2018年4月25日水曜日

春の笊川ほとりの草花、シソ目とその機能

  4月21日には、仙台市体育館に隣接した富沢運動公園や笊川を散歩して草花の写真をとりました。運動公園にはムラサキサギコケが咲いていました。ずーと前、子供たちが幼稚園の頃、田んぼ一面にムラサキサギコケが咲いていたのを懐かしく思い出しました。ムラサキサギコケはシソ目ハエドクソウ科に属するそうです。



笊川のほとりを歩いているとムラサキサギゴケとよく似た花が目に留まりました。でも、葉が丸い形をしています。家に帰って調べたところツタバウンランであることが分かりました。やはり同じシソ目ですがオオバコ科に属するようです。オオバコとは全く違うようも見えますが、オオバコ科はかなり多様性があるようで、イヌノフグリやオオイヌノフグリも同じ仲間だということです。



また、カキドオシも満開でした。小さなカキドオシが所狭しと生えています。カキドオシはシソ目シソ科のカキドオシ属に属するそうです。梅干しなどに使用する紫の葉のシソはシソ目シソ科シソ属なので正真正銘のシソということになります。でもカキドオシの花はかなりシソに似ています。



カキドオシは、摘採後に乾燥してカキドオシ茶としてハーブのように利用されるそうなので大変興味を持ちました。まだまだ小さなカキドオシですが、夏に向けて弦を伸ばしてどんどん成長し、ヤブガラシとまではいかないもののたくましく育つ雑草なので、その有用性が明らかになればいいなと思い調べました。カキドオシには、シソ科に特有な成分である抗酸化成分のロズマリン酸のほかにトリテルペノイドの一種であるウルソール酸やオレアノール酸を含1)むとのことです。オリーブ果実に含有されるトリテルペノイドのマスリン酸2)にはサルコペニア等の予防作用があるものとして注目され、すでに商品化されていますので、期待が持てます。


後で、調べてみたいと思います。

参考)
1)H.Tokuda et al.: Cancer Letters, 33(3), 279(1986)
2)S.Fukumitsu et al.: J. Clin. Biochm. Nutr., 61(1), 67(2017)

2018年4月23日月曜日

笊川のコガタルリハムシのライフサイクル

   ハリルホジッチ監督の通訳をしておられた樋渡 群さんがハリルホジッチ監督の記者会見の際におもわず涙を流したことが話題になっています。その風貌から海外の方かなと思ってテレビを観ていたところ、日本人樋渡(ひわたし)さんとのことで、何故か凄く感動しました。信じて心を通わせることのできる人なんだなと思いました。不倫騒動やセクハラ騒動とは全く対照的で、ホットしました。

桜が散った笊川にはアッという間に、草花や昆虫が活動し始めています。4月20日に出会ったベニシジミやコガタルリハムシは仙台では年中枯れることのないギシギシを主食とする昆虫だったことを初めて知りました。だから、いち早く活動することができた訳です。

まだ詳しい種分別はできていませんが、牧草地に多く生えているもののシュウ酸が多くて牛はあまり食べることのない外来種のエゾノギシギシなどスイバ属の植物は、牧草地では嫌われている訳なので、その除去が期待されているということも良く理解できます。

そのスイバ属の「除草昆虫」として、スイバ属を主食とするコガタルリハムシが注目されたことは理解できます。でも、その休眠形態はあまりにも不思議すぎます。哺乳類の休眠に関する研究によると、休眠には環境変化を感じて休眠をするタイプと、環境変化に左右されず年周性に基づき、休眠するタイプがあるようです。コガタルリハムシは6月後半から春になる4月までの十ヵ月休眠するとのことなので、その仕組みをぜひ解き明かして欲しいと思っています。



冬眠を研究し、シマリスの血液から冬季に脳に移行する冬眠たん白質1)
(Hibermation-specific protein)を発見した近藤先生によると、10匹のシマリスのうち1匹ぐらい冬眠しないものがいて、それは短命であったということです。昆虫の仕組みと動物の仕組みを比べるなどして、冬眠のみならず「クマノミの乾眠」も含めて解明がすることを楽しみにしています。

笊川には、ギシギシアブラムシの発生に合わせて、ナナホシテントウとナミテントウが確認できました。
これから、笊川の昆虫はしばしば報告することになると思います。

参考)
1)Hideaki Kondo, et al. : Cell, 125,161(2006)

