2021年3月26日金曜日

雪入ふれあいの里公園付近でテングチョウに遭遇

  324日に茨城県立青年の家から雪入りふれあいの里公園を経て剣ヶ峰に登り、そこから浅間山までハイキングしました。晴天でしたので、青木葉峠付近から筑波山がきれいに見えました。

秋葉峠付近からの筑波山の眺望(3月24日)

青年の家から雪入りふれあいの里公園に向かう「林道雪入り沢線」で、テングチョウの写真を撮ることができました。テングチョウと初めて遭遇しました。

テングチョウ(3月24日)


でも、見つけた際には翅を半ば広げた状態で、アカタテハに良く似ていたのでアカタテハだと勘違いしてしまいました。自宅に戻って写真を整理し、初めてテングチョウだったことが分かりました。残念です。油断していました。また是非会いたいと思っています。

きれいな色のアカタテハにも会いましたが、越冬成虫なので翅が大きく欠けていました。近くにキタテハも飛んでいました。

アカタテハ(3月24日)

雪入りふれあいの里から剣ヶ峰への登山道はかなり急峻でした。胸突き坂の連続で、沢山汗をかきました。汗をぬぐいながら頂上付近で見たニオイタチツボスミレ(Viola obtusa)の花の濃い紫がとても印象的でした。

ニオイタチツボスミレとタチツボスミレ

スミレ属(Violaceae)を代表する紫色の色素はアントシアニンの仲間で、ビオラニン(Violanin)というそうです。このビオラニンは野菜のナスの紫色の色素として良く知られているナスニン(Nasunin)と同じもののようです。ビオラ(Viola)からバイオレットになった訳です。知りませんでした。

ビオラ属のアントシアニン(デルフィニジン配糖体)

剣ヶ峰から雪入山に向かう縦走コースではヒオドシチョウが飛んでいました。

キタテハとヒオドシチョウ(3月24日)

また、浅間山付近の山道ではミヤマセセリがたくさん飛んでいました。

ミヤマセセリ(3月24日)

桜や草花が咲き、昆虫も活動し始めましたので嬉しいです。楽しみがいっぱいです。

剣ヶ峰への登山道では親子と思われる4名の方とすれ違いました。また、浅間山付近では三石森林公園に向かう3名の高齢者グループに会いましたが、いいハイキングコースでね~と言っていました。遠くから来られた方々のようです。

剣ヶ峰から浅間山への縦走コースで、快適なハイキングが楽しめました。

2021年3月19日金曜日

早春の小町山と朝日峠の昆虫・ヒオドシチョウに会いました

   318日に土浦市の小町山に登り朝日峠までハイキングしました。登山道のあちこちにスミレの花が咲いていました。

小町山登山と朝日峠へのハイキング

  朝日峠のコブシの花とボケの花が青空に映えていて、とても印象に残りました。

朝日峠のスミレの花とボケの花

小町山の頂上や朝日峠周辺で、たびたびヒオドシチョウ(緋縅蝶)に遭遇しました。ヒオドシチョウを間近に見たのは初めてでしたが、ネット等でキタテハやシータテハ、エルタテハなどとともに写真を良く見ていましたので、直ぐに分かりました。

ヒオドシチョウ(3月18日)

高齢者ながら、周りに人がいないのを確認し、結構夢中で追いかけてしまいました。

越冬した早春のヒオドシチョウ4個体(小町山~朝日峠

ヒオドシチョウはエノキの葉を食草とし、越冬成虫が早春に卵を産み付け6月に羽化するようです。出会ったヒオドシチョウは越冬成虫なので、翅が欠けている個体もいました。名前から鎧を着た落ち武者を想像しました。

朝日峠の万葉の道ではミヤマセセリを見つけました。ミヤマセセリは岩手で一度出会ったことがあります。黄色の斑紋が明瞭なので雌の個体のようです。ベニシジミも数匹飛んでいました。結構綺麗なベニシジミでした。

ミヤマセセリ 雌(3月18日)

ベニシジミ(3月18日)


 クサイチゴの花には、ニッポンヒゲナガハナバチと思われるハナバチが止まり蜜をすっていました。このハナバチは地面に巣をつくり、春のこの時期にのみ姿を現すとのことです。

