも食べこれを体中に保持することになります。イボタ蛾のあの奇妙な際立つ姿は、テントウムシと同様に「食べるとひどい目にあうぞ」という警告のようです。
1)EU Register on nutrition and health claims, “Olive oil” p42
2)K. Konno, et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 9159(1999)
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