2018年4月22日日曜日

除草昆虫としてのコガタルリハムシ

 今日4月22日(日)には、冬季オリンピックのフィギャースケートで2連覇を果たした羽生弓弦選手のパレードがありました。10万人以上の人出があったようです。大リーグのロサンゼルス・エンジェルスの大谷選手もそうですが、東北出身の若者が世界から注目されていることが、ほんとうに力になります。これからも注目します。
 笊川のほとりを冬の間も時々散歩していましたが、目につく雑草はギシギシあるいはノダイオウなどスイバ属でした。タデ科スイバ属の、スイバ、ギシギシ、ノダイオウ類の識別はかなり難しく、私は今現在ほぼ区別ができていません。

 4月20日(金)は晴天だったので笊川のほとりを散歩しましたが、その際、モンキチョウやモンシロチョウがそれぞれ数羽飛び回っていました。激しく飛び回るので写真は撮れませんでしたが、運よくベニシジミの写真を撮ることができました。


 ベニシジミの幼虫の餌はギシギシなどスイバ属の植物だということです。ギシギシなどは、仙台では冬の間も枯れることなく地面にへばり付き頑張っているので、ベニシジミは春一番の蝶として飛び回ることができる訳です。
 
 4月20日には、このギシギシの茎にギシギシアブラムシ(Aphid rumicis)が黒く群れいるものが数本見つかり、また、ギシギシを主食とするコガタルリハムシ(Gastrophysa asrocyanea)の成虫や卵も確認できました。その周囲を観察すると、ギシギシの葉が見る影もないほどの食害にあっているものもあり、黒いコガタルリハムシの幼虫が葉全体を食べ尽くしていました。仙台ではもう植物と昆虫の戦争が始まっていることが見て取れます。つい最近までとても寒くて、昆虫は越冬に苦しんでいるだろうと思っていましたが、桜の開花とともに植物も昆虫も一斉に目覚めたようです。









 実は、コガタルリハムシは極めて特殊な生活史を持つ昆虫のようです。写真に写っている黒い幼虫はいったん土に潜って蛹になり、土の中で成虫になり、6月中旬に地上に出てギシギシを1週間程度食べ、再度ギシギシの根付近6~10cmの土中に潜り休眠に入るとのことです。休眠から目覚めるのが翌年とのことなので、私が写真に撮った成虫は十ヵ月に及ぶ休眠からようやく目覚めてギシギシを食べ、卵を産む準備をしていたということになります。


 おもしろいことに、コガタルリハムシはギシギシを専門に食べる昆虫なので、これを牧草畑のギシギシ退治に利用することが検討されたようです1)。「除草昆虫」というアイデアです。残念ながら、まだ実用化には至っていないようですが、コガタルリハムシに関する研究が進展することによって、このコガタルリハムシがシュウ酸を多量に含有するギシギシを食べて生存できる仕組みの一端が解明されたとのことです。コガタルリハムシはシュウ酸をピルビン酸に変え、さらに乳酸に変換して最終的にエネルギー源として利用しているとのことです。

 シュウ酸は、タデ科のみならずアカザ科にも多く、日常よく食するホウレンソウにも多いことで有名で、人間にとっては「アク」として嫌がられている訳ですが、昆虫は動物が嫌がる植物を選び、それを主食とする生存戦略で生き延びている訳で、本当に感心します。

参考)
1)石黒慎一ら:蚕糸・昆虫バイオテック、84(2)、145(2015)



2018年4月21日土曜日

仙台博物館に行きました

  4月20日は仙台市の博物館に行き、手仕事の日本(柳宗悦のまなざし)展を見ました。柳宗悦は日本各地の手仕事を見歩き、「本物」との出会いを楽しみ収集し、日本民芸の祖と呼ばれるようになったことは知っていましたが、そのコレクションや活動の実態について、これまで出会い知る機会はありませんでした。 
   私が幼いころに身の回りにあった生活用品が、実は郷里の民芸品であったこと知り、ほんとうに驚きました。親戚のおじいさんがよくもってきた竹籠や、茶わんを入れる木造の籠、藁や樹皮で作ったミノ・ケラなどは、実はかなり手の込んだもので、どれも上手に作るには相当の経験が必要だったことをあらためて実感しました。展示されているものは、芸術品に相応しいものだと思いました。実は、生活必需品の多くに創意工夫があり、地域の伝統工芸品として日本各地で発展していたことを知り、尻をたたかれたように思いました。 
 帰り道、日本のスケート発祥の地といわれている池と反対側の斜面に、エンレイソウの群落がありました。エンレイソウは結構珍しい野草なので写真を撮りました。また松の実が発芽し、たくさん芽が出ていたので写真を撮りましたが、残念ながらこれらが大木になることはないのでしょう。



