2017年6月21日水曜日

草食性ニジュウヤホシテントウの種分化

  良く見かけるナナホシテントウとナミテントウは、ライオンと虎ほどの違いなんでしょうか。ライオンと虎は共にネコ科ヒョウ属であるが、種はleotigrisで異なります。すなわち、実質的に交配はできず生殖隔離が存在します。一方ナナホシテントウとナミテントウでは、科名は当然テントウムシ科(Coccinellidae)で同一ですが、属はそれぞれCoccinella Harmoniaであり、異なります。ということは、両種はライオンと虎以上、ライオンと猫ほどの違いがあるということになり、鳥でいうとニワトリとウズラ、植物でいうと白菜とキャベツほどの隔たりなので、自然環境下では交配はできないということになります。

素人目には、ナナホシテントウとナミテントウは交雑してしまい、その中間型がたくさんできているのではないのかなと思うのですが、現実は異なり、種がきちんと隔離されているということになります。

このように外観が同じように見える生物個体が、別種として独立できる仕組みはどのようになっているのだろうか。交雑致死という用語があるように、環境にしっかりと適応した種から新たな種が生じて生き延びるチャンスは、かなり少ないものと思われますが、テントウムシでは、本州から北海道に移動したニジュウヤホシテントウの種分化が、北海道大学の研究によって解明されつつあります。

草食性のマダラテントウ亜科に属するニジュウヤホシテントウ類(Henosepilachna類)は、本州ではナスやジャガイモの葉を食べますが、北海道ではアザミの葉を食べる「ヤマトアザミテントウ」と「エゾアザミテントウ」、それに葉が牡丹に似ている野草のルイヨウボタンの葉を食べる「ルイヨウボタンテントウ」に種分化しているとのことです1)

興味深いことに、ヤマトアザミテントウはミネアザミの葉を食べ、エゾアザミテントウはチシマアザミの葉を食べるという互いに狭い食性を持ち、エゾアザミとチシマアザミの分布域が北海道内では交わっていないことが、これらの種の分化を決定づけた要因のようです。エゾアザミとチシマアザミの間には、マルバヒレアザミが分布しているものの、このアザミの葉は両者ともに餌にできないとのことで、明瞭な隔離が生じ、長い間に種が固定されたものと推定されています。

 種分化要因としてはこのような食性の違いが大きく関わっている場合が多いようで、沖縄には、ニガウリなどウリ科の葉を食べるジュウニマダラテントウが棲息しています。また、北海道南部から本州の林に分布し、カラスウリやスズメウリなどのウリ類の葉を食べる草食性テントウムシは、トホシテントウのようです。

日本に生息するテントウムシダマシは28星テントウだけではなく、12マダラや10星テントウもいるということが分かりました。

参考

1)小林 憲生:化学と生物、42(5)287 (2004)

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