クサイチゴ

クサイチゴの蜜を吸うニッポンヒゲナガハナバチ(3月18日)

 桜の開花も間近のようです。

しばらくは人出の少ない山間部を散歩したいと思っています。

2021年3月17日水曜日

春らしい陽気の中でウラギンシジミ、ムラサキシジミ、キタテハに遭遇

   今日17日も牛久沼へ出かけました。孫の卒園遠足が「牛久あやめ苑」だったので、遠目からその様子を見るためです。晴天で風もなく穏やかな日でしたが、往復6㎞を脱落者もなく、無事に全員完歩したようです。

ついでに蝶々を探したところ、今日はムラサキシジミとウラギンシジミが同じ場所に止まっていました。ウラギンシジミは昨日出会った個体かも知れません。穏やかな日和でしたので、少し翅を広げてくれました。

牛久沼周辺のシジミチョウ(3月17日)

ウラギンシジミ(雌)

ムラサキシジミは珍しく数匹飛んでいましたが、翅を広げてくれませんでした。

ムラサキシジミ

ムラサキシジミと異なる一匹のお腹の大きなシジミチョウもいました。コツバメでしょうか。オモテ翅を見せることなく飛んで行ってしまいました。残念です。これまで何度も来た場所ですが、今回初めて見ました。

ムラサキシジミと異なるシジミチョウ コツバメ?

自宅に戻るとハナニラの花の周りをキタテハが飛び回っていました。3匹が同時に飛び回るのは初めてのように思います。

ハナニラの花に止まった3匹のキタテハ

キタテハ

蝶々も活動を開始したようです。

 

2021年3月16日火曜日

アフリカと南米の致死率の差は10倍 なぜなのか

   今日は牛久沼まで散歩しました。朝方は曇っていましたが次第に晴れ模様になり、散歩中は20℃とボカボカ日和でした。

牛久沼はのどかで、沖に釣り船が一艘いました。風の強い日はウインドサーフィンを楽しむ方々がいてにぎやかなのですが、今日は誰もいません。

牛久沼の風景(3月16日)

 もうあちこちで草花が咲き始めています。オオイヌノフグリやホトケノザ、ヒメオドリコソウはかなり前から咲いていますが、最近はあちこちでハナニラが綺麗に咲いています。また、カラスノエンドウの花も見かけるようになりました。

カラスノエンドウとハナニラ

 散歩では、いつも昆虫を気にしています。今日は、オオイヌノフグリの花に小さなナミホシヒラタアブが訪れていました。

 林沿いの道には、天気がいいとムラサキシジミがいるので、今日もゆっくりと注意しながら歩きましたが、運よくウラギンシジミを見つけました。近づいても飛ぶ気配はなく、じっとして翅も開いてくれません。オモテの翅色を良く見ると黒いので、メスのようです。葉っぱでつついたら近くの葉っぱに異動しました。もうすぐ春なので、これから元気に飛び回ると思います。

越冬中のウラギンシジミ

 歩く前方の道にキタテハが飛んできました。近づいてよく見ようとしましたが、遠くに飛んで行ってしまいました。今日は、あちこちでキタテハを見かけましたが、どれも遠くに飛んでいきました。

目の前に飛んできたキタテハ

 コロナはいつも気にしています。南米とアフリカで何故これほどコロナの被害が違うのか不思議に思っています。コロナによる死者数が約10倍違います。なぜなのでしょうか。もちろん東アジア諸国の死者率も低いのですが。

もしかしたらマラリアなどへの対策として、アフリカはイベルメクチンを利用していて、南米はヒドロキシクロロキンを使うので、そのちがいが影響しているのではないかなど、さまざまな妄想がちらつきます。新型コロナウイルスに対するクロロキンやヒドロキシクロロキン(1)とイベルメクチン(2)の細胞を用いた増殖抑制効果に関する研究報告がありました。

でも、南米の牛の肉からイベルメクチンが検出されたことが問題になっているようなので、単純に常備薬の違いが鍵だったなどとはならないのかもしれません。

欧米や南アメリカでの致死率の高さと、東アジアとアフリカでの致死率の低さに大勢が気付いている訳なので、専門の方々の見解を知りたいとおもってしまいます。  

Original Antigenic Sin(3)も気になります。

参考)

1)Stuart Weston et al.: Broad Anti-coronavirus Activity of Food and Drug Administration-Approved Drugs against SARS-CoV-2 In Vitro and SARS-CoV In Vivo., J. Virology, 94(21), e01218-20(2020).