 仙台駅まで歩く途中の西公園付近で、カラスのエンドウとスズメノエンドウが勢いよく茂っていました。青葉通りの欅も新緑となり、春爛漫の仙台でした。


2018年4月19日木曜日

今年は、去年のジャガイモから豆に変更

 私の散歩コースの笊川や三神峯公園の桜は4月10日ごろに満開になり、笊川のほとりではイヌノフグリやヒメオドリコソウなどがあちこちに咲いていました。また、三神峯公園ではカタクリの群落も満開になり、ウキウキとした「春の感覚」を久しぶりに味わいました。





 4月14日(土)には、郷里の岩手に行きましたが、残念ながら桜の花はまだまだつぼみのままでした。桜の花は5月の連休の少し前に咲くのが通例なので、当然かもしれません。でも、田植え用の苗の播種がビニールハウス内で盛んに行われていて、北国もいよいよ農作業の始まりだなと感じました。

昨年はジャガイモを植えて、その様子を見ながら昆虫にフォーカスしてブログを綴りましたが、今年は豆や「変わった野菜類」を植えてみようと思っています。豆について、まだほとんど知識はありませんが「公益財団法人豆類協会」1)によると、日本で流通している主な豆科(Fabaceae)種実は、ササガ属、インゲンマメ属、ソラマメ属、エンドウ属、ヒヨコマメ属、ヒラマメ属、ダイズ属、ラッカセイ属の8属に分類できるとのことで、豆類協会はそれらに属する94種類の写真を公開しています。私はそれらの中からベニバナインゲン種の白花豆と紫花豆、インゲンマメ種の虎豆、ダイズ種の黄ダイズ、黒大豆の栽培に挑戦してみたいと思い、岩手や宮城の道の駅で既に入手していますが、どうなることやら。

5月の連休には再度岩手に戻り種播きをする予定ですが、たくさんの失敗談が書けるのではないかと思います。

私の家庭菜園は高速道路経由で3時間の遠距離にありますので「遠距離家庭菜園」と呼ぶことにしていますが、イタリアにはパソコンから指令できる「遠距離家庭菜園」があるそうです。これは家庭菜園を保有する企業が希望者に菜園の一区画を提供し、その管理をパソコンから指示できる仕組みにしたもので、菜園の状況はパソコンで随時観察できるそうです。都会人にとっては、労力が不要で安全・安心な作物を得ることのできる理想的な家庭菜園かもしれませんが、失敗が許されないような雰囲気を感じます。一方、私の家庭菜園は運動不足の解消や昆虫・雑草の観察も兼ねているものなので、収穫があったらもうけものというゆるい感覚ですので、それとはかなり異なります。帰郷を兼ねた作業なのでいつも楽しみにしています。

 参考)
1)https://www.mame.or.jp/eiyou/kinou.html

2018年2月19日月曜日

テントウムシの越冬用シェルター


昨日少し雪が降り、今日はかなり寒いです。日陰に積もった雪はかなり薄かったにも関わらず、1日経ってもまだ残っています。でも、平昌では昨日、スピードスケート500m競技で小平選手が金メダルに輝き、その余韻とこれからのメダルへの期待で熱くなっています。

個人的な興味として、今は越冬中のテントウムシを探し続けているのですが、まだ見つけていません。電柱の根元や樹木の割れ目などに集まっていることが多いとのことで、ネットではテントウムシの集団がたくさんアップされていますので、不甲斐ない状況ですが頑張ります。

イギリスでは、大学等の機関が中心になり国内の主な20種のテントウムシの写真とその特徴を「UK Ladybird Survey」に掲載し、テントウムシの分布調査をしているようです。また、そのウエッブサイトでは「子供のページ」を設け、テントウムシクイズなどを通じて興味を喚起するような工夫が行われています。また、別のサイトでは、テントウムシの越冬用の棲み処の作製例が掲載されていました1)。もっと前にこの情報を入手していれば、今頃は越冬中のテントウムシの写真を撮れたかも知れませんが残念です。今年の冬にはぜひ、この越冬用の棲み処を作って設置したいと思いました。


