2017年6月14日水曜日

テントウムシによるワイン汚染とその回避

米国ではいま、テントウムシによるワインの汚染(ladybug taint)が問題になっています。頭にMあるいはWの黒文字が見えるハーレクインテントウ(Harlequin Ladybug or Ladybird)が増え、これがワイン畑に集まりワイン汚染を引き起こすようです。このテントウムシはアジア在来種で、日本ではナミテントウと呼ばれており、以前は欧米には分布していなかったようです。ヨーロッパ在来種はナナホシテントウで、これも今は米国に渡っています。

米国は1916年にアブラムシの天敵としてナミテントウを日本と韓国から導入し、グリーンハウスのアブラムシ対策に使用したとされています。ヨーロッパでも1975年頃からこのテントウムシをグリーンハウスで使用し始めたようです。その後、米国では1960年から1990年にかけて、農務省がピーカンナッツやリンゴの生物農薬としてナミテントウの有用性を検討していたため、多くの地域での利用が行われようになったようです。これに伴い、現在ではナミテントウが米国全土で繁殖し、1990年頃からは民家室内への不快な侵入者として嫌われる存在になりました。ナミテントウの蔓延は農業利用が原因ではなく、日本からの貨物船に潜り込んだものが繁殖したという説を唱えている者もいるようですが、いずれにしても、最近はブドウ園への飛来によるワイン汚染が恐れられるようになっています。

不思議なことに、アジア在来種のナミテントウと欧州在来種のナナホシテントウの体液には4種の香り物質(メトキシピラジン類)が存在し、そのうちの3種はブドウの有用な香り物質でもあることが分かっています。それなら問題ないでしょうということになりますが、これらのテントウムシはブドウの収穫期に房に集まり、それが混入すると香りが強くなり過ぎて、異臭として感じるとのことです。このワインのテントウムシ汚染は、2001年に北部アメリカのワインメーカーから初めて報告され、ワイン畑にテントウムシが多くみられるようになった時期と重なっています。実際にテントウムシを添加して白ワインを製造すると、ピーナッツやアスパラガス、ピーマン様の香が感じられ、フルーツや花様の香りが薄くなるとのことです。

このLadybugs taintへの対策として、2015に異臭を除去できるプラスチックポリマーが見出されていますので、大きな被害が生じないことを願っています。

参考)

1)Pickering GJ, et al.: Am.J.Enol Vitic., 55(2), 153 (2004)

2)Pickering GJ, et al.: Int. J. Food Sci. Technol.41(1), 77 (2006)

 

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