2017年7月21日金曜日

イボタ蛾カップルの写真

 昆虫の蝋物質としてはイボタ蝋(ワックス)が有名なようです。樹木のイボタの幹や枝を蝋物質が厚く覆い真っ白になっている状態を良く見かけるとのことです。たぶん、私も見たことがあるのだと思いますが記憶にありません。茶色のガム状物質(多糖類)が身近な樹木の傷口についているのは、よく見て覚えています。

 この蝋を生産する昆虫がイボタロウムシ(Ericerus pela)の雄で、ライラックも寄主になるとのことです。現在日本で販売されている「イボタ蝋:伊保田蝋」のほとんどは中国産のようですが、家具の艶出し効果などで高く評価され、高値(5,000/90g程度)で販売されていました。

 残念ながら、イボタロウムシとはまだ対面していませんが、616日月山のブナ林(山形県立自然博物園)でイボタ蛾に出合い写真を撮っていることに気づきました。ブナ林にはわずかに残雪もありましたが、地元の小学生も課外授業で来ており、にぎやかな散策でした。小学生のための散策ガイドが突然「踏まないで」と指さした先にイボタ蛾がいました。見たこともない不気味な四つの眼がにらんでいます。なんだこれは!とその時思い、とっさに写真を撮りました。ハゴロモの蝋に感心し、イボタ蝋にたどり着くまで気づきませんでした。イボタ蛾の交尾の写真は珍しいのかも知れません。お蔵入りするところでした。


 昆虫は体表に蝋物質が存在し、その組成は種によって異なると言われています。体表の蝋物質にまつわる話題としては、サムライ蟻が最もユニークのようです。サムライ蟻は本来蝋物質を持たず、他の種の蟻の卵を自分の巣に持ち帰り、これを働き蟻として一生働かせるのですが、その際にその働き蟻の蝋物質を自分の体に塗り一体化するのだそうです。

植物の葉の表面にもクチクラと呼ばれる蝋物質が存在します。昆虫はこの蝋物質を手掛かりにして寄主を確認するとのことで1)ので、単純な高級アルコールと高級脂肪酸のエステルである蝋物質ですが、昆虫と植物との相互作用に深く関わっていることが分かりました。

参考)
1)T. Adati et al.: Appl. Entmol. Zool., 28(3), 319(1993)

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