日本に生息するテントウムシは、東京、京都ともに11月上旬の平均気温が10~15℃、日最低気温が10℃付近になると越冬場所に移動するそうです。その越冬中に、ナナホシテントウは-20℃でも凍結しないことが確認されているようなので、そのメカニズムが興味深いです。

最近報告された研究論文によると、気温が氷点下になるとテントウムシの体内にトレハロースや、グルコース、ミオ-イノシトールが蓄積し、体液が凍結しにくくなるとのことです2)。
また、一般的にテントウムシは集団で越冬すると言われていますが、ナナホシテントウの調査によると、越冬開始時期に集団内にいた個体と、一匹で静かにしていた個体、一匹で動き回っていた個体の3群に分け、越冬後の生存率を比較した場合は、やはり集団の中にいた個体のほうが生存率が高かったようです3)。集団内にいた個体は、他のものより体重が重かったようなので、エサが豊富にある等の良い生育環境で育ったためなのかもしれません。

参考)

1)http://www.uksafari.com/ladybirds_in_winter.html

2)Hamedi N. et al. : Environ Entomol.42(2), 375-80(2013)

3)Andrew B. et al. : Eur. J. Entomol, 95, 639(1998)

2018年2月17日土曜日

キャベツの芯が芽キャベツに


今日は2月17日(土)です。平昌冬季オリンピックの男子フィギャースケートで羽生(はにゅう)選手が11月7日に負った大怪我を克服し、66年ぶりとなる2回連続金メダルを獲得しました。歴史に残るすごい事です。一方、将棋界では羽生(はぶ)永世七冠が朝日杯将棋オープン戦の準決勝で中学生の藤井聡太5段に敗れましたが、この羽生(はにゅう、はぶ)選手による盤上の戦いが、近年にない程の注目を集め盛り上がりました。

藤井聡太さんは午前の羽生戦に続き、午後に行われた決勝で広瀬八段を破り優勝し六段に昇段しました。2月1日に五段になってから僅か17日目の出来事で、公式戦制覇と六段昇段ともに最年少記録とのことです。これまでは、昨年6月に現役を引退した加藤一二三(ひふみん:78歳)が、それらの記録保持者だったようです。

話題のフィギャースケート(NHK)と将棋の試合(アベマTV)をしっかり観戦することができ、今日は本当に感激しました。動ぜず、しっかりと実力を出し切ることができる。「そんな人に私もなりたい」とつくづく思いました。

このブログでは昆虫や植物の写真を掲載したいと思っていますが、冬になってから、なかなかチャンスに恵まれません。今日は幸いにも、最近食べたキャベツの芯から脇芽が出ているのを見つけたので、その写真をアップします。包丁で葉をそぎ落とした後に残った直方体の芯にたくさんの小キャベツが芽を出しています。まるで芽キャベツのようです。

 
 
芽キャベツは、茎と葉柄にはさまれた付け根の部分に生じた側芽が、小さなキャベツのような形態に成長したものです。側芽の成長は、植物ホルモンのオーキシンとサイトカイニンのバランスによって制御され、多くの植物は、先端にある頂芽で合成されるオーキシンによって、側芽の成長が抑制され、頂芽優勢になっているとのことです。

芽キャベツは、頂芽優勢が抑制されて側芽もどんどん成長できるようになったキャベツだ、ということもできるかも知れません。もっとも、トマトやキュウリ、ピーマンなどでも側芽が伸びるので、園芸農家では芽かきが大切な仕事になっているようです。

 以前、花芽形成ホルモンのフロリゲンが、予言から70年の時を経て、10年程前に発見・同定されたということを書きましたが、最近は芽の形成抑制作用を示すストリゴラクトンが新たな植物ホルモンとして認識され、注目を集めているようです1)。この植物ホルモンは、リン酸の欠乏に伴い根から土壌に分泌され、リン酸吸収に優れた菌根菌に対して共生を促す物質としても働くとのことです。ただし、これまでに見いだされた物質は不安定で分解されやすいとのことで、農場での利用に耐える化合物の検索が行われているようです。

参考)
1)Yuichiro Tsuchiya:Nature Chemical Biology 2010, 6, 741-749.

