飛翔不能にした種類はハーレクインテントウすなわちナミテントウで、2013年9月に施設野菜類用の天敵製剤として登録されています。翌年6月から販売が始まり、効果的な利用法をまとめた技術マニュアルも公開されています。この飛ばないテントウムシは幼虫として販売されていますが、飛べないので成虫になった後も定着し、次世代以降も防除効果が期待できるとのことです。飛ばないテントウムシの開発は、世界初のことだと思います。世界的各地で農薬減に貢献するのではないかと期待しています。
一方「飛べないテントウムシ」は、名古屋大学で開発2)され、その後岡崎基礎生物学基礎研究所に引き継がれています。テントウムシの生殖細胞にある羽の形成に関わる遺伝子の働きをRNA干渉法という技術で妨げ、羽のないテントウムシになる卵(成功率87%)の産卵に成功したということです。遺伝子を組換えた訳ではないので、世代を超えた環境影響には問題がないのですが、量産化にはまだコスト面での課題があるものと予想されます。この「飛べない」という視点からの発想で、テントウムシの羽に後で剝がすことのできる接着剤を塗る方法を考案した千葉県の高校生の活動には感心しました。おもしろいです。
「飛ばない」と「飛べない」というほぼ同じ意味をもつ言葉の使い分けが気に入りました。「飛ばない」は、籠の中に棒を立てておいても飛んでいかないテントウムシのことで、「飛べない」は羽が無かったり、接着剤で羽を開けないようにしたテントウムシ達で、それぞれ奇麗に言葉が使い分けされていました。
納得!参考
1)瀬古 智一:化学と生物、53(8)、542(2015)
2)新美 輝幸:Insect Mol. Biol., 15(4), 507 (2007)
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