2021年6月3日木曜日

モンシロチョウとモンキチョウの棲み分け

   天気のいい日は牛久沼方面へも散歩に出かけます。最近、アヤメ苑のアヤメが咲き始めたので見学者も良く見かけるようになりました。

道端の草も変わり始めています。5月下旬からドクダミが目立つようになりました。オオバコの花穂も伸びて花が咲いています。ドクダミの地上部を乾燥させたドクダミ茶があるそうです。一方、オオバコの実には粘稠(ねんちょう()、ねんちゅう(正))(1)な多糖類が存在し「サイリウム種皮」として健康食品等に利用されているのようなので、ともに興味を持ちました。

散歩中にたくさんのモンシロチョウを見かけるようになりました。モンシロチョウは結構敏感で、近づくと直ぐに飛び立つので、写真を撮りにくいです。

日の当たる平野に多いモンシロチョウ

モンシロチョウによく似た白い蝶の「スジグロシロチョウ」も飛んでいるので、良く観察しないと間違うようです。

林沿いなど日陰のある所に多いスジグロシロチョウ

モンシロチョウもスジグロシロチョウもアブラナ科植物に産卵するとのことですが、モンシロチョウはキャベツや大根など農地の栽培品種を好み、スジグロシロチョウの幼虫は大根なども食草にすることができるものの、むしろタネツケバナやイヌガラシ、アブラナなど山間部のアブラナ科植物に産卵するとのことです。

その結果、モンシロチョウは日の当たる農地付近を飛び回り、スジグロシロチョウは林道沿いや渓流沿いなど、むしろ日陰のある所で良く見かけるとのことです。

今回は、牛久城址の林沿いの草地でスジグロシロチョウに遭遇しました。

なお、モンシロチョウの産卵刺激因子はブロッコリーやキャベツ等に多いグルコシノレート化合物類のグルコブラシシンンであることが既に解明されているようです(2)。菜種種子から調製する辛子の辛味物質であるシニグリンもグルコシノレート化合物ですが、産卵刺激作用はグルコブラシシンの1/1000程度とのことです。

モンキチョウも良く見かけるようになりました。いままであまり気にしていませんでしたが、モンキチョウの眼の色は緑色でした。

眼が緑色のモンキチョウ

モンキチョウと良く見間違えるのは「キタキチョウ」です。

春早くから飛び回るキタキチョウ

モンキチョウの幼虫の食草はマメ科植物で、大豆の害虫とのことです。知りませんでした。野外では主にシロツメクサやアカツメクサ、カラスノエンドウ、ハギ類などに産卵しているようです(3)。

一方、キタキチョウの幼虫の食草は、ネムノキやハギ類、ハリエンジュ、ジャケツイバラなどとのことです。

ネムノキからキタキチョウの産卵刺激因子としてD-ピニトールが同定されていました(4)。D-ピニトールは大豆等のマメ科植物に存在し、グルコールトランスポーターの亢進作用を示すため、ヒトでは抗糖尿病効果が期待されているようです。

モンシロチョウは山間部で見かけることはあまりありませんが、キタキチョウは春早くから山間部で良く目撃します。

モンキチョウとキタキチョウの関係は、モンシロチョウとスジグロシロチョウとの関係に似ているので面白いです。

 

参考)

(1)大本晃博裕:気になる言葉、北海道医報、第1199号、p30(平成3081日)

(2)Traynier RM, et al.: Potent natural egg-laying stimulant for butterfly Pieris rapae., J. Chem. Ecol., 17(7), 1371-1380(1991)

(3)八谷和彦:モンキチョウの食草の実験的検討、蝶と蛾、28(2)、46-54(1977)

(4)Shin-ya Mukae et al.: D-Pinitol in Fabaceae: an Oviposition Stimulant for the Common Grass Yellow Butterfly, Eurema mandarina., J. Chem. Ecol., 42(11), 1122-1129 (2016)

 

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