2)Leon Caly et al.: The FDA-approved drug ivermectin inhibits the replication of SARS-C0V-2 in vitro. Antiviral Research, 178(2020) 104780.

3)Aydillo T. et al.: Antibody immunological Imprinting on COVID-19 Patients., medRxiv (doi.org/10.1101/2020.10.14.20212662)


2021年3月12日金曜日

農道にたくさん生えたオオバコとその含有成分

   
 牛久運動公園では早咲きの桜が咲き始めました。菜の花も咲いています。

牛久運動公園の桜とその付近の菜の花(3月7日)

 種子に蟻の餌(エライオソーム)を付けて、蟻に種を運ばせる戦略をとっているホトケノザとヒメオドリコソウの争いはどちらが優占種になるのか、とても面白いと思いながら道端の土手に咲く花を眺めています。

ホトケノザとヒメオドリコソウ

牛久ではホトケノザはもうそろそろ枯れ始めていて、ヒメオドリコソウがあちこちで勢いよく伸びています。ホトケノザとヒメオドリコソウは最盛期がずれていているようで、これからはヒメオドリコソウが繁茂しそうです。

最近、良く目立つのはオオバコです。オオバコは、いま農道を占有しています。他の野草は踏まれるのが苦手のようですが、オオバコは農作業用の軽トラックが通る道でも、それに耐え密生しています。でも、春になると他の野草も元気に茂るので、葉が地面を這うオオバコは太陽の光を浴びることができなくなり、劣勢になるとのことです。踏まれる環境で優占種になるとのことなので、愛着を持ってしまいます。オオバコが車前草(シャゼンソウ)と呼ばれている訳が理解できました。

農道のオオバコ

耕した土地と固めた土地のどちらでオオバコが生存しやすいのかを調査した研究によると、やはり固めた土地の方が生育は良かったようです(1)。

オオバコ(Plantago asiatica)の種子は車前子(シャゼンシ)、花期の全草は車前草として日本薬局法に収載され、日本では生薬として利用されているとのことです。

 オオバコの種子には分子量が150万程度で(2)、L-アラビノースとD-キシロース、D-グルクロン酸、D-ガラクツロン酸が4:11:3:1の割合で含まれる粘質物質(プランターゴ・ミュシレージA)が存在することから、食物繊維源として有用であり、また薬理作用を示すイリドイドやフラボノイド等の存在も知られていますが、2008年に新規物質のグアニジン誘導体、プランタゴグアニジン酸(plantagoguanidinic acid)が発見され(3)、この物質が生薬である車前子の確認用物質として用いられるようになっているようです。

オオバコの葉にはイリドイドのアウクビンやフラボノイドのプランタギニンが含有されているものの、これらの含有量は0.01%程度と言われいるようです。一方、フェニルエタノイドのプランタマジョシド(Plantamajoside)は数パーセントも存在することから、この化合物が生薬である車前草の確認用物質として用いられているとのことです。

オオバコの近縁種であるヘラオオバコも良く見かけますが、オオバコとヘラオオバコでは含有成分が少し異なるようです。

アクテオシドやブランタマジョシドなとのフェニルエタノイド配糖体は、古くから有用な薬理作用を持つ化合物として注目されており、たくさんの研究報告が見つかりました。

また、フラボノイドのスクテラレインはかなり強いα-グルコシダーゼ阻害活性を示すとのことで(4)、血糖上昇抑制作用が期待されているようです。フラボノイドのA環に隣り合ったヒドロキシ基を3個有するフラボノイドとしてはバイカレイン(Bicalein)が有名ですが、フラボノイドの中でも様々な生理的機能性が報告されていることから、オオバコはフェニルエタノイドとフラボノイドの両面から生理的な機能性が期待できるように感じました。

 

参考)