2017年12月25日月曜日

スベリンの高生産植物による炭酸ガス低減


クリスマスの今朝は太陽が出ていたものの風がとても強く、午後には雲が出てかなり寒くなりました。空港では欠航便が、各地には大雪警報が出ているようです。

本年度の米国科学技術ブレークスルー賞に京都大学の森教授が「小胞体ストレス」に関する研究成果を評価されて選ばれたとのニュースが12月3日に流れました。この賞はグーグル創業者やアップル会長、ツイッター創業者などの著名人が創設したもので、その即時性とともに受賞者一人一人がノーベル賞の2倍以上の賞金をもらえるとのことで話題になっています。

森教授はノーベル賞候補として、ここ数年名前が良く出ていましたので順当な受章のように思いましたが、同時にカリフォルニア州サンディエゴにあるソーク研究所の植物学者ジョアン・チョリー(Joanne Chory)も受賞されており、初めてその業績を知りました。

彼女の受賞は「光による成長を制御するステロイドホルモンのブラシノライドに関する研究」によるもののようです。彼女の研究成果は、光エネルギーを効率的に化学エネルギーとして蓄積する仕組みとしての植物の細胞構造や生育・成長の最適化を可能にするものであるとして評価されたようです。

Chory博士はこれまでの研究成果を活用して地球上の炭酸ガスの低減に役立つ植物の開発にも尽力されており、地球環境中で分解しにくい植物成分のスベリン(Suberin)生産植物の開発を行っているようです1)。「環境にやさしい生分解性プラスチック」の対極にある「環境を改善する植物由来の非分解性炭素固定物質」の高効率生産植物の開発です。


スベリンは植物が生産する蝋(ワックス)で、コルクの主要な構成成分の一つのようです。スベリンは水をはじく性質を持ち、植物の表皮付近に存在し水分の組織への侵入を防ぐ役割や病原菌に対する物理的な障壁としての役割を持っていると言われています。スベリンの化学構造はかなり複雑で、芳香族化合物の重合体部分と脂肪族化合物の重合体部分が結合した高分子構造になっています。


Choryらは、樹木でのコルク生産に関する研究に加え根にスベリンを高度に蓄積するひよこ豆を開発しており、「世界の農地の約5%にスベリン高生産性植物を栽培すれば、地球上に放出される炭酸ガスの50%を排除することが可能になる」との試算結果を得ているそうです。

スベリンと言えば「ジャガイモ」が頭に浮かびます。ジャガイモ塊茎の表皮にはスベリンが多いことで有名です2)。特に表皮が病原菌に攻撃されると防御物質であるスベリン合成が盛んになるようです。ジャガイモそうか病によって陥没した穴の周りは硬いスベリンで盛り上がっています。

大豆など豆類の根もスベリンを蓄積するとのことで、Chory博士は「ひよこ豆」の根に注目したというわけです。それにしても、地球温暖化の元凶であると言われている炭酸ガスを、植物を利用して分解しにくい物質として固定するというアイディアは、斬新な発想だと感じました。

以前に「イボタ蝋」についてブログを書きましたが、幹が真っ白になるほどの蝋をイボタロウムシ(Ericerus pela)は生産する能力を持っている訳なので、今の技術を駆使して広食性昆虫にしてその養殖技術を開発すれば、Chory博士のアイディアと並ぶ地球環境改善策になるのではないかと思いました。

参考)
1)http://www.businessinsider.com/joanne-chory-breakthrough-prize 
     -suberin-cork-plants-carbon-dioxide-climate-change-2017-12
2)Bernards M.A., et al.: Phytochemistry, 57(7), 1115(2001)

2017年12月24日日曜日

サボテンの花とフロリゲン


 今日はクリスマスイブです。かなり寒くなりましたが家の窓辺にあるサボテン、マミラリア・ハーニアナ(玉翁殿)の花が一輪きれに咲いています。また、マミラリア・エロンガータ(黄金丸)からはかわいい小さな芽が出ています。野外で昆虫を見かけることはほとんどなくなり野草も少なくなったので、屋外での写真撮影ができず寂しい思いでしたが、長いつきあいのサボテンが話題を提供してくれました。

 20年ほど前から一緒にいて、3段重ねで30cm弱になった我が家のサボテン玉翁殿の開花は今年2回目です。いつもは丸いサボテンの輪郭に沿って円を描くようにたくさんの花を咲かせるのですが、花芽は円状に出ているものの、今回は一輪だけ抜け駆けしてしまったようです。

