オオニジュウヤホシテントウは大きさが7mm、体重は50~60mg程度で、10月上旬ころ落葉の下や草の根本、樹皮の割れ目に移動し越冬に備えます。オオニジュウヤホシテントウは、熊と同様に越冬前にエネルギー源を溜め込むようで、体重1gあたり35mg程度のグリコーゲンを蓄えると報告されています。もっともその約8割がイノシトールに変換され、それにより耐寒性が向上(-10℃)するとのことです1)。テントウムシにとっては、イノシトールが不凍液としての役割を担っているようです。イノシトールは人間にとってもビタミン様物質として重要であり、米国では乳児用ミルクにも添加されているとのことです。もちろんその役割は不凍液のようなものではなく、情報伝達経路などに関わるとても重要なものです。
一方、テントウムシダマシがジャガイモやトマト、ナスなどを選択的に食べる原因となる物質として、葉に含有される糖やアミノ酸などともに脂肪酸メチルエステルの存在が取り上げられています。ジャガイモの葉からは、その摂食の鍵物質としてリノレン酸メチルが見出されています。このリノレン酸メチルと果糖(フルクトース)が、オオニジュウヤホシテントウのジャガイモ葉への選択性に関与しているようです。
これらテントウムシダマシが嫌がる物質はまだわかっていないようです。ジャガイモの葉にはソラニンが存在しますが、もしかしたら食べ残した網状の筋にこのソラニンが多く、テントウムシダマシはソラニンの少ない柔らかな部分だけを食べているのかも知れません。ウリ類の葉を食べるニジュウヤホシテントウは、ウリの葉に丸い切り込みを入れて、苦味物質のククルビタシンが加害刺激で増加しないような手立てをしてから、切込みの内側の葉を食べるそうです。いつか、その現場を見てみたいです。テントウムシダマシは、ククルビタシンが苦手な物質のようです。でも、ほとんどのウリ科野菜が餌になるので、忌避物質としての利用は無理のようです。もし揮発性の忌避物質が明らかになれば、それを含有するコンパニオンプラントを植えることも可能になるのですが、残念です。
海外では、テントウムシダマシに対してどのような対策をとっているのだろうか。もっとも気になるアイルランドの情報を探したところ、日本にいるテントウムシダマシと同じ系統は28ホシテントウではなく、24ホシテントウで、ホシが4つ少ないものでした。興味深いです。海外のテントウムシ情報を調べてみたいと思っています。
参考
1)Watanabe M.: Eur. J. Entomol., 99, 5-9(2002)
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