1)松嶋賢一ら:オオバコは耕起した土壌で生育できるのか? 第222回作物学会講演会、講演要旨P2562006

2)Masashi Tomoda et al.: Plant Mucilages. XXIX. Isolation and Characterization of a Mucous Polysaccharide, “Plantago-mucilage A, ” from the Seeds of Plantago major var. asiatica., Chem. Pharm. Bull., 29(10), 2877-2884(1981)

3)Yukihiro Goda et al.: A guanidine derivative from seeds of Plantago asiatica., J. Nat. Med., 63, 58-60(2008)

4)Jichen Yang et al.: Comparative study of inhibition mechanisms of structurally different flavonoid compounds on α-glucosidase and synergistic effect with acarbose., Food Chem., Volume 347, 15 June 2021, 129056.

 

2021年3月11日木曜日

後遺症回避のための感染予防と食品由来成分の可能性

   茨城県の自粛は解除されましたが、首都圏の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が321日までの2週間延長になりました。各方面に甚大な影響が出ていますので、何とか早く終息することを願っています。

 最近は後遺症が話題になっており、日本では国立国際医療研究センターから退院した患者の76%に後遺症が認められたとのことです。一方、医学誌ランセットに報告された中国の事例では退院約6カ月後の対象者1700人の調査で、同様に76%に後遺症が認められ、最も多い後遺症は倦怠感または筋力低下で66%だったようです。次いで、睡眠障害27%、脱毛22%の順になっています(1)。

 また、まだアクセプトされていませんが欧米で実施された対象人数が102人~44779人で、退院後の日数が15日~110日に渡る15件の調査研究を分析した事例では、退院後80%の方に55種類の長期症状が認められたとの結果になっていました(2)。やはり倦怠感が58%と最も多く、次いで頭痛(44%)や注意力散漫(27%)が多く、話題になっている脱毛(25%)、味覚障害(23%)、嗅覚障害(21%)等も認められています。

欧米における調査研究結果(長期症状保有者80%)

 これら後遺症も考慮すると、症状が軽いということで油断しがちな若い方々もやはり後々のため感染しないよう気を付けた方が良いようです。

 個人的な努力で感染リスクを低減する方法としては、マスクや三密は当然として、一般的な疾病と同様に生活習慣を正しくして体調を管理することが重要だと感じています。最近は、食生活に関連する情報も話題に上るようになってきたので関心を持ち始めました。

 例えば奈良県立医科大学は、市販されている緑茶飲料が試験管内で新型コロナウイルスの感染力を弱めるとのプレスリリース(3)を行っていますので、緑茶飲料を飲むことで口からの感染の予防効果が期待されるように思います。

 緑茶にはカテキン類(茶タンニン)が含有されており、この成分がコロナウイルスの王冠(スパイクタンパク質)に結合することで、感染を阻止するものと推定されているようです。

 こうした情報を契機に、新型コロナウイルスに対する食品由来成分の有効性について、現在どの程度研究報告が出されているのか関心を持ち、米国のNIHが運営するPub Medでビタミンやミネラル、さらにいわゆる生態調節機能成分について検索(Sars-CoV-2  x 食品由来成分)してみました。その結果、ビタミンではビタミンDが圧倒的に多く330件、ビタミンC110件、ミネラルでは亜鉛が178件、生態調節機能性成分ではフラボノイドが137件、テルペノイドが124件報告されていました。

  また、フラボノイドの中ではタマネギやリンゴに多く含まれるケルセチンが74件、ピーマンやハーブ類に多いルテオリンが27件、ミカン類に多いヘスペリジンが21件、緑茶のカテキンが18件の順になりました。

 これら生態調節機能成分が新型コロナウイルスとどのような関りをもつのか興味を持ちました。予防効果があることを期待しながら文献を読んでみたいと思っています。

参考)

1)Chaolin Huang et al.: 6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study., Lancet 397, 220-232(2021)

2)Sandra Lopez-Leon et al.: More than 50 Long-term effects of COVID-19: a systematic review and meta-analysis., medRxiv, (doi.org/10.1101/2021.01.27.21250617)

3)お茶による新型コロナウイルスの不活化効果について、奈良県立医科大学(naramed-u.ac.jp

 