黄金丸
 
玉翁殿
 

 同じ環境にあっても開花が不揃いになるのは不思議です。そもそも、花やわき芽が出来る基本的な仕組みや、どこの部位に花芽が出てくるのかなど、誰もが思い浮かべるような質問に答えられるようになっているのだろうかと思い少し調べて見ました。

花については、チャライヒャン(Chailakhyan)というロシアの研究者がいまからちょうど80年前(1937年)に、接ぎ木の実験から植物の葉が日長を感知し花の形成に関わっていることを発見したようです。彼は葉で花の形成を促す「花成ホルモン(フロリゲン)」が合成され茎頂に移動すると予言したため、それがフロリゲン仮説となり植物最大の謎の一つとして世界に広まったようです。

 それ以来、多くの研究者がフロリゲン探しにしのぎを削りましたが、提唱から70年を経た2005~2007年に候補物質(FTタンパク質)が日本の研究者によって発見され、このタンパク質が葉から維管束を通って茎頂に輸送され花を形成させることが日本やドイツ、イギリス、米国などで証明され、フロリゲンであることが確認されたとのことです。

その後、このフロリゲンは葉で日中に増加するフォスファチジルコリンと特異的に結合し茎頂に移動することが解明されるなど、そのメカニズムの詳細が明らかにされ始めているようです。さらに、フロリゲンFTタンパク質は、花の形成のほか、ジャガイモの塊茎形成、玉ねぎの鱗茎形成にも関与する多機能性を示すことも明らかになってきており、植物ホルモンとしても認められるまでになっているようです。

オーキシンやジベレリン、サイトカイニン、エチレン、アブシジン酸、ブラシノステロイドなどの植物ホルモンは数十年前の高校の教科書にも掲載されていましたが、その後植物遺伝子の解明とその発現メカニズムの解析技術が格段に進歩したため、上記古典的植物ホルモンの他に、ここで取り上げた花成ホルモン-フロリゲンに加え、植物の抵抗性(植物免疫)に関わるシステミンやジャスモン酸、サリチル酸など新しい植物ホルモン(様物質)が次々に提唱され始めているようです。

科学の進歩が速すぎて追いつけませんが、花成ホルモンの他にも植物の抵抗性に関与する植物ホルモンには興味があります。学んだ知識は何とかして農業に生かしたいと思っています。 

参考)
1)辻 徳之ら:化学と生物、54(5)、358(2016)

2017年12月9日土曜日

瑞鳳殿とお茶


経ヶ峰の参道を上ると鮮やかな紅葉に包まれた瑞鳳殿の入り口が見えました。きらびやかに装飾を施された瑞鳳殿(霊廟)とともに、隣接した資料館を見学することができました。12月2日(土)のことです。


資料館には戦災消失後の再建に伴う遺骨の調査データをもとにして作製された政宗の実物大の全身像があり、その顔立ちに興味を持ち見入りましたが、身長は158cmだったと記載されていました。偉大な人物なのですがとても親しみを感じ、心に残り、これからもその印象を忘れることはないと思います。


伊達家第2代、第3代の霊廟にも参拝しましたが、その帰り道、いかにも堂々とした樹木の古木の根元のくぼみに、なんと、お茶の幼苗が30cm程度に伸びひょっこりと顔を出していました。残念ながら樹木には疎いので種類は分かりません。この経ヶ峰にも茶畑があるのだろうか。茶の実をリスが運んでこの樹木のくぼみに隠したのでは。と様々想いが頭をよぎりましたが、見渡す周囲には茶畑はありませんでした。でも、数年前には茶の木がこの付近にあったのだと思います。

政宗は京と江戸の文化を敏感に捉え、それに勝る文化を伊達藩から発信する想いと自信を持っていた人物だと思っています。例えば、京で盛んだった茶の生産を伊達藩で奨励したことも分かっています。茶は南国の農産物です。当時、伊達藩でその生産を行うことには多くの困難があったのだと思います。政宗はどのような工夫をしたのだろうか。京都の雪降る寒い地域で育つ苗を選抜して伊達藩に運んだのだろうか。

政宗が奨励し、今に続く宮城産のお茶には桃生茶・河北茶があります。石巻市の北に位置する桃生町には、面積が少ないながらも静岡の茶畑を想わせるような名茶園があるようです。その畑では、5月の初摘み行事が行われ、宮城県の時節のニュースとして紹介されています。

茶は、椿や山茶花とおなじカメリア属の直物で、中国由来であることからCamellia sinensisと名付けられています。一方、椿はCamellia Japonicaであり、日本(Japan)の名が与えられています。実は、その北限は青森県の椿山だと言われており、椿山の椿神社付近には17haの椿の群生があるとのことです。まだ見たことはありませんが、茶もそこが北限なのかなと思います。でも、経済的な北限も当然考えられます。それは、秋田県の檜山茶だと言われてきました。檜山では伝統の檜山茶を絶やしたくないとしての活動も行われていますが、宮城県の桃生茶・河北茶に比べると生産量は少ないようです。東北での茶の生産は大変ですが、応援したいと思っています。

 自分好みの食品を24時間いつでも購入できる環境の中にいる私たちと異なり、欲しいものは流通に頼らず自分達で生産せざるを得なかった時代、生と死があまりにも近く、明日を待つ余裕を持つことができない時代にどのような工夫が行われていたのかを勉強し、今に生かすことが重要だな~と思っています。




2017年12月1日金曜日

秋の笊川の草花とマルハナバチ調査情報


 仙台は最近かなり寒くなり、笊川の土手のイタドリは茶色に枯れていました。秋の草刈り後に頑張って伸びた30cm程度の若芽が、揃って茶色になっている風景に、晩秋のうら悲しさを感じます。


でも、川原ではハクセキレイのツガイが仲良く声を掛け合ってそこかしこ飛んでいました。突然、眼の前を小さな影がスーと通り過ぎたので、まさかと思い目で追ったところ、やっぱりシジミチョウでした。こんなに寒いのにまだベニシジミの成虫が飛んでいることに驚きました。

この時期の草花は不思議です。セイタカアワダチソウは、芽が出て間もない状態から、黄色い花を付けたもの、完全に枯れて白い綿毛になったものまであり、その一生の姿を全部見ることができます。ノコンギクも花が咲いているものと白い綿毛になったものが同じ場所に生えていました。ノコンギクの種と綿毛をしっかりと確認できたのは今回が初めてです。


ヒメジョオンやノゲシ類の花は、季節を問わず相変わらず咲いていました。イヌノフグリの花も咲いています。イヌノフグリの根元にはニジュウヤホシテントウが越冬用の卵を産んでいるのかも知れません。仙台でも初雪がもうそろそろ降るのでしょうか。


 11月18日の朝日新聞朝刊にマルハナバチ類の生息図に関する記事が掲載されていました1)。東北大学と山形大学が共同で実施した「マルハナバチ国勢調査」の成果の紹介です。この成果は市民参加型調査によって達成されたもので、2006年から2015年の間に4,100件以上の協力があり、その内3,143件がマルハナバチと特定できたそうです2)。

日本には、16種のマルハナバチが棲息すると言われているそうで、今回の調査ではそのうち15種についての報告が寄せられ、トラマルハナバチ(902件)、コマルハナバチ(821)、オオマルハナバチ(369)、クロマルハナバチ(288)、ミヤママルハナバチ(207)、ヒメマルハナバチ(145)など6種の分布密度を日本地図上に示すことができたとのことです。

 私は以前のブログに書いたように、この国勢調査に興味を持ち花に集まる蜂やアブの写真を撮り始めました。幸い、マルハナバチによく似た大きなクマバチについては2回写真を撮ることができましたが、残念ながら背面、側面、正面と狙って撮ることはできませんでした。本命のマルハナバチについては一度だけチャンスがあったものの「オオボケ」で終わってしまいました。茨城県牛久市での遭遇でしたが、花にとどまる時間が短くかつ動きが速すぎるので、ピントを合わせて写真を撮ることすらできませんでした。でも、黄色の縞模様がありかつ足に黄色の花粉が付いているように見えるので、国勢調査で最も多く写真が提供されたトラマルハナバチのように思われます。


 このような調査は世界各地で様々な昆虫等について行われているようですので、役立つレベルの写真やデータを提供できるようになりたいと思いました。

 参考
1)朝日新聞11月18日号、24面(2017年)
2)Y. Suzuki-Ohno, et al.: Scientific Report, Online, 9月11日、2017年