 

2021年3月1日月曜日

アオキのイリドイドの多様な役割

 冬のアオキ(2月)

   
筑波山や宝篋山、小町山、雪入山など筑波連山の山道にはアオキがたくさん生えていて赤い果実が目に止まり、ついつい写真を撮ってしまいます。 

なぜアオキが山道にたくさん生えているのかを少し不思議に感じます。

アオキの学名はAucuba(アオキ葉) japonicaで日本在来の樹木のようです。海外では庭園などに好んで使われていて、特に斑入り葉が人気のようです。

アオキは雌雄異株(Dioecy)と言われていますが、冬の山道では果実の赤い色が強く印象に残ります。アオキの果実の色には、水溶性で赤い色素のアントシアニン(ぺラルゴニジン配糖体とシアニジン配糖体)と脂溶性で黄色い色素のカロテノイド(クロロキサンチン)が寄与しているようです(1,2)。


でも、何といってもアオキで有名な化合物はイリドイドに属するアウクビン(Aucubin)のようです。

イリドイドの基本骨格とアオキ葉のアウクビン

一般的に、イリドイドは植物が害虫から身を守るために蓄積している化合物だと言われているようです。イリドイドは、通常は糖と結合した安定な配糖体として植物中に存在するのですが、害虫によって葉が傷つけられると、葉のグルコシダーゼの働きによって糖が離脱し、その結果イリドイドの1位の炭素と3位の炭素が開環しやすくなり、1位と3位の両炭素が反応性の高いアルデヒドになり、害虫の腸内で消化酵素と結合して不活性化するとのことです。

このイリドイドによる植物の防御とそれに対する昆虫の戦略については、イボタノキとイボタ蛾が取り上げられ詳細な研究が行われていました(3)。イボタ蛾は、イボタノキのイリドイド化合物であるオレウロペインから糖が外れて生じたアルデヒドへの対策として、腸内に高濃度のグリシンを分泌し、アルデヒドと結合させて毒性を緩和し消化酵素を守っているとのことです。

イボタ蛾(月山ブナ原生林で撮影)

アオキの果実には、アオキミタマバエが寄生するとのことなので、アオキミタマバエもアルデヒドの解毒機能(グリシンあるいはβ-アラニン、GABA)を腸管に分泌しているものと推察されます。

アオキ成熟果実には、アウクビンよりアウクビンの前駆体と推定されるデアセチルアスペルロシド酸メチルエステルが存在するとの報告(4)があるものの、アオキミタマバエとの攻防については情報を見つけることが出来ません。

一方、種を運んでくれる鳥についての観察レポートもあるようですが、アオキの実は果肉が薄く、苦いイリドイドを含有しているので鳥にもあまり好かれないようです。でも、2月上下旬にはヒヨドリ、ムクドリが捕食するとのことなので、これらの鳥が里山にアオキの実をたくさん散布したものと推察されます。

イリドイドは、むしろ様々な薬理作用があることから医薬品のリード化合物や健康機能成分として注目されていますが、食品加工分野では、食用色素の開発素材としても注目されているようです(5)。

食品添加物として利用されているクチナシ赤色素とクチナシ青色素は、クチナシのイリドイドであるゲニポシド等から糖が離脱したアグリコンとタンパク質が反応して生じた色素のようです。

イリドイドは比較的に馴染みのない化合物ですが、テルペノイドの一つとして生物にとって、あるいは食品成分として重要な物質であることが分かりました。

 

参考)

1)Ishikura N.: Pelargonidin glycosides in fruits., Experientia 27, 1006(1971)

2)青木 唯ら:アオキ果実の成熟に伴う果皮の色素および色素体微細構造の変化、Science Journal of Kanagawa University 22, 63-70(2011)

3)吉永直子ら:防御物質イリドイドをめぐる昆虫の多様な適応戦略、化学と生物、56(7)454-456(2018)

4)駒井功一郎ら:イリドイド配糖体類の植物成長抑制作用、雑草研究35(1)44-521990

5)漏留信晴ら:アウクビンとアミノ酸を原料とした赤色素の生成と性質、日食科工誌、44(11